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ファルージャとイラク占領:今後のシナリオ
ファルージャ攻撃と民間人の虐殺。米軍による不法占領はこれからどうなるか。中東の専門家による分析を紹介します。元はTomDispatchに11月10日に掲載されたもの。
米軍がかつてないほど、そしていっそう破壊的にファルージャ奥深くに入り込んでいる中で、この暴力事態に対する主要な関与者は誰もが、この出来事を自分に有利なようにしようと複雑でくるくる変わる計算をめぐらせている。以下では、ファルージャ侵攻がもたらす可能な結果の中で、最もありそうな4つのシナリオを、ブッシュ政権が最も推している見解から順番に述べることとする。結局のところ、これらのシナリオは、イラクについての米国の戦略家たちにとって成功の機会が閉ざされるだろうことを示すことになる。4つのうち「最上の」結果(米国政府の観点からという意味だが)でさえ、19カ月前に侵略を正当化するに役だった「自由」と「民主主義」の装いを放棄するものになる。
ハマ解決
1982年、シリア大統領ハファズ・アル=アサドは、ハマ市で2万人もの人々を殺し、その過程でハマ市中心街を破壊し尽くすことで、ムスリム同胞団に関係する宗教活動家たちが起こす可能性があった全国的な蜂起を弾圧した。この「ハマ解決」のイラク版として、米国とイラク人の仲間たちはファルージャを比較的速やかに制圧するかもしれない----ファルージャの基盤インフラがどれだけ損なわれるかはわからないが----。その過程でファルージャのレジスタンス戦士たちの大部分を殺し、それとともにファルージャ侵略前に逃げ出すことができなかった貧しい人々や幼い人々、年老いた人々、弱った人々を数え切れない程殺して。そうなれば、ファルージャは、他の「反抗的」な町にとって恐ろしい例となるだろう。今年早秋にムクタダ・アル=サドル師のシーア派蜂起が終わった----どれだけ一時的であるにせよ----ことは、南部のナジャフとバグダードのシーア派スラムであるサドル・シティから米軍を解放したため、こうした方略が成功する可能性を高めることとなった。同時に、ファルージャに大規模攻撃を加えると何カ月も脅し続けたことにより、政治的解決により大量の民間人被害者を避けようとする地元グループと、地元との関係がないため死ぬまで戦う決意でいる外来のジハード戦士との間に、レジスタンスの分断線を作り出すこととなった。
一方で、数カ月にわたり武力の威嚇を行っていた間に、多くの地元戦士やジハード戦士の指導者たちは侵略が始まる前にファルージャを立ち去ることとなった。これは、来年1月に行われる予定の占拠に間に合うように「スンニ・トライアングル」を制圧したい米軍戦略家たちとイヤド・アラウィ暫定政権ととって、困った展開となった。結局、先週、米軍がファルージャでの戦闘に専心しているあいだに、反乱部隊はラマディの中心部を再占領し、サマラで激しい攻撃を加え、バグダード各地で戦闘を起こし、モスルの当局を追放した。そして、ファルージャで何が起きようと、反乱勢力は決して打倒されたわけではないことを示す事態は、これらの他にもたくさんある。
けれども、ファルージャを奪回し他の町の反乱部隊兵士たちの士気を挫くに十分な数のレジスタンス戦士を殺せば、米国戦略設計家たちは、少なくとも、スンニ派イラクを制限付きであるが制圧する途上にあると期待することができるだろう。それから、スンニ派指導者たちを買収したり説き伏せたりして、十分な数の追従者や戦士や民間人を他の所でも殺せば、これから数カ月はイラクを静かにさせることができる。米国政府は大きな安堵のため息をつくことができることになる。そして、イヤド・アラウィ----最近私が話をした上級イラク暫定政府スタッフによると、米国が彼を素通りしてナジャフ包囲終了を直接交渉したことに激怒している----も、また(私が話をした情報源によると、最近アラウィがニューヨークに来た際、手にバンデージをしていたのは、米国大使ジョン・ネグロポンテとシーア反対派指導者が秘密に会談を持ったことを知って「こぶしを壁にたたきつけたから」であるという)。このシナリオでは、「民主主義」は、制限され演出された占拠を通して何らかのかたちでアラウィ政府を延長することを意味することになるだろう。
イスラエルに占領されたパレスチナ人の領土で終わりが無いかのように思われる暴力から、我々は、占領下においた人々を制圧することが終わりなき仕事であることを学ぶことができる。けれども、ブッシュ政権が今望んでいるように、反乱勢力を暴力で粉砕できるとしても、来年の春また反対が起きたときに、それは「選挙で選ばれた」イラク政府の問題となる。米軍兵士は、米軍兵士の犠牲を減らすために、一ダースあるいはそれ以上ある米軍基地に引きこもるだろうが、暴力が手に負えなくなるならば、いつでも呼び出されることになる。そうなると、イラクは、コロンビア、イスラエル、スリランカをはじめとする、進行中だが「統制可能」な政治的暴力の起きている地域と同じようになるだろう。その間、アメリカ合州国は、世界第二の石油埋蔵国にのさばることになる。現在ブッシュ政権に可能な最上のオプションがこれである。
