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2月6日付・読売社説(2)
[女性基金]「何のための事業だったのか」
今となって、いったいなんのための事業だったのか、という疑問が改めてわく。
いわゆる元従軍慰安婦に対する「償い金」の支給事業などを進めてきた「女性のためのアジア平和国民基金」(略称「アジア女性基金」)が事業をほぼ終え、二年後に解散することになった。
一九九五年に創設され、約6億円の募金を集めて、これまで韓国、台湾、フィリピンの元慰安婦二百八十五人に一人200万円を支給してきた。
しかし、もともと、この「基金」が創設された経緯には、歴史の歪曲(わいきょく)が大きく作用していた。
たとえば、一部の新聞が、戦時勤労動員だった「女子挺身(ていしん)隊」制度を、旧日本軍の“慰安婦狩り”システムだったとするキャンペーンを展開したりした。これが、慰安婦はすべて強制連行によるものという誤った歴史認識を国内外に振りまくことになり、とりわけ韓国国民に、感情的な反応を呼び起こした。
日本政府の一連の対応も、「不見識」としかいいようがないものだった。代表的なものは、一九九三年八月、宮沢政権下の河野洋平官房長官談話だろう。この談話の中では、慰安婦の“強制連行”に「官憲等が直接これに加担したこともあった」とされた。
この官房長官談話に事実の裏付けがなかったことは、その後、当時の石原信雄官房副長官の証言や、内閣外政審議室長の国会答弁などで明らかになっている。要するに、慰安婦の強制連行論には確たる根拠はなかったということである。
ところが、この官房長官談話は、当然ながら、日本政府の公式見解として独り歩きすることになった。
このため、韓国などでは、いわゆる従軍慰安婦はすべて「強制連行」であることを日本政府が認めたというように受け止められた。また日本国内でも「強制連行」への「償い」をすべきだという運動が勢いを増した……という経緯により、「基金」が設立されたのである。
現在、NHKと朝日新聞が、番組内容の改変を巡り事実関係を争っている問題にも、こうした経緯が背景にある。
争いの遠因となった「女性国際戦犯法廷」も、こんな河野談話を根拠の一つとした流れの運動だった。
慰安婦は官憲に強制連行されたとする“政府見解”を前提に政治的に設立された「基金」は、「償い金」支給の対象者をどんな基準で選別したのだろうか。
「基金」設立には、歴史的事実の冷静な検証が欠けていた。事業に終始、疑念がつきまとったのも当然である。
(2005/2/6/02:02 読売新聞 無断転載禁止)
http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20050205ig91.htm