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都会の死角 エスカレーター編・提言<上>
多発する高齢者事故
「高齢者が多いときは速度に配慮を」「乗ったら歩かないで」−。転倒事故が相次ぐエスカレーターについて、東京消防庁の検討委員会(委員長・高橋儀平東洋大工学部教授)が18日にまとめた行政初の提言は、詳しい事故の調査などを基に導き出された。調査結果からは、都会のエスカレーターが人々に便利さを提供している一方で、高齢者や乳幼児がけがをしている現状が浮かび上がる。提言を読み解きながら、多発する事故の背景を2回にわたって探る。
■62%、乗降時に『ためらい』
調査結果によると、救急車が出動したエスカレーターでの事故は、過去十九カ月間に都内で千三百十七件発生。「転倒・転落」が96%と大半を占めた。
年齢別では六十五歳以上の高齢者が53%と半数を超える。四歳以下の乳幼児も、五−五十九歳よりけがをする割合が際立って高かった。
高齢者が事故に遭う場所は、駅舎のエスカレーターが58%に上った。けがをした高齢者のうち、62%が午前十時から午後五時までの事故で、混雑するラッシュ時ではなかった。
けがの部位別では頭・顔・首が高齢者で78%(高齢者以外は71%)を占めた。程度別では入院を要する中等症以上が14%(同11%)あった。高齢者は他の年代に比べ、より深刻なけがをしやすい。
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消防職員らは都内各地のエスカレーターで約二万九千人を対象に利用実態の調査も行った。
これによると、高齢者は分速三十メートルのエスカレーターより、分速四十メートルの高速型でつまずく割合が高いことも判明した。特に分速四十メートルの上りエスカレーターでは、百人に二・九人の割合でつまずいたり、よろけたりしていた。
また、利用者に対する意識調査では、エスカレーターの運転速度を「速すぎる」と感じる高齢者は六十五−七十四歳で9%、七十五歳以上ではほぼ五人に一人に当たる18%だった。乗降時にためらいなどを感じることがある高齢者は62%に上った。
こうした結果から、検討委は「(高齢者は)身体能力の低下により、速度やタイミングに対する不安が高い」と分析。エスカレーターの設置者や管理者に対し「高齢者の利用が多い施設や時間帯では、運転速度に配慮する」と、状況に応じた低速化を提言した。
三菱電機ビルテクノサービス(本社・千代田区)は五年前から、スイッチ操作やタイマーで、標準の分速三十メートルから低速の分速二十メートルなどに切り替えられるエスカレーターの改造工事を請け負っている。工事は早ければ一日ほどで済み、百貨店などに導入実績がある。同様の工事は他メーカーも参入しており、時間帯に応じた速度の切り替えは可能だ。
これに対し高速化の動きもある。
旧建設省(現国土交通省)は二〇〇〇年、分速四十メートルなどの高速型を設置しやすくするための規制緩和を実施。これを受け、都内の駅では高速エスカレーターが増えつつある。
今回の調査と提言は、利用のされ方に応じてエスカレーターの運転速度を柔軟に変える必要性を指摘したといえる。
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設置者や管理者への提言ではこのほか、非常時に手すりが急停止してもステップが連動して停止しないエスカレーターが多いとみて、「手すり停止検出装置」の積極導入も求めている。
静岡県掛川市のホテルでは昨年六月、エスカレーターの手すりが急停止したのにステップが動き続けたため、利用者が次々と転倒、十二人が骨折などのけがをした。一九八九年には愛知県内でも同じような事故があり、小学生三十六人が負傷した。
検討委はメーカーに対しても、転倒防止のため滑りにくいエスカレーターを開発するよう提言。業界団体に対しては「積極的な広報によって利用者に事故の事例を知らせ、安全な乗り方の普及啓発を進める」よう求めている。
文・森川清志
http://www.tokyo-np.co.jp/00/thatu/20050328/mng_____thatu___000.shtml