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学校現場、自由度増すか 義務教育費の国庫負担廃止
義務教育費の国庫負担
地方が財布を握れば、学校は変わるのか――。公立小中学校の教員給与の半分を国が負担する義務教育費国庫負担制度を廃止し、地方に税源を移すかどうかが検討されている。国と地方の税財政改革「三位一体改革」の焦点の一つだ。教育の自由度は増し、住民意識は高まるのか。財源は確保できるのか。秋までに結論を出す文部科学相の諮問機関「中央教育審議会」の議論を追った。(野上祐、内田晃)
石井正弘・岡山県知事「地方に任せれば、弾力的な学級編成が可能になる。外部人材の活用も効果的になる」
小川正人・東大大学院教授(教育行財政論)「それは今の『総額総量制』でも可能だ」
文科省は地方の自由度を高めるため、04年度に始まった「総額総量制」の実例を示すペーパーを5日の審議で配った。
「小学校低学年の30人学級」「習熟度別授業の充実」「外部人材の活用」――。並んだのは全国知事会が、制度廃止の「効果」としてきたメニューばかり。いまの制度でも、地方が求める「自由な教育」は実現できる、というわけだ。
この攻勢に石井知事が18日の審議で繰り出したのが、「負担金をなくせば国の『ひも付き』のコントロールがなくなる」との主張だ。石井知事が例にあげたのが、少人数指導など特別な目的で配置される教員の「加配」だ。
加配は、都道府県の申請に基づき文科省が差配する。石井知事は、全体に占める加配教員の比率が鳥取県では、北海道の約2倍と指摘。文科省の判断に不信感を示した。
ただ、加配は標準的な学級規模を示した義務教育標準法によるもの。地方側は同法について「義務教育の水準確保を担保する」と必要性は認めているため、苅谷剛彦・東大大学院教授が「地方は標準法が大事だと言っているが、ひもを残すことにならないか」と指摘。これに石井知事は「国に配分権限がある限りはひも付き」と繰り返した。
●住民意識
石井知事「住民は地方税の使途を厳しい目で見る。住民の意識、教職員の自覚が高まる」
小川教授「住民は国税も地方税も払っており、国、地方の事業とも厳しい目で見ている」
地方側は、制度が廃止される見返りに税源が地方に移れば、住民の納税者意識が高まり、教育関係者も地元の意向を重視する、と効果を説く。
小川教授は提出資料でも、地方の主張を「イメージ的」と切り捨てた。ただ、石井知事は報道陣に「現場の実感」として、地方税が財源なら「(住民は)適正に支出されているか、じっくり検討する」と反論した。
●財源確保
山本文男・福岡県添田町長「負担金が廃止されても、地方交付税で対応できる」
片山善博・鳥取県知事「交付税は04年度に12%カットされた。大幅なカットがあり得る」
存続派は、国庫負担制度がなくなると教育に地域格差が生じる、という。地方側は格差は交付税で埋まる、とする。
国庫負担金と交付税のどちらが安定的なのか。
三位一体改革の柱の一つは交付税の見直しで、その抑制は政府の既定路線。教育者らの「交付税の行く末が不安定では、教育費にも影響が出かねない」との懸念を、地方側も否定しきれない。
だが、財務省の財政制度等審議会は6日公表した建議のなかで「児童生徒ひとりあたりの負担金は89年度と比べ8割増し」と指摘。国庫負担金の削減を目指す財務省の意向を強くにじませた。
増田昌三・高松市長が「本音」を見せた。「一般財源化しても、そんなにいいことがあるとは思わないが、まだ財務省の攻撃から免れやすい」
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◆キーワード
<義務教育費国庫負担制度> 都道府県が負担している公立小中学校教職員給与の半分を国が補助する仕組み。50年にいったん廃止されたが、地方財政が困窮したため、教育水準の地域差を懸念した知事らの要望で53年に復活。だが、地方への補助金を削減し、税源を移す「三位一体改革」で廃止論が再浮上。全国知事会などが昨夏、同制度廃止案をまとめた。政府・与党は昨年11月、「地方案を生かす方策を検討し、05年秋までに中教審において結論を得る」ことで合意した。
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