ジェニン・シナリオ
ファルージャがほとんど制圧されながら、より小規模な戦闘が数週間から数カ月にわたって裏通りで続くとすると、イラク全土で混沌と無政府状態が増大するかもしれない。それにより1月の「選挙」は撤回あるいは延期を余儀なくされることになろうが、それでも、状況が完全に米国にとって統制しきれないものになる可能性がある。アラウィ政府はバグダードでは何とかそれなりに権力を掌握し続け、米軍はイラクを無期限に占領し続ける事態になりうる(混沌の中で米軍が撤退するわけにはいかないという議論によって)。反対勢力は時間がたてば次第に消耗し、それによって、「独立後」のシステムが米国の利益に都合の良いものになる地盤ができる。
ここでは、現在のファルージャの作戦に関して、2002年のイスラエルによるジェニンのパレスチナ難民キャンプ包囲がモデルとなるかも知れない。ジェニン攻撃は大規模な怒りと暴力と混乱をパレスチナ社会にもたらし、国際社会の怒りを引き起こしたが、ホコリがおさまったあと----ホコリは普通おさまる----、イスラエルの戦略的地位は、以前よりも強いものとなった。
イラクで、ジェニンでほど有利にホコリが収まらなくても、あるいはホコリがそもそも全く収まらなくても、ブッシュ政権タカ派は、低強度の混乱を自分たちのために利用して、それをシリア(シリアとの国境近くにあるイラクの町タルアファルに、米国は最近、残虐な侵略を加えた)あるいはイラン(イランが欧州とどのような核協定を結んだかに関係なくすでに米国政府高官たちの視野に入っている)にまで広めるよう仕向けることができる。実際、イスラエルの工作員が、両国の国境地帯でクルド人とともに、そうしたシナリオの実現可能性をすでに検討している。一方、私が話をしたイラク政府関係者によると、米国の石油企業は石油埋蔵がまだ確認されていないイラクの90%を静かに探索しているという。砂漠の石油ではなく都市部の暴力に集中しているメディアによる赤面ものの調査を受けることなく。米国人の犠牲はやはり限定されたものとなり、メディアの注目もあまり過度ではないだろう。したがって、現在の状況では、ジェニン・シナリオは、ブッシュ政権にとって静かなけれども重要な勝利と見なされるだろう。
「英国型」解決(1920年の再来)
ファルージャ侵略が逆噴射し----戦闘が長引き、そしてたとえば、大規模な民間人犠牲者が出ている証拠が世界に向けてアルジャジーラの記者などからビデオ電話で伝えられると----、イラク人の意見に火がついて、より広範囲なスンニ派の反乱あるいはさらにはスンニ派とシーア派の反乱にまで至るかもしれない。1920年、イラクを占領していた英軍が大規模な武力を使って国を制圧しようとしたときに実際に起きたことであり、結果は占領者(そして被占領者)にとって壊滅的なものとなった。あるいは、ファルージャの抵抗がより強固だったり米軍士官たちが予想したよりも重武装していて、戦闘を長引かせ、ナジャフ包囲の時と同様に妥協的解決が必要になるとすると、やはり蜂起が促されることになる。あるいは、イラクの反対勢力が、計画時間が数カ月あったのだから、ファルージャには最小限の兵力しか残さずに、米軍とそれに同盟するイラク人に対して後で行動を起こそうと考え、イラクのスンニ派地域(およびシーア派地域)でさらに規模の大きい持続的な行動に出たときも----この可能性はますます強まっている----結果は同じものになるだろう。
これらの展開の一つあるいはいくつかが重なると、米軍とイラク暫定政権について残された信憑性[そんなものがあれば]は破壊されるだろう。封じ込めに失敗すれば、現在の反対勢力は、米軍の圧倒的で無差別な武力を前に、シーア派のかなりをも引き込んで、より広範囲な蜂起を引き起こすかもしれない(シーア派の指導者たちは、4月のファルージャ包囲と比べると、沈黙を守っている)。過去18カ月で10万人もの市民が殺されたのを目にした国で人々が感じている強烈な怒りを、それは利用するだろう。撤退の政治的コストはほとんど計算不能なほど大きいため、ブッシュ政権は、実際の撤退を検討する前に暴力の規模を(ベトナム侵略の際のように)順次引き上げ、来年もまた何万人もの死人を出せば、イラク人は米軍のイラク駐留継続そして最重要事項としてのイラクの石油資源管理を米国が継続することを受け入れるだろうと期待することになるだろう。
「フランス型」シナリオ
