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11月14日 ◎原子力潜水艦の領海侵犯 ◎アラファト議長の葬儀出席者にみる日本外交 ◎ミサイル防衛を決める前に科学的根拠が示されるべきだ ◎あまりにも悲しすぎる
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□★□ 天木直人11月14日 メディア裏読み □
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◎原子力潜水艦の領海侵犯
◎アラファト議長の葬儀出席者にみる日本外交
◎ミサイル防衛を決める前に科学的根拠が示されるべきだ
◎あまりにも悲しすぎる
◇◆ 原子力潜水艦の領海侵犯 ◆◇
大騒ぎになった中国海軍の原子力潜水艦による領海侵犯事件について、一言言っておきたい。それは露呈されたわが国の防衛情報能力の不備や、わが国政府、国民の国防意識の欠如をめぐる議論ではない。中国に毅然とした態度で臨むべきであるという正論でもない。それらは専門家が既に語りつくしている。
私が指摘したいのはそれらの議論以前の問題としての、小泉外交の本末転倒ぶりである。国民から見えないところで行われている低次元の情報工作である。
13日の産経新聞が報じている経緯は興味深い。第一報は米軍からもたらされた。すなわち既に8日には米軍から海上自衛隊に「中国海軍の原潜が日本近海の太平洋にいる」という通報があった。それを受けて海自はP3C哨戒機、護衛艦を出動させP3Cが潜水艦を確認し追跡が始まった。
しかし防衛庁が「国籍不明の潜水艦が潜航して領海を侵犯した」と発表したのは10日朝である。しかも小泉首相は11日の夜の時点でも「あまりはっきり言わないほうがいい場合もある」と煮え切らない態度を見せた。細田官房長官も「(国籍特定までに)まだかなりの時間を要する」と事件をうやむやにする可能性を強くにじませた。
当然ながら与党内から不満が噴出。12日の自民党国防関係合同会議で「首相官邸は日中首脳会談の実現を優先させ中国に配慮した(筆者註:11月下旬のチリで開かれるAPEC首脳会議の際に何とかして日中首脳会談を実現しようと必死になっている時に、いたずらに中国を刺激して首脳会談が実現しなければいよいよ困る事になるとう意味)」といった批判が出る。
外務省幹部は「(そんなことは)まったくない」と釈明した。その一方で別の外務省幹部は「あとは政治的にいつ、決断するかだ」と述べている(12日読売新聞)。
ついに細田官房長は12日夕の記者会見で「皆様の怒りが爆発しているようだ」と述べ、与党や世論の批判を考慮したうえで中国へ抗議したことを認めた。
なぜこのような迷走がおこるのか。小泉首相は靖国神社参拝にこだわりこれに中国が反発した。もし小泉首相が信念をもって靖国神社参拝が正しいと思うならば中国が文句を言っても毅然と信念を貫くべきであろう。しかし日中首脳会談にも応じてもらいたいとひ弱になってしまう。その負い目があるために、本来は強く抗議すべき領空侵犯という事実を前にして、まともな抗議をしないで切り抜けようとする小泉首相。
靖国神社参拝に関する強硬発言を意固地になって繰り返して中国を刺激し、他方で中国の機嫌を損ねる事を恐れてやるべき抗議も出来ないでいる小泉首相。その実態を隠そうと情報工作に迷走する側近たち。まさしく本末転倒外交である。
◇◆ アラファト議長の葬儀出席者にみる日本外交 ◆◇
アラファト議長の葬儀にどういう人物を出席させるかは、アラファト議長をどう評価していたかを内外に示す重要な外交である。だからこそ各紙もその列席者を紹介しコメントまでしている。
アラブ諸国はこぞって元首、首相、王族を派遣している。本音のところではPLOやアラファトを快く思っていないアラブの首脳も多いのであるが、やはりパレスチナ民族の解放の象徴であったアラファト議長に敬意を表することで「アラブの大義」を掲げざるを得ないのだ。
