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(回答先: 科学理論について、岩住さんに質問 投稿者 愛久 日時 2005 年 2 月 14 日 00:07:42)
私は坂元邁氏の著作を読んだことはありませんが、貴方が引用された部分を読んだだけで彼は自然科学者として帰納法や演繹法を実地に何十年も使いこなした上で説明されているのでは無い事が私には直ぐ解ります。彼は科学者では無く哲学者として帰納法や演繹法を概念的に理解しようとしたため説明に無理が出たのです。
先ず第一に、「科学」の定義は非常に沢山あり、自然科学者の言う科学と人文科学者の言う科学とは殆ど別物です。そこに彼の議論が混乱している原因があるのです。自然科学者の言う科学とは「再現性」と「予言性」を持った学問の事です。研究の対象となる全ての現象は例え測定できなくても意のままに再現出来なければなりません。又、例え測定できても実験を繰り返して毎回(統計的にランダムな)違う結果が出るのでは科学研究に使えません。この事だけでも坂元氏の定義は間違っている事が解ります。
予言性とは仮説から出発して演繹法で理論を立てて立証可能な実験結果を予言できる事です。実験結果は測定出来なくても再現性さえあれば良いのです。例えば、こうすれば毎夜完全に同じ夢が見られる、とかです。しかし、例え予言通りに実験結果が出ても、その仮説が正しいとは結論できません。仮説が間違っていなかった、と言えるだけなのです。この事を正しく理解している科学者は驚くほど少ないのです。物理学者の大部分は正しく理解していますが、生物系や医学系の科学者の殆どは仮説を正しいと立証できると間違って理解しています。だから、科学者のインチキ実験(データ捏造)が後を絶たないのです。
坂元氏は科学という言葉を先ず正確に定義せずに議論を始めたのでしょう。人文科学者の使う科学は非常に曖昧で、広辞苑では「体系的であり、経験的に実証可能な知識」と書いてあります。この様な曖昧な定義で科学とは何か等と議論するのは時間の無駄です。
帰納法とか演繹法を抽象論として哲学的に議論するのは簡単です。しかし、実際に科学手法として帰納法と演繹法を使いこなすには長い経験と才能が必要です。現在の自然科学者でも帰納法を使える人は一万人に一人も居ないでしょう。科学理論を基礎から立てるというのはそのくらい難しい事なのです。殆どの自然科学者は既存理論の改良とか間違いの立証をやっているだけで、ニュートン、マックスウエル、アインシュタインといった天才達が帰納法を使いこなしたといえるのです。比喩的に言えば、ゴルフのプレーの仕方を素人に説明するのは簡単ですが、実際にクラブを持ってプロの様に球を打ち良いスコアでプレーするには永年の経験と才能が必要なのと同じです。一般大衆の為に本を沢山書いて生計を立てている人達の議論には早合点とか誤解が非常に多いので気をつけてください。