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(回答先: CIA高官、相次ぎ辞職 内紛劇に賛否渦巻く [CNN] 投稿者 あっしら 日時 2004 年 11 月 17 日 00:23:19)
ライス国務長官とCIA騒動で最強のブッシュ政権ができる
パウエルの事実上の更迭でコンドリーザ・ライスが国務長官となった。すでにブッシュの家族とも個人的にも親しい関係にもあり、とやかく言わずとも流れとしてはそれほど不自然なものではない。当面は、ライス国務長官にどれだけの外交能力があるのか(ピアノの能力ではなく)ということに関心が向くのも当然だろう。
日本としては、穏健派のパウエルの更迭に伴い、親日的と見られてきたアーミテージ国務副長官も事実上更迭されたので、いわばパイプを失った状態となりこれからどうなるのか、というような話題にもなる。そうした見方が間違っているとも思わないが、やや日本的な物語に過ぎる印象はある。ちょっと違うかな、と。
この違和感をどう表現したものかネットをうろつきながら読んだBBC"Washington's bureaucratic battles(ワシントンの官僚的闘争)"(参照)がわかりやすかった。BBCによれば、ブッシュが親近感を深く持つライスが国務省(日本の外務省に相当)のトップに立つことで、省庁の官僚組織全体が行政(ワシントン)の配下に強く置かれることになるというのだ。
The resignation of Colin Powell and the selection of Condoleezza Rice as secretary of state means that in President Bush's second term, the State Department should be firmly under White House influence.
【試訳】
コリン・パウエルの辞任とコンドリーザ・ライスの国務長官任命は、ブッシュ政権二期目において、国務省がホワイトハウス(大統領府)の強い影響下に置かれることを意味している。
官僚は行政の手足なのだから、国務省が行政の影響下に置かれて当たり前のようだが、実際には米国の政治はなかなかそう行かなかった歴史がある(日本でもそうだが)。ある意味、イラク戦争後の統治のごたごたはこうした米国内部の闘争の反映という側面もある。
こうした経緯をBBCの解説記事では歴史的に簡素にまとめていた。BBCの報道・解説は基本的には英国民を対象としているわけだが、こうした記事が解説として出てくるということは、英国民にとっても米国という国はやや不可解な外国ではあるのだろう。
重要なのは、官僚組織である国務省と大統領府(国家安全保障会議)の外交路線での対立関係だ。
Tension between the State Department and the National Security Council is part of the American way in foreign policy. Sometimes, in the White House view, the location of the State Department in the "Foggy Bottom" area of Washington also refers to the view of the world as seen by its rivals.
【試訳】
国務省と国家安全保障会議の対立的緊張関係はアメリカ流の外交に当然含まれるものであった。行政の主体である大統領府からしてみると、ワシントンの「霧の底地」にある国務省の存在はその対立者の世界観にも見なされていた。
対立者はこの段落の前段にもあるが、ホワイトハウスのスタッフと官僚組織である国務省だ。国務省は議会寄りでもあるので、国会(議会)対内閣の構図もあるはず、とはいえ、現状、議会も大統領と同じく共和党優勢なので、この対立構図は弱まっている。余談だがまさかと思って英辞郎で"Foggy Bottom"を検索したら、「米国国務省◆俗称」ともあった。
米国では、外交面だけではなく、軍事面も国家安全保障会議(National Security Council)が担うのだが、これも他機関との対立関係にある。
The State Department is an important voice, but only one voice. The Defense Department will have a view - so will the CIA and other departments. Differences are supposed to be hammered out in the National Security Council.