これと対照的なのは米国とイスラエルである。米国の出席者であるバーンズ国務次官補は、他国の出席者に比べ格段に冷たい対応である。「アラファト議長とは交渉せず」とのブッシュ大統領の姿勢が最後まで貫かれたといえる。イスラエルにいたってはアラファト議長を「殺人者」呼ばわりしいつでも暗殺できると公言していた。葬儀に誰も派遣しなかったのは当然である。
欧州を始めその他の多くの国は副大統領や外相、閣僚を派遣した。ストロー英外相、フィッシー独外相、バルニエ仏外相などはこぞって出席し今後の中東和平の先行きについて弔問外交を行ったに違いない。
そんな中で日本の出席者が現地の槇田駐エジプト大使であったことを新聞で見て驚いた。たとえば12日の日経新聞では政府特使として川口補佐官を派遣することを決めたと報道している。彼女は外相時代の昨年4月パレスチナを訪れアラファト議長と会っている。ところが13日の朝日新聞によれば葬儀には槇田大使が出席、川口補佐官はラマラでの弔問の儀式に出席したとなっている。これはどういうことであろうか。
日本政府は米国、イスラエルと示し合わせてアラファト議長に否定的なメッセージを送ろうとしたのであろうか。そうではないはずだ。少なくとも日本はイスラエルとパレスチナの双方に中立的な立場から中東和平にそれなりの貢献をしてきたはずだ。その過程でアラファト議長を日本に招待し、また多くの人道援助をパレスチナに与えてきたはずだ。いくら日本が米国に気兼ねをするからといっても要人を葬儀に出席させることさえも躊躇したとは思えない。川口補佐官が消極的であったのか。外務省が川口補佐官を嫌ったのか。そんなことはないだろう。川口補佐官はアラファト議長と最後に会談した日本政府高官である。それとも拉致問題やイラク問題さらには米軍再編問題で保身的な仕事に疲れきった外務官僚に単に知恵が回らなかったということか。
それにしても残念だ。日本が真剣に中東外交に取り組んで来たならばアラファトの死がどれほど大きな意味を持つかわかるはずだ。この歴史的行事に要人を派遣することこそアラブ諸国に日本の中東外交を示す絶好の機会であったはずだ。出席にふさわしい人物は他にも日本には多くいたはずだ。
槙田大使は中国語の専門家としてアジア外交を専門にやってきた外務官僚だ。拉致問題などで失敗して中国大使になり損ねたからといっておよそ関係のないエジプト大使へ失意の下に赴任していった人物だ。こんな人事を平気で行う外務省が「適材適所の人事」を行っているといえるのか。
アラファト議長の葬儀という中東政治の一つの歴史的瞬間に、それにふさわしい人選を行えなかった今の外務省に中東外交を語る資格はない。
◇◆ ミサイル防衛を決める前に科学的根拠が示されるべきだ ◆◇
憲法を守ることを建前としている憲政記念館において、11日、自民、民主両党の国防族議員と日米の軍需企業が集まって「日米安全保障戦略会議」が開かれたという(13日付しんぶん赤旗)。会合では、集団的自衛権の行使容認や憲法改正が主張され、米国の軍需産業が日本への売り込みに躍起になっている「ミサイル防衛」装備などの展示会も開かれたらしい。
それにしても新防衛計画のなかで当然のように語られている迎撃ミサイルについてはその必要性について十分な科学的検討がなされているのであろうか。この点について大きな疑義を呈する論評が、14日付毎日新聞に掲載されていた。米本昌平・科学技術文明研究所長は「時代の風」という論評の中でつぎのように指摘している、
「・・・冷戦時代には核兵器を搭載して飛来する弾道ミサイルに対抗する手段はなかった。文字通り、恐怖の均衡である。これに対して、敵のミサイルを大気圏外で撃ち落そうとするのが、レーガン大統領が提唱したSDI(戦略防衛構想)である。・・・しかしSDIは議会技術評価局や会計監査局の報告書でその実用性が疑われ、冷戦の終焉とともに撤回されてしまった。クリントン政権は、湾岸戦争でも用いられた戦域ミサイル防衛(TMD)と、長距離弾道ミサイルから本土を守る国家ミサイル防衛(NMD)とを区別し、2000年秋に国家ミサイル防衛計画を軸としたミサイル防衛計画を決定した。
