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「米経済」各国懸念に反論、「ドル暴落起きない」 FRBが楽観論リポート
経常赤字容認の本音?
米国の財政と経常収支の「双子の赤字」を不安視する声が世界的に広がっているが、これに真っ向から反論する最新リポートを米連邦準備制度理事会(FRB)のエコノミストらがまとめた。「米国が巨額の経常赤字を抱えていてもドル暴落は起きない」とする内容で、米経済の楽観論を肯定し、「ドル安を容認するFRBの本音」をうかがわせる研究論文だ。(ワシントン 気仙英郎)
この研究論文は先進国の経常収支赤字の問題を取り上げたもので、ヒラリー・クローク、スティーブン・カミン、ソーバン・レデュークの三氏が先月発表した。過去数十年間で起きた先進国の経常収支調整について、二十三例を取りあげ、調整前後の経済指標を調べて経済の状況変化を実証的に比較した。
米国の二〇〇四年の経常赤字は、史上初の六千億ドル台となる六千六百五十九億四千万ドルで、前年比25・5%も増加した。実質国内総生産(GDP)比で約6%を超えている経常赤字は、世界経済にとって未経験の大きな数値だ。
日本や欧州を含む国際金融関係者は、米国の赤字を埋めている世界の投資家らが何らかのきっかけで、米国から資産を引き揚げる動きを一斉に始めれば、ドル暴落が起き、債券安、株安が世界に波及する最悪のシナリオが起きることを懸念している。米国の場合、経常収支赤字の拡大は、投資と比較して貯蓄が少ないことや財政収支の悪化が背景にあることから、各国とも米国に対して、貯蓄率を上げるとともに、財政赤字を解消するように求めている。
しかし、この論文は、こうした悲観論に正面から反論する内容だ。
論文はまず、過去の事例を検証した結論として、「経常赤字不均衡が是正される動きの中で、ドル暴落が起き、金利上昇、株価下落、そして成長の鈍化が起きるとする仮説を証明する証拠は希薄だった」と指摘。その上で、「通貨価値が下がる結果、輸出が拡大し、GDPの成長率が高まった事例があった」との分析を示した。
論文は、一九九五年のメキシコ通貨危機や九七年から九八年にかけてのアジア通貨危機、さらに二〇〇一年のアルゼンチン通貨危機など通貨暴落が経済を悪化させた途上国経済の事例も検証している。途上国経済は、ドル建ての債務に依存している度合いが強いため、通貨の下落が経済にあたえる衝撃度が大きく、先進国経済とは異なるとの分析を加えている。
この論文について、三氏はFRBの意見を代表するものではないと強調している。しかし、その後、FRBのグリーンスパン議長や他の理事らの発言が、経常赤字に対する警告から楽観論に微妙に変化してきていることから、この論文が結果的にFRBの楽観論を代弁する格好になっている。グリーンスパン議長は、今月十日の講演で、「二十−三十年前ならGDP比で6%の経常赤字を維持することはできなかっただろうが、経済のグローバル化が拡大した結果、米国が抱える巨額赤字の穴埋めは複雑で困難なものではなくなっている」との見解を示した。
ただ、こうした米経済の楽観論に対して、米有力シンクタンク、ブルッキングス研究所の谷口友彦研究員は「この論文は厳密な考証を経た研究ではあるが、未来を見る水晶玉としては用をなさない」と指摘する。さらに、同論文自体が末尾で、「経常赤字調整が将来、経済の混乱を引き起こす可能性を排除しない」と書いている点を挙げ、この論文が「世界の投資家から弱気を払拭(ふっしょく)する目的と政治性を帯びたものだろう」と話している。
http://www.sankei.co.jp/news/morning/27kei003.htm