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(回答先: JMM [Japan Mail Media] 「鉄道運転士と専門職」 冷泉彰彦 投稿者 愚民党 日時 2005 年 5 月 02 日 01:55:11)
「電車を捨て、自動車の自由さや小回りのよさを求めたのは住民だというかもしれない。しかし、そうではない。市民にはそのような決定権はまったくなかった。
同時期に全米45の都市で、路面電車はガソリンで動く路面バスに取って代わられた。アメリカの鉄道システムを崩壊させたのは、ほかの何者でもない、ゼネラルモーターズ(GM)を中心とした、鉄道がなくなることによって利益を得る企業団体だった」(文中より)
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自動車のための戦争 ビル・トッテン
http://www.ashisuto.co.jp/corporate/rinen/totten/ow_text.php?A=1&B=568
Subject : 自動車のための戦争
Number : OW559
Date : 2003年2月3日
アメリカを石油のために戦争に駆り立てているのは、兵器産業だけではない。自動車産業もまたその強力なサポーターである。自動車社会アメリカは、いまこそ方向転換をしなければいけない、アメリカだけでなく、世界のために。
(ビル・トッテン)
自動車のための戦争
アメリカのイラク攻撃に反対する抗議集会が1月18日、全米各地で開かれた。反戦団体などが組織したもので、ワシントンでは連邦議会議事堂近くに全米各地から数万人が集結し、「石油のために血を流すな」と書いたプラカードを掲げてイラク攻撃の姿勢を維持するブッシュ政権を批判した。同日、同じ集会が東京でも開かれ、約5千人の人々が戦争反対を訴えた。
独断的行動に反発も
イギリスですらイラク攻撃に積極的な姿勢を示すブレア首相に対し、与党・労働党の議員の多くが公然と批判している。しかし、日本政府は相変わらずイラク攻撃にまったく疑問を持たないかのように、国連決議がなくともアメリカが攻撃開始すればその支援を行うことを当然だとする発言をしている。
そして相変わらず日本の大新聞やテレビは、アメリカ国民のほとんどはイラク攻撃に賛成で、イラクが安保理に提出した申告書はうそで、核兵器を開発中で生物化学兵器もすでに持っており、それがテロリストの手に渡り、米国と同盟国に対するテロ攻撃に使われる可能性があるから一刻も早く攻撃し、フセイン政権を親米政権に代えないといけない、というブッシュ政権の主張だけが唯一の真実であるかのような報道を続けている。
そのブッシュ政権は、イラク占領が実現した場合の「フセイン後」のイラク建設について検討する小委員会「イラク、石油、エネルギーの将来ワーキンググループ」をつくり、着々とイラクの「石油」を誰が支配するかの策略に忙しい。
世界各地でアメリカの独断的な行動に反発が起き始めている今、アメリカの希望する条件を満たして攻撃が成功するとは私は思わないが、それでもアメリカは国策としてなんとかイラクの石油を支配下に置かねばならない。
アメリカがここまでどん欲に石油を狙う理由、それはアメリカが世界で類を見ないほど、石油を必要とする国だからだ。そしてこの戦争を画策しているのは、これまで私が主張してきた兵器メーカー以外にも強力なサポーターがいる。
異常な石油依存体質
アメリカでは自動車がなければどこにも行くことができない。特に郊外に住む住民は、さまざまな種類の車を手に入れることはできても、その車に替わる交通手段を手にすることはまったくできない。アメリカの都市設計は異常なほどに自動車に依存している。このために、アメリカはどうしようもないほど石油依存体質となっているのだ。
アメリカで最初の自動車が売りに出されたのは1908年、その10年後には自動車登録は8千台から50万台に増加したが、1930年代、ロサンゼルスの空はいつも澄んでいた。
当時すでに近代都市であったが、路面電車システムがロスを中心に56もの都市に何千人もの通勤者を運んでいたからである。現在、この路面電車はもちろん跡形もない。線路は取り外され、舗装され、その結果澄んだ青空は排気ガスに取って代わられた。
電車を捨て、自動車の自由さや小回りのよさを求めたのは住民だというかもしれない。しかし、そうではない。市民にはそのような決定権はまったくなかった。
同時期に全米45の都市で、路面電車はガソリンで動く路面バスに取って代わられた。アメリカの鉄道システムを崩壊させたのは、ほかの何者でもない、ゼネラルモーターズ(GM)を中心とした、鉄道がなくなることによって利益を得る企業団体だった。
まだ自動車がアメリカの主な交通手段になるとは到底思えなかった1930年代にそのキャンペーンは始まった。GMは路面電車をバスに切り替える事業に資金供与し、持ち株会社を設立した。その会社が路面電車の会社を買収して閉鎖し、GMのバス事業部へ移管した。そしてバスは徐々に自動車に置き換えられていった。
公共交通網の強化を
その後の都市開発政策でアメリカはさらに自動車依存の国となる。自動車は密集した都市部から緑あふれる郊外へ逃げ出す手段であり、その逃避ルートを都市開発者は提供していった。郊外へ続く道路が次々と整備され、大都市では公共の交通網でカバーできないほど、郊外居住地区が拡大した。自動車産業はアメリカにおける最大の雇用者として、国民の生活だけでなく都市の景観もつくり上げていった。
世界全体では、石油消費量の約3分の1が自動車による消費だが、アメリカだけで見るとその割合は3分の2である。他の国々は石油利用の多くは暖房や電力発電が占めている。
1973年のオイルショックでは、石油価格の暴騰で暖房や発電の代替燃料が奨励されたが、自動車の代替燃料は検討されなかった。石油生産とその利用がもたらす社会的負担を反映せずにガソリン価格は人工的に低く抑えられたからである。
その石油が枯渇しつつあることは誰の目にも明らかだ。石油生産は今後10年から15年でピークになるといわれている。アメリカ政府にとって供給確保は最大懸念事項なのだ。
イラク攻撃の要因の一つをなくすためにもアメリカは公共交通網を強化し、新しい道路建築に反対し、自動車の利用がもたらす社会的コストを取り払う時期にきている。アメリカに次いで石油消費の多い日本にも、同じことが言えるはずだ。
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