現在地 HOME > 日本の事件16 > 564.html ★阿修羅♪ |
|
(回答先: 尼崎脱線事故 投稿者 ワヤクチャ 日時 2005 年 4 月 29 日 21:56:40)
http://www2.asahi.com/special/050425/OSK200504290016.html
<< 尼崎・列車脱線事故 >
遅れ回復の120キロ走行、運転士の常識 JR宝塚線
2005年04月29日13時35分
快速電車の脱線事故が起きたJR宝塚線では、「直線でとばし、カーブ直前で急ブレーキをかける」という運転方法が、遅れを回復するための「裏技」として運転士の常識になっていた。背景には、会社からの厳しい「ペナルティー」を恐れる運転士の心理や、ライバルの私鉄との競争を勝ち抜くために、スピードアップと過密ダイヤとを追い求めてきたJR西日本の姿勢がある。28日に死亡が確認された高見隆二郎運転士(23)も、事故現場のカーブ直前まで時速100キロを超す高速運転をしていた。
「(脱線現場となった)曲線半径300メートルのカーブ直前の直線を120キロの制限速度ぎりぎりで走る。カーブ手前で急ブレーキをかければ、何秒かは(遅れを)回復できる」
28日、JR西日本労働組合中央本部(JR西労)が大阪市内で開いた記者会見で、現職の運転士でもある安田昌史書記長が解説した。遅れを出したときに少しでも回復するため、宝塚線の運転士の間で「だれでもやっている裏技」なのだという。
通常の運行では、この直線で出す速度は100〜110キロ程度。塚口駅を過ぎるあたりからブレーキをかけ始め、カーブから約170メートル手前の名神高速道路の高架付近で70キロになるよう調整する。
しかし、遅れを出したときには減速を遅らせ、高速のまま同駅付近を通過、カーブの直前で急ブレーキをかけて70キロまで落とし、カーブを回るのだという。
高見運転士は、事故前の伊丹駅で40メートルのオーバーランを起こし、1分半の遅れを生じさせていた。通過駅の塚口駅でも1分の遅れ。カーブ直前でも時速は100キロ超に達していた。
1分遅れのために「裏技」を使ったことのある運転士は「乗客に急ブレーキのショックを与えるとわかっていたが、ダイヤ回復のために使ってしまった。見習い期間に指導の運転士から教わることもある。高見運転士も当然、知っていたはずだ」という。
●ペナルティー 厳しい「教育」、自殺者も
運転士たちがここまで遅れを恐れるのには理由がある。ミスをした運転士に課される「日勤教育」だ。
日勤教育は、電車の遅れなど問題となった状況を振り返り、原因を考えるリポートを、電車区の区長や助役が勤務する部屋の一角で書かせるものだ。リポートだけでなく、草むしりや窓ふき、ペンキ塗りの作業まである。
耐えきれず、01年に自殺した男性運転士(当時44)もいる。その運転士が日勤教育を受けさせられた理由は、京都駅で約50秒、発車が遅れたというものだった。
父親(74)は日勤教育による「いじめ」が原因だったとして、JR西日本側に損害賠償を求める訴訟を起こした。2月の大阪地裁判決は会社側が自殺を予見することはできなかったとして請求を退けたものの、日勤教育が自殺の原因だったことを認めた。
判決の認定によると、日勤教育の間は、月額約10万円の乗務手当が支給されず、収入が減る。終了の判断は区長の裁量に委ねられるため、本人にはいつ終わるか分からないという。
男性は1日に7本ものリポートを書かされ、「給料をもらって勉強しているのでしょう」と助役に言われたという。4日目には休暇を取り、自宅で首をつった。
この判決を不服として、大阪高裁に控訴している父親は今回の事故について「大きく遅れた運転士には『やってしまった』という気持ちがあったのでは。おどおどした気持ちでなく、安全運転に専念できる職場環境が必要だ」と話した。
兵庫県弁護士会は昨年、「折り返し運転で停車中に車両を離れて雑談した」などとして戒告処分を受けた上、約1カ月間花壇の草むしりや就業規則の書き写しをさせられた運転士から人権救済の申し立てを受け、JR西日本神戸支社に人権侵害行為をしないよう勧告している。
●私鉄との競争 7分差が売り、過密なダイヤ
高見運転士が急いだとみられるもう一つの理由が、JR西日本の社員が「曲芸的」ともいう過密ダイヤだった。
事故を起こした快速電車が向かっていた同線の尼崎駅は、97年に開通した東西線(京橋―尼崎)や神戸線(東海道、山陽線)との乗り継ぎ駅。ラッシュ時は3〜5分間隔で、宝塚―大阪間は快速で23分。一方、競合する阪急宝塚線は快速急行で30分かかる。この7分の差が利用客への売りだ。
しかも、尼崎駅で神戸、大阪、京都、京橋などの各駅に向かう電車に乗り換えることができる。神戸方面から走ってくる電車と、宝塚線の電車が並行して走ってきて同時にホームに入るという光景も珍しくない。
こうしたガラス細工のようなダイヤを維持するため、宝塚駅では乗客が電車を乗り降りする時間が約15秒しかないケースもある。運転士から「短すぎる」という声が上がっていた。尼崎駅でも同じホームに発着する神戸線や東西線の電車との乗り換え時間が30秒程度しかない時間帯がある。1本の電車に少しの遅れが出ると、接続する他線の列車にも少なからず影響が出るため、運転士のプレッシャーは大きい。
「ライバル社に輸送力で上回るためには、1秒の遅れも許さない雰囲気が社内にあった」と言う社員もいる。
PR情報
http://www2.asahi.com/special/050425/?t