【試訳】
国務省の見解は重要だが、対外的には一見解に過ぎない。国防省も、また、CIAなど他部門も同様である。違いがあれば、国家安全保障会議から叩き出される。
BBC解説の解説がしたいわけではなく、ここにCIAが言及されている点をちょっと使いたかった。国務省と大統領府と同様の問題が、CIAと大統領府でも発生しているというのが、このところのCIAのごたごたのようだ。日本語で読めるニュースとしては読売系"CIA高官相次ぎ辞任、長官・生え抜き組の対立表面化"(参照)がある。
AP通信などによると、米中央情報局(CIA)のスパイ活動を統括するカッペス作戦部副部長が15日、辞任した。
12日にはマクロクリン副長官が辞意を表明しており、相次ぐCIA高官の辞任に、9月に就任したばかりのゴス長官と生え抜き組の確執が取りざたされている。
このニュースは実際にはニューヨークタイムズとワシントンポストの焼き直しなので、元ソースで論じてもいいのだが、簡略を兼ねて引用する。
また、ニューヨーク・タイムズ紙によると、複数のCIA筋は「局内のごたごたは過去25年間で最悪」と述べ、カーター政権下でCIAに風当たりが高まった時以来の険悪なムードだとこぼしている。
同紙によると、CIAは同時テロ以降、イラクの大量破壊兵器を巡る情報収集の失敗で批判にさらされているが、局内では「ホワイトハウスと議会がCIAを不当にたたいて生けにえにしようとしている」との不満が強まっている。
こうした事態をワシントン・ポスト紙は「CIA大混乱」の大見出しで報道。ゴス長官が「幹部の進言に耳を貸さない」と指摘し、長官が今や局内で孤立しつつあるとの見方を示した。一方、「ゴス氏は改革を嫌う勢力の抵抗を受けているだけ」(マケイン上院議員)と長官を擁護する声もある。
大筋でこのまとめでもいいのだが、一番重要なのは、大統領府、つまりブッシュ政権が事実上これまでのCIAを潰そうとしていることだ。このあたりは、サロン・コムの"Killing the messenger"(参照・有料かも)が、批判的とはいえ、明快だ。
Porter Goss' purge at the CIA will ensure the agency is full of Bush yes men -- but it will seriously damage U.S. intelligence.
【試訳】
ポーター・ゴスによるCIA内の人事パージ(掃討)によって、この機関は完全にブッシュのイエスマンで満たされることになる。それは、米国の外交・諜報活動において深刻なダメージとなるだろう。
ちょっと話が前後するが、もともと大統領選挙後半ではCIAはかなりブッシュ叩きをやっていて、マスメディアやケリー候補寄りの人々が踊らされていた。サロン・コムはケリー候補支援だったこともあり弱く書いているのだが…。
The last several months of the presidential campaign saw a series of intelligence disclosures concerning Iraq and the war on terrorism that the White House regarded as intended to derail Bush's reelection.
【試訳】
大統領選挙前のこの数ヶ月の間にイラク戦争とテロとの戦いについての情報が各種公開された。CIAによるこれらの活動を、ホワイトハウスはブッシュ再選阻止の行動と見なしていた。
実態は、ウォールストリートジャーナルに掲載された"The CIA's Insurgency"(参照)がより詳しい。が、この件についてはこれ以上立ち入らない。
取って付けたようなまとめになるが、ライス国務長官とCIAの混乱は、米国のなかで、歯止めのない権力が形成されつつことを意味しているのだろう。
それだけである種の恐怖感を覚えるのだが、もともと、ネオコンの外交というものはそういう本質のものだった。むしろ、前期のブッシュ政権では対外的にのみ目を向けて、獅子身中の虫を甘く見て、やられてしまった。
この強権の成立は、民主主義というものの事実上の崩壊なのだろうか? こんなもの所詮金権政治だから壊れると楽観視できるだろうか。
率直言うと私はわからない。原理的にはなんらかのカウンターパワーが必要なのかもしれないとも思えるが、これも率直に言うと、米国内の民主党のありかたや、対外的にはEUを呑み込んだフランス・中国帝国チームがそれになるとはとうてい思えない。
http://finalvent.cocolog-nifty.com/fareastblog/2004/11/cia.html