現在地 HOME > 掲示板 > 戦争63 > 279.html ★阿修羅♪ |
|
Tweet |
(回答先: 天木直人・メディア裏読み(11月15日)パレスチナにネルソン・マンデラは現れないか/米国のミサイル防衛計画に… 投稿者 天木ファン 日時 2004 年 11 月 15 日 21:03:44)
■イスラエルの獄中から自治政府長官選挙への立候補を検討するマルワン・バルグーティ氏
(2004年11月16日掲載)
パレスチナ自治政府の中央選挙管理委員会は2004年11月14日、故アラファト長官の死去に伴い、後任を決めるための選挙を2005年1月9日に実施する旨、明らかにした。因に、前回選挙は1996年1月に行われアラファト長官が圧倒的支持を得て選出された。
PLOの主流派、特に旧世代の多くはアラファト死去後に同議長に就任したムハンマド・アッバス氏をパレスチナ自治政府の後継長官とすることを考えているが、新世代や非主流派、特にハマス等のイスラム過激派には異論も少なくない。パレスチナ社会の新世代が次期長官として期待をしているのが現在はイスラエルの獄中にいるマルワン・バルグ−ティ(45歳)氏である。バルグ−ティ氏自身も出馬に意欲的と言われている。故アラファト長官やアッバス新PLO議長等が、西岸やガザ地区とはかけ離れた外国で抵抗運動を展開しオスロ合意以降戻ってきたことからチュニジア帰り又はチュニジア組と名付けられているのに対して、バルグーティ氏等の地元に残って運動を展開して来た人達は残留組と呼ばれている。バルグーティ氏は早くから残留組のアラファト後継者の本命と見なされて来たが、残留組は故アラファト長官を取り巻くチュニジア組による権力の独占や彼等の腐敗振りを平素から快く思っていない。
1959(昭和34)年、西岸のコウバル村に生まれ、ビル・ゼイト大学(政治学専攻)在学中から政治活動を始めたマルワン・バルグーティ氏は、1981年から1987 年までイスラエルに投獄された。その間にヘブライ語を修得している。釈放後も第一次インティファーダに参加したことからイスラエルによってヨルダンに追放された。オスロ合意後の1994年パレスチナに戻り故アラファト長官が率いたファタハの西岸の指導者として頭角を現した。しかし、1996年にパレスチナ立法評議員に選出されると、アラファト長官の治安部隊による人権抑圧及び同政府高官の汚職を問題にしたキャンペーンを展開している。同氏がパレスチナ社会での信頼感を高めたのは、こうしたパレスチナ浄化運動を行ったことやイスラエルの唱えた「和平と土地の交換」の考え方に疑問を呈したことからである。2000年に第二次インティファーダが始まって以降はより戦闘的となり、ファタハの青年組織タンジームを率いて中心役を担うようになっている。但し、イスラエル国内での文民を対象としたテロ活動には異義を唱えている。現在ではアル・アクサ殉教旅団の戦闘的な指導者の一人と見られており、パレスチナ社会では元々故アラファト長官に次いで人気を有していた。2002年4月にイスラエル政府によって殺人罪の疑いで逮捕され、6月には5回の終身刑を言い渡されイスラエルの刑務所に服しているが、刑務所内から指示を出していると言われる。尚、イスラエル左派とは一定のつながりを持っている。
バルグ−ティ氏であればイスラム過激派を押さえてパレスチナ社会をまとめられるのではとの見方が高まると共に、イスラエル政府が同氏を釈放するのではないかとの期待も出て来ている。しかし、こうした期待にも関わらずイスラエルのシャローム外相は2004年11月11日、「バルグ−ティ氏は残りの生涯を獄中で過ごすことになる。理由は、同氏が殺人者で無実のイスラエル国民を多く殺害しているからだ」と述べ否定している。但し、バルグ−ティ氏は自身が獄中にあることから、長官選挙には副長官候補と一緒に立候補し、日々の業務は副長官が行う案を検討中と言われている。ジェームズ・ベーカー元米国務長官は11月12日、CNNとのインタビューで「パレスチナ人がイスラム原理主義組織ハマス等の強硬派に対抗するには新世代と旧世代が連合する必要がある」「イスラエルがバルグ−ティ氏を釈放するとすれば、同氏がパレスチナ自治政府の権力の移行に参画できるので、正しい方向への前向きな措置である」と語り、イスラエル政府が政治的判断によってバルグ−ティ氏を釈放することに期待を滲ませている。
こうしたなかガザ市の故アラファト自治政府官の弔問会場では11月14日、アッバスPLO新議長の到着に合わせたように武装勢力による発砲事件が発生し治安要員2人が死亡している。またハマスのアブズフリ報道官は同日記者団に「パレスチナ自治政府は長官選出の選挙と同時にパレスチナ評議会選挙も行うべきである」と語り、同議会選挙での議席の獲得を足場として政治参加を実現し、パレスチナ社会での影響力の拡大を図って行く戦略をかい間見せている。
(エネルギー・環境室長/主任研究員 畑中美樹<はたなか・よしき>)
http://www.idcj.or.jp/1DS/11ee_josei041116_2.htm