その後を継いだブッシュ大統領はアメリカ本土、海外駐留軍、同盟国を北朝鮮(やテロ)などのミサイル攻撃から守るという理由であらたなミサイル防衛の配備を最終決定し、04年秋から迎撃ミサイルがアラスカなどに配備される予定である。しかし例えば「憂慮する科学者同盟」に属するMITの研究者らは軍当局の主張は根拠のない楽観論であり配備を凍結すべきだと指摘した。・・・
日本は04年度の防衛白書において『・・・米国における迎撃試験、各種性能試験の結果、わが国独自のシミュレーションによって、技術的実現可能性は高いと判断した』としている。仮にアメリカとの同盟関係で、日本がミサイル防衛導入を採用しないという選択肢はなかったにしても、総額1兆円にのぼる科学技術体系の確立である。少なくとも日本のアカデミズムはその技術的評価を行うべきであろう。・・・」
この論評を読んで私は気がついた。この間のBSEの牛肉問題のように、科学的に安全性が確認されていない部分があったとしても見切り発車をして政策が決定されていくのではないのか。おそらく年末にも閣議決定されるといわれている迎撃ミサイル装備の導入にしても、科学的にそれがミサイル防衛に効果的に役立つということが十分に確認されていないうちに、莫大な経費の支出をともなう長期計画が採用されてしまうのかと。我々国民はいつも政府、官僚に押し切られてしまうのである。
◇◆ あまりにも悲しすぎる ◆◇
12日付の東京新聞「ニュースの追跡」を読むのがつらかった。おそらくその記者も同じつらさを読者に共有してもらいたいと思って書いたに違いない。
その記事はイラクへ派遣されているミクロネシア連邦出身の23歳の女性兵イザベル・ヘルミさんへのインタビュー記事である。赤道直下にあるミクロネシア連邦の小さな島ポンペイ島。そこで6人兄弟姉妹の次女として生まれた彼女は米陸軍第一軍団の海外派遣部隊に所属している。米国とミクロネシア連邦との協定によってミクロネシアの市民は米軍に入隊できるのだ。特別休暇でイラク戦線を離れ7日に一時帰国している時に、東京新聞の蒲敏哉記者が現地でインタビューした記事だ。可愛い笑顔の女性兵士だ。23日には再びイラクに向かう。
なぜ米軍に入隊したかと尋ねた記者に「単純に新しい経験がしたかった。軍隊に入ることは最も挑戦的なことだと、高校の卒業前に入隊試験を受けた」と話す。その表情は明るい。
「兄も米海兵隊で昨年6月イラク行って今は米ジョージア州にもどったところ。親はすいぶん反対したが、兄もいたから自分としては抵抗感はなかった」
イラクでの活動について尋ねると、規定で口外できないためか、途端に厳しい表情で答えたという、
「イラクのどこに派遣されていたか、それについてどんな感想を持っているかを話すことはできない」
ファルージャの戦闘に話が及ぶと、
「今、集中的に市街戦を展開しているのは米海兵隊だけ。実は、陸軍は徐々にイラクから撤退している。国民はブッシュ氏が勝ったことで戦争は長引くと思っているかもしれないが、全体としては縮小傾向にある。自分もあと三ヶ月の駐留といわれている。・・・」と米軍の今後のイラク戦争での展開を打ち明けた。
当初あるとされた大量破壊兵器はその後、米政府もその存在を否定した。兵士は戦争の大義をどう感じているのかとズバリその記者は聞いた。その答えは悲しい。
「そういうことは考えないようにしている。怖いかということも」
あどけなさの残る若い女の子が言ったのだ。
将来の夢を尋ねると微笑みながらこう話したという。
「ずっと米陸軍に努めたい。そして将来は訓練教官になることね」
この記事を読みながら、ファルージャの掃討作戦を映し出していたテレビの画面で機関銃を撃ち続けていた若い兵士の呟きを思い出した
「アドレナリンが体中にみなぎっていると感じる。なんという楽しさだ」
攻撃されているイラク人の側はまったく出てこない報道である。
http://homepage3.nifty.com/amaki/pages/ns.htm