「英国型」シナリオのうちどのバージョンであれ、遅かれ早かれ、ブッシュ政権はさらに不安定な「フランス型」シナリオの叢林に引きずり込まれるだろう。このシナリオでは、占領の人的犠牲についてますます人々が知ることとなり、すでに圧倒的なレベルに達している政治的汚職もあいまって、イラクの全面主権回復に向けた移行の次段階を国際化したいということになるだろう(最近イラクから逃げ出したアラウィの元トップ顧問は、イラクの絶望的な汚職について、私に「新政府はサダム政府と同じだ。違いと言えば、顔だけだ」と語った)。「フランス型」シナリオは、フランス・ドイツ・スペインにコフィ・アナン国連事務総長が加わって仲裁にあたり、イラクで続けられる惨劇に刺激された世界中の反戦運動に支持されるだろう。反乱勢力の活動が続く中で、米国とアラウィ政府がイラクを安定化させるのに完全に失敗した[実際には米国とアラウィ政府がイラクを不安定化させている主要因]という認識に基づいて、停戦と主権国家への移行の国際化への圧力が高まるだろう。フランス大統領シラクが米国の覇権に対抗する勢力を構築したいと述べ、コフィ・アナンが米国の振舞いにますます不満を強めている中、そうした展開が起きやすくなるだろう。同時に、イラク暫定政権のスンニ派メンバーの辞任もあり得、また、スンニ派が米国が組織した選挙に全面ボイコットする可能性もある。そうした動きを求める国連安保理決議案には米国と英国が拒否権を行使するだろうが、そうした方向を支持する流れは、選挙に向けた占領の体制に大きな変化をもたらす可能性がある。
これら4つのシナリオはいずれも、ブッシュ政権の「民主的で繁栄したイラク」[見かけの選挙と石油資源の略奪・イラク人の絶望的状況]というビジョンがどんどん狭まっていることを示している。最後の選択肢----これは米国にとってある種最大の侮辱である----については、米国政府とアラウィ政府は強固に反対するだろう(そして可能性としては、反対勢力の一部派閥もあまり喜ばないかも知れない)。
現在のイラク危機におけるワイルドカードは、イラクの人々である。イラクの人々の多くは、フセイン政権の崩壊以来、どちらかというと、イラクの政治的光景が再定義される姿を恐れながら見ている観客として振舞っていた。この消極性----過去20年にわたる経験を考えればわからなくはないが----は、オスロ和平プロセスの最初の数年にパレスチナ人が消極的だったと同様に破滅的であることが明らかになっている(パレスチナでは、それにより、イスラエルが西岸とガザで入植地を増やすこととなり、ヤセル・アラファトは実質的にタダで自分の権威主義的な腐敗した支配を固めることとなった)。
アヤトーラ、アリ・シスタニがナジャフ包囲を終わらせるために大規模な非暴力の動員を呼びかけ、また、女性グループが社会的権利の剥奪を阻止したことは、いずれも、イラクの人々は、自分たち自身の運命を積極的に切り開くことができることを示している。シスタニに応えたナジャフ包囲のときのように、シーア派が全土で道にあふれ出すならば、イラクの状況はすぐさま別の様相を示すだろうし、米国の占領は、終わりまでの日がますます早まるだろう。けれども、イラク社会は、米軍の作戦家たちそして反乱勢力[の一部]の暴力的計算に反対し、占領と専制、腐敗、過激主義のない未来のビジョンを提出することができるだろうか?
そのためには、イラク人たちの成功を祈るだけでなく、国際社会が自らの手を汚して、イラクの人々がその機会を確実に持てるように努めなくてはならない。
マーク・スヴァインは米国カリフォルニア大学アーバイン校の現代東洋史・文化・イスラム研究教授で、近刊 Why They Don't Hate Us: Lifting the Veil on the Axis of Evil 、 Overthrowing Geography: Jaffa, Tel Aviv and the Struggle for Palestine, 1880-1948 の著者。また、Viggo Mortensen, Pilar Perez とともにTwilight of Empire: Responses to Occupationの共編者。今年早春にイラクを訪れている。
著作権C2004 Mark LeVine
[この記事は11月11日に、Tomdispatch.comに掲載された。これは Nation Institute のウェブログで、Tom Engelhardt によるオールタナティブの情報やニュース、分析を掲載している。Tom Engelhardt は、ベテラン編集者で、 The End of Victory Culture および The Last Days of Publishing の著者。
米軍の戦争犯罪を一刻も早くやめさせ、傀儡政権ではなく人々の意向を反映した政府を実現し、米軍を撤退させ、この侵略と不法占領・戦争犯罪に関与した人々を、命令系統の最上部から、きちんと裁くこと。
こう書くと、「非現実的」と言われそうですが、それに対して「現実的」とは何か、を考えると、今、「現実」と呼ばれているものは、自分たちがまず暴力を振るって民間人を殺しておきながら、そしてそれを止める責任を負う主権者たちが傍観しておきながら、「いやー、でも、今の世の中では、人が殺されるのが現実なんだよ、民間人でもやっぱり殺されるんだよ」と言っているようなものに等しい。
だったら、やっぱりそんな「現実」とは別の可能性を構想し、働きかけるほうがよい、と思います。
投稿者:益岡
http://humphrey.blogtribe.org/entry-8152236a098058a0ef754ca22bf4b435.html