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(回答先: 都会の死角 エスカレーター編・提言＜上＞ 多発する高齢者事故 (東京新聞) 投稿者 愚民党 日時 2005 年 3 月 29 日 01:23:31)
都会の死角 エスカレーター編・提言＜下＞
その一歩事故のもと
「上りエスカレーターで、前にいた夫が右側を歩いてきた男性にぶつけられた。よろけた夫を支えようとして後ろに転倒し、頭にけがをした」（七十代女性）
「左手が関節炎のため（左側の）手すりを使っていない。上りエスカレーターでバランスを崩して後ろに転倒し、頭にけがをした」（八十代女性）
「片側歩行の場合、小さな子と並んで手をつなげず、危険だと思う」（四十代男性）
こうした事故の事例調査や利用者の意識調査から、東京消防庁の検討委員会（委員長・高橋儀平東洋大工学部教授）が導き出した提言は、「（エスカレーターでは）手すりを使い、歩行は避ける」というものだ。
都内の駅などで定着している右側歩行の習慣に異を唱える内容だが、エスカレーターで歩くとなぜ危ないのか。調査結果を読み解いてみると−。
東京消防庁は、救急車が出動したエスカレーターでの事故千三百十七件（過去十九カ月間）のうち、三百十三件（四カ月間）について現場で状況を詳しく調べた。それによると、ステップに立っていてバランスを崩し、転倒するなどした人が事故全体の５０％と最も多く、このうち３６％が酒に酔っていた。
次いで乗降時の事故が３５％、歩いたり走ったりしてけがをした人が１２％と続き、“体の重心を移動させていた時”の事故が半数近い。ステップに立っていた事故の中にも、他人に接触された事故が含まれ、乗降時を除く事故の少なくとも五件に一件は歩行が絡んで起きていた。
高齢者への意識調査では６２％が「歩行は危険」と感じていた。
■ ■
エスカレーターで歩く危なさは、構造を階段と比較してみても分かる。
高橋教授は「標準的な駅の階段は『けあげ』（ステップの高さ）が十五−十六センチ、奥行きが二十八−三十センチだが、エスカレーターはけあげが二十センチ強、奥行きが三十−四十センチある」と、段差が高く奥行きが深いエスカレーターの構造を説明。「日本人の体形からすると（エスカレーターでの歩行は）ちょっとつらい」と、歩行が事故に結び付きやすい点を指摘する。
こうした結果から、検討委はエスカレーターについて「歩行には適さない」としている。
一方、手すりについては、事故時につかまっていなかった人が全体の４９％を占めたが、つかまっていた人も４６％いた。事故時に荷物を持っていた人は７２％に上り、手荷物がバランスを崩すなどの影響を与えた可能性がある。検討委は「手すりはバランスを保つのに有効だが、過信するのは危険」とする。
エスカレーターが非常停止すると、乗っている人に瞬間的に大きな加速度がかかり、前のめりになる。その際の安全確保も手すりの使用が前提になっている。
業界団体の日本エレベータ協会が二〇〇一年にまとめた調査によると、最近は非常停止した際の転倒が増えているという。
このほか検討委は、手すりの高さについて「高齢者や子どもの身体寸法に必ずしも適合しているとはいえない」と問題視した。
エスカレーターの手すりは一般的に高さが九十センチある。高橋教授は「普通の階段だと手すりは八十五センチが標準。（エスカレーターは）動くので、より安全性を高めないといけないが、（実際は）幼児が手すりにつかまるには手を伸ばさないといけない。このため、子どもは大人と手をつなぐのが基本だ」と話す。
ところが、実際には未就学児がけがをした事故のうち、５０％が手をつないでいなかった。提言では、エスカレーターが「成人用に造られている」として、保護者が手をつなぐ重要性の指摘や、より安全性の高いエスカレーターの開発を求める内容も盛り込んでいる。
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現状では、ショッピングセンターなどにも広がりつつある片側歩行の習慣が、子どもと並んで手をつなごうにもつなぎにくい雰囲気をつくっている。さらに駅舎では、高齢者がつまずきやすい高速エスカレーターも増え始めている。
乳幼児と高齢者のけがが多いエスカレーターでの事故。今回の調査と提言は、エスカレーターの利用実態や構造が、弱者に対してより厳しい「死角」を生んでいる状況も浮き彫りにしている。
文・森川清志
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http://www.tokyo-np.co.jp/00/thatu/20050329/mng_____thatu___000.shtml
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