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『週刊金曜日』2004 年12月24日・2005年1月7日合併号(No.538)
63p
「論争
遺骨のDNA鑑定結果をめぐる歪んだ解釈
義井 豊(在ペルー)
北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)が提出した横田めぐみさんの遺骨といわれる骨のDNA分析の結果で、横田さんの遺骨ではないという結果が出たとして政府、遺族がその結果について北朝鮮の欺瞞を声高に非難している。はたして、DNA鑑定そのものは正当に行われたのだろうか。科学警察研究所は、提供された遺骨からDNAが抽出できなかったとしてその鑑定にまで至っていない。ところが、もう一方、帝京大学は、五つのサンプルから四つは同じ人物、一つは別の人物というDNAを抽出し、いずれも横田めぐみさんのDNAと違うと判定している。政府は、なぜかこの帝京大学の結果を当然のように結論として採用した。果たして、その結果といわれる内容と採用の仕方に科学的根拠と正当性があるだろうか。
まず、一般論として、二つの研究機関が分析を行なって片方がDNAの検出ができなかったということは、もともとこれらの遺骨のDNAが極く僅かだったからである。提供された骨が焼かれているということが伝えられているからなおさら微小のDNAしか検出できないことは想像に難くない。DNA摘出はかなり困難な状態だったと思われる。この場合は、さらに検出方法は注意を要する。僅かしかDNAが検出できない場合、付着している微妙なDNAを感じ取って複数人のDNAを検出するケースがよくあるといわれる。
遺骨はDNA検出作業をする研究室や過去に複数の人が触っていたためにコンタミナシオン(汚染)されていた可能性がある。そのために、触った人のDNAが検出されるケースが多い。
DNAが検出できなかったという事実と検出できた事実は、同じ科学的事実である。法医学のための設備として世界的な環境にあるはずの科警研が検出できなかったこともまた、無視すべきでない結論のはずである。結論を採用するとき、委託した二つの研究機関が一致した時それを採用すべきだろう。今回のように一致しなかった場合は、最低限さらに第三の研究機関に分析を委託すべきだ。それができないならば、当然、結論は、二つの事実を併記するか、結果不明というのが結果だろう。
片方の結果を採択したその根拠に対する科学性がなく、まったく意味不明な結論の出し方といわざるをえない。さらにそこから、北朝鮮の不誠実を言うのは、あまりに性急である。食糧援助を中止し、経済制裁云々の決定につなげることには、科学分析の方法を歪曲して政治的に利用しているに過ぎないと思える。
北朝鮮は、自分たちの都合のよいように事実を改ざんしてきた。しかし、同様に小泉政権もまた事実を都合よく解釈していることは分かりやすいほど明らかで、そのために国民は日々不都合な場所に追いやられているのが現実に見える。