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1月9日付・読売社説
[『戦後』を超えて]「国際協調を再構築できるか…米国の重い課題」
【「脅威」をどう封じるか】
冷戦の終結、さらには二〇〇一年の9・11米同時テロ後の激動する世界で、新たな国際秩序をどう築くのか。イラクを「テロとの戦い」の主戦場と位置づける「戦時の米国」だけでなく、日本にとっても極めて重大な課題だ。
二期目を迎えるブッシュ米政権は、一国行動主義への傾斜を深めるのか。それとも国際協調を重視していくのか。米国の外交・安保政策は、世界に重大な影響を与えずにはおかない。
「9・11」で、国際テロと大量破壊兵器の拡散という「新たな脅威」が、冷戦終結後の安全保障上の難題として浮上した。
国境を超えて浸透する脅威に、防止と抑止の態勢を整えることは、国際社会全体が取り組むべき喫緊の課題である。
ブッシュ政権は、二〇〇二年に発表した国家安全保障戦略の中で、米国の安全を守るためには、必要なら単独でも先制行動をとるとした。同時に、「いかなる国家も単独では、より安全で、よりよい世界を築くことはできない」という信念も披瀝(ひれき)している。
脅威の拡散を阻止する国際協調体制を強化していく中でこそ、新たな国際秩序が見えてくるはずである。
唯一の超大国である米国は、どんな国際協調の枠組みを構想し、その中で、いかなる主導的役割を果たしていこうとするのか。
今年は、その方向性を占う一年だ。試金石となるのはイラクである。
イラクは今年、重要な岐路に立つ。
一月末、独裁政権下ではあり得なかった自由選挙で、国民議会が誕生する。八月までに憲法草案を作り、十月に国民投票にかける。十二月には新憲法のもとで総選挙を行い、本格政権が発足する。
この政治プロセスの成否は、世界にとっても死活的な意味を持つ。
米国がもしイラクで失敗すれば、世界最大級の石油資源国は内戦状態となり、テロの温床と化す恐れがある。
【試金石となるイラク】
イラクの混迷と米国の信頼失墜は「新たな脅威」の拡散に一層の弾みをつけ、世界は危険な状況に陥るだろう。日本の安全と繁栄という国益も脅かされる。
政治プロセスが円滑に進むよう、国際社会全体で支えねばならない。
前途には幾多の難関がある。
最も懸念されるのは、反米武装勢力による選挙妨害だ。イスラム教スンニ派の、選挙ボイコットの動きも問題だ。旧政権で支配階層だったスンニ派は人口では二割に過ぎないが、政治プロセスから離脱すれば、イラクの統合は失われる。
選挙後も、不安が多い。
多数派のイスラム教シーア派“支配”となった場合、国内反対勢力の反発で混乱が生まれないか。北部のクルド人の分離独立傾向や、石油など経済権益をめぐる各派対立も、波乱要因である。
対イラク開戦以来の米軍死者は、千三百人を超える。主要な戦闘の終了宣言から二十か月たってなお、十五万の兵力をイラクに駐留させざるを得ない状況は、戦後統治の蹉跌(さてつ)を意味しよう。年間500億ドル(約5兆円)の戦費は、財政赤字に悩む米政権に大きな負担だ。
米国といえども、軍事力だけでは、再建プロセスを安定軌道に乗せることはできないのが現実だ。
治安維持に軍事力は必要だが、選挙などの政治プロセスや復興では、国際社会の支援が不可欠である。
米欧は、イラク戦争で深めた亀裂を修復していくことが重要だろう。二月のブッシュ大統領の訪欧は、そのための重要な外交舞台となりうる。
【旧システムからの脱皮】
イラクだけではない。北朝鮮とイランの核開発問題、アラファト議長の死で転機を迎えたパレスチナ問題など、対処すべき多くの難題がある。解決には、米国のリーダーシップ発揮が欠かせない。
米国は、一国の軍事費が、世界全体の軍事費の半分近くを占める圧倒的な超大国だ。世界一の経済大国でもある。冷戦終結後の世界で、国際平和に中心的な役割を担えるのは米国だけだ。
その米国は、冷戦初期以来、半世紀ぶりという情報機関の抜本的改革や、第二次大戦や朝鮮戦争の名残をとどめた在外米軍の配置の見直しを進めている。在韓米軍の縮小合意に続き、在日米軍の再編協議が進行中だ。
冷戦時代とは異なる、複雑でとらえにくい脅威に的確に対応し、有事への迅速展開を可能にしようとするものだ。
旧来のシステムからの脱皮を図る米国の変革は、日本の外交・安保戦略にも大きく影響してくる。米国との同盟関係の強化、発展を軸に、日本の安保体制を変革し、国際平和の構築に積極的な役割を果たす体制を整えるべきである。
(2005/1/9/01:45 読売新聞 無断転載禁止)
http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20050108ig90.htm