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(回答先: 国民の保護に関する基本指針案 要旨 (産経新聞) 投稿者 愚民党 日時 2005 年 3 月 05 日 07:01:24)
人権擁護法案 国会提出へ 「メディア規制」凍結を条件
政府は、三年前に国会に提出し、「メディア規制法」と批判され廃案になった人権擁護法案を十五日に閣議決定し、今国会に再提出する方針を固めた。だが、言論界などから「法案は運用しだいでは『表現の自由』を保障した憲法に違反する」との強い反発も上がっており、成立は微妙だ。
人権擁護法案は、法務省の外局として人権委員会(仮称)を新設し、差別や虐待をはじめとする人権侵害に対し、相談や調停、勧告、公表などの救済措置を講じるという内容。人権委員会は、各地で人権擁護委員を委嘱し地方事務所を置き、関係者への事情聴取や関係先への立ち入り検査など「特別調査権」も付与される。
政府は今回、平成十四年三月の通常国会に提出され、十五年秋の衆院解散に伴い廃案となった法案と同じ内容のまま再提出する方針だった。
だが、与党の「人権問題等に関する懇話会」(古賀誠座長)は先月三日、メディア規制条項を凍結し、凍結解除には別途法律を制定することや、一定期間が経過後に見直す条項を盛り込むことなどを条件に、法案を了承。九日には今国会での成立を図る方針を決定した。
一方、民主党内では、与党と協議のうえ、メディア規制条項の削除などの修正に応じるならば、同法案を今国会で成立させるべきだとの意見が強まっている。
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■「表現の自由侵害」異論なお
人権擁護法案は、出生や国籍などを理由にした差別や人権侵害の防止と救済が目的だが、「表現の自由を侵害する」と異論も多い。法案の趣旨と争点を検証した。
◆人権侵害とは
法案は、すべての人権侵害を禁じるが、その定義はあいまいだ。条文には「人権侵害とは不当な差別、虐待その他の人権を侵害する行為」とある。それでは「人権侵害とは人権を侵害する行為である」と言っているのに等しい。法務省担当者も「人権は人権という言葉を使わず定義することが難しい。中身自体が拡大していく概念だ」と説明し、結局、人権委員会の「良識」に委ねられることになることを認めている。
また、法案では、人権侵害の対象として直接的な差別や虐待だけでなく「差別を助長、誘発する行為」も禁じており、「批判と侮辱はどこで線を引くのか。拡大解釈の余地があまりに多い」(民主党衆院議員)との声も上がる。
◆人権委の権限
法務省の外局として新設される人権委員会は、全国の地方法務局に事務所を置く巨大組織となる。さらに各地方で、人権侵害の相談や調査、情報収集を行う人権擁護委員(二万人以内)を委嘱する。
人権擁護委員は、市町村長が弁護士会などの意見を聞いたうえで、人権擁護団体などから候補者を推薦することになるが、選考過程はあいまいだ。国籍条項もない。
また、人権委員会は、人権侵害の「特別救済手続き」として、関係者への出頭要請と事情聴取、関係資料などの「留め置き」、関連個所への立ち入り検査といった権限をもつ。令状は必要なく、拒否すれば罰則規定も定められている。委員会が人権侵害と認めた場合は、勧告・公表、提訴などの権限もある。
◆メディア規制
人権委員会の特別救済手続きの対象には「報道機関による人権侵害」も含まれる。「メディア規制条項」といわれ、報道機関や言論界から強い反発があった部分だ。
その規定は詳細で、犯罪被害者などに対する反復的つきまとい、待ち伏せ、見張り、押しかけ、電話、ファクス送信まで対象となる。メディア規制について与党は「凍結」するとしているが、「削除」には否定的だ。
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■15年10月廃案−経過
人権擁護法策定の契機は、総理府に設置された地域改善対策協議会が平成八年五月、同和問題の早期解決に向け、「人権救済制度の確立」などを盛り込んだ基本方策を政府に意見具申したことに始まる。
翌九年には、同和問題をはじめ人権問題全般の解決に向け、法務相、文部科学相などの諮問機関として人権擁護推進審議会が設置された。同審議会は十三年に、人権制度の在り方に関する答申を出し、人権擁護法案の現在の骨格が確立した。
同審議会が審議中の十年十一月には、国連規約人権委員会が「人権侵害を調査し、不服に対し救済を与える制度的仕組みを欠いている」として、日本政府に独立した国内人権機構の設置を勧告したことも、法案の早期策定への追い風となった。
答申をベースに策定された法案は、野中広務元自民党幹事長らが主導する与党人権問題懇話会の後押しもあり、平成十四年三月に国会に提出され、参院先議で法務委員会に付託された。
しかし、メディアの過剰取材を「特別救済」の対象にすることなども盛り込んだため、「公権力による人権侵害を棚上げし、表現の自由を侵害する」と、報道機関や言論界が一斉に反発。個人情報保護法案、青少年有害社会環境対策基本法案とともに「メディア規制三法」と称された。
結局、十四年の通常国会で継続審議になった後、同年秋の臨時国会では参院先議で参考人質疑を行ったが、再び継続審議となり、十五年十月の衆院解散で廃案になった。
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≪ジャーナリスト・櫻井よしこ氏≫
■凍結部分は削除必要
出生や国籍などを理由にした人権侵害は決して許されることではなく、その予防と救済措置を取ることは当然だが、一方で、憲法が保障する「言論、出版その他一切の表現の自由」と密接にかかわる問題だけに、いくつか疑問点を提起したい。
まず、前回提出された際も問題になったが、この法案には「メディア規制条項」が含まれている。過剰な取材による人権侵害を特別救済の対象とする内容だが、どこまでを過剰取材とするかが明確ではない。健全な言論活動、取材活動は民主主義の原点であり、それが侵害されることはあってはならない。与党は「凍結」という形で了承したようだが、ぜひとも削除する方向で検討してほしい。
また、「人権侵害」の定義付けがあまりにあいまいだとの指摘もある。人権擁護委員の選考なども不透明だ。人権委員会は、関係者に出頭を求めたり、資料を留め置いたり、立ち入り調査を行う権限をもつだけに、恣意(しい)的な拡大解釈がまかり通らないような歯止めを示してほしい。
繰り返すが、「表現の自由」は、すべての国民が有する権利で民主主義の根幹である。ぜひとも国会での慎重な議論をお願いしたい。(談)
http://www.sankei.co.jp/news/morning/05pol003.htm