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(回答先: スマトラ島・ジャワ島で相次ぎ噴火、2万人以上が避難(読売新聞) ― タラン山とタンクバン・プラフ山 投稿者 シジミ 日時 2005 年 4 月 14 日 20:23:00)
スマトラ、スーパー噴火の現実味
生物95%死滅、気候も大変動
オーストラリアの専門家が、インドネシア・スマトラ島のトバ山で「超巨大噴火(スーパー噴火)」が起きる可能性があると警告した。なにやら物騒な話だが、折しも、スマトラ島では、この警告からほぼ二週間後、同山とは離れた別の火山が噴火し、多くの住民が避難した。七万四千年前のトバ山の噴火では、地球の気候が変わったともいう。スーパー噴火の恐れは本当にあるのだろうか。
■豪の科学者がHP上で主張
予言したのは、豪州メルボルンにあるモナシュ大学地球科学学部のレイ・キャス教授だ。
同大学のホームページによると、キャス教授は「スーパー噴火が起こった場合、膨大な量の岩石と灰が放出され、二百キロ四方に有毒ガスが拡散する。死者は数十万から数百万人に達し、気候や食料生産に深刻な影響を及ぼす」と主張する。可能性がある地域として挙げられたのは、ナポリやニュージーランド、インドネシア、南米および北米。インドネシアではトバ山だという。同教授は「これを上回る脅威は小惑星の地球衝突くらいだ」とも話す。
この予言からほぼ二週間後の十二日、トバ山から南東に五百六十キロほど離れたタラン山(標高二、八九六メートル)が噴火し、山腹の住民二万五千人が避難した。メダンの日本総領事館によると、「スマトラ島沖で地震が続いたことに加え、トバ山で大噴火が起こるという風評が広がっていたために、一部ではパニックが起こった」という。翌十三日には、ジャワ島のタンクバン・プラフ山(標高二、〇七六メートル)でも噴火が起こった。
この“予言”について、「報道でしか見ていませんが、キャス教授は今にも起こるような言い方でずいぶん大胆だ。現地の専門家は一笑に付してますよ」と話すのは、国際協力機構(JICA)のシルバー・エキスパートとして同国の火山地質災害対策局でアドバイザーを務める西潔氏だ。
同局の観測では、トバ山に噴火の兆候を裏付けるデータはまったくないという。「普通の噴火活動でも火山性地震動など、地表でも分かるレベルの前兆がある。もしトバ山が前回並みの大噴火を起こすなら、何年も前から人類が経験したことのないような大きな前兆が起きているはずだ」
そもそもスーパー噴火とは何か。
京都大学の鎌田浩毅教授(火山地質学)によると、大きく分けると噴火には三種類あるという。雲仙・普賢岳や三宅島のような噴火は火山学上は小規模、阿蘇山のようにカルデラができるのが巨大噴火、そして地球上の生物の多くが死滅し、気温など環境の激変が起こるスーパー噴火だ。
スーパー噴火が起こる周期はざっと一億年。今から二億五千年前の古生代末、アフリカやシベリアでスーパー噴火が起こって生物が大量に絶滅し、時代は中生代に移った。二回目が六千五百万年前の中生代末。スーパー噴火による地球環境の激変が起こり、恐竜時代は終わりを告げた。
スーパー噴火が起こると、酸性雨が降り、気温が急激に低下し、全生物の95%が死滅する。一方、巨大噴火が起こる周期は一万年から十万年だという。
問題になっているトバ山では、前回の七万四千年前に、カルデラができる噴火が起きている。鎌田教授は「これはキャス教授の言うスーパー噴火ではなく、巨大噴火だった」とした上で、「スーパー噴火の前には巨大噴火が何度か起き、さらにその前に小規模噴火が何度か起こる。非常に長い時間をかけながら、噴火の規模が大きくなっていく」とし、“予言”を「根拠がない」と退けながらも、「巨大噴火ならば起こる可能性はある」と指摘する。
では、本当に巨大噴火が起きた場合、どんな影響があるのだろうか。
二十世紀最大の噴火とされる一九九一年のフィリピンのピナトゥボ火山噴火では、火砕流などで約九百人が死亡。火山灰が家や畑などに降り積もるなどして百二十万人が被災した。さらに噴火後の一、二年、北半球で平均気温が〇・五度下がる異常気象が発生した。
■薩摩半島の縄文文化壊滅
巨大噴火は日本でも実例がある。二万五千年前に鹿児島湾で起こった噴火がそれで、直径二十キロに及ぶ姶良(あいら)カルデラができた。さらに七千年前、鹿児島県薩摩半島の約三十キロ南の鬼界カルデラができた時の噴火で、当時、同半島にあった日本でもっとも先進的な縄文文化が、壊滅的被害を受けたとされる。同県でこの噴火活動を研究している県立武岡台高の成尾英仁教諭は「薩摩半島中南部までが火砕流に襲われ、激しい地震も同時に起きた。縄文文化が一時、断絶もしくは停滞したことは間違いない」と話す。
日大文理学部の高橋正樹教授は「前回のトバ火山噴火と比べると、鬼界カルデラの噴火は十分の一。ピナトゥボはその十分の一だ。それだけトバ火山の規模は大きかった」と指摘する。
東大地震研究所の中田節也教授も「もし、前回のトバ火山噴火と同規模の噴火が起きたとしたら、地球規模で巨大な気候変動が起きる」と指摘する。
中田教授によれば、マグマに含まれる亜硫酸ガスが、水蒸気と反応して硫酸ミスト(霧状物質)となる。これが大気中に浮遊する微粒子・エアロゾルとなり、日傘のように太陽光をさえぎって寒冷化が起きる。一方で、このエアロゾルは地表から放出される熱を大気外に出すのを防ぎ、温室効果をもたらす。
「相反する効果だが、噴火当初に起きるのはまず日傘効果だろう」と中田教授はみる。こうした異常気象は一年では終わらず、十年ぐらい続く可能性もあるという。気温低下は十度以上とする専門家もいる。
もっとも中田教授は現状でトバ火山がすぐに噴火する可能性は少ないと指摘、「地震が起きた場所とトバ火山が近いから結びつけられただけで、噴火の兆候はまったくない」と話す。
高橋教授も「前回の噴火はマグマなどの火山性噴出物が約二千五百立方キロ以上噴出したが、それから約七万年しかたっておらず、そこまでマグマはたまっていないはず。現段階で同規模の噴火が起きる可能性は低い」とみる。ちなみに二千五百立方キロと言えば、日本列島全土に高さ七メートルの噴出物が積もる計算だ。ひとまず安心だが、タラン山で起こった噴火は、スマトラ島沖地震と関係があるようだ。
前出の西氏は「先月二十八日のスマトラ島西岸ニアス島の地震のあと、タラン山の火山性地震動は増えた。それが十日に起きたM6・8の地震の数日前に収まり、十日の地震後また火山性地震動が増え始め、十二日に噴火した。明らかに因果関係がある。タラン山の噴火のエネルギーが臨界状態で、地震がその引き金になったのだろう」
こうした噴火の兆候を事前にとらえれば、現地住民の避難など、防災対策に役立つ。西氏はこう語る。
「巨大噴火は発生するスパンが長く、注意を呼び掛けても関心を持たれない。今回、キャス教授が大胆な警告を出したのも、火山噴火災害は地震や津波どころのもんじゃない、という意味だったのではないか」
http://www.tokyo-np.co.jp/00/tokuho/20050415/mng_____tokuho__000.shtml