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社説:
大量破壊兵器報告 率直な反省があっていい
「差し迫った脅威」とは何だったのか−−。米国のイラク調査団は6日、米議会に最終報告書を提出し、旧フセイン政権による大量破壊兵器の備蓄を発見できず、具体的な再開発計画も確認できなかったと結論付けた。戦争直前の最後通告で、「イラク政権が恐ろしい兵器を保持し、隠しているのは疑いがない」と開戦の正当性を訴えたブッシュ大統領の立場は、米国自身の調査で大きく揺らいだことになる。
今後解明すべき問題は、米政府が結果的に間違ったのか、それともイラクの脅威を意図的にあおる情報操作が存在したのか、という点だろう。米国では来月の大統領選を控えて民主党がイラク戦争批判を強め、米マスコミの中にもイラク戦争前後の報道を反省し再検証する動きが広がっている。
フセイン独裁政権を倒したことに意義を見いだす意見もある。報告書は確かに、イラクが経済制裁解除後に大量破壊兵器開発を再開する意図を持っていた可能性にも言及した。だが、国際社会が厳しく問われたのは、戦争前のイラクに「差し迫った脅威」が存在したかどうか、である。米政府がこの問題を離れ、「独裁政権の打倒」などを誇って戦争を正当化する論法に終始すれば、米国民の心も離れるだろう。フセイン政権崩壊後もイラクの騒乱は続き、民間人を巻き込んだ流血に出口は見えない。ブッシュ政権が言うように、「世界がより安全になった」とは言い切れないのだ。
米英が国連査察を打ち切る形でイラク攻撃を始めたことも想起すべきである。開戦直前、国際原子力機関(IAEA)のエルバラダイ事務局長は、イラクの核開発疑惑に懐疑的な見方を示した。国連監視検証査察委員会(UNMOVIC)のブリクス委員長(当時)も査察継続を訴えていた。それから1年半余り。結局、米国の調査団もIAEAなどの見解に歩み寄ったのが実情だとすれば、なぜ最初から米英は査察に時間を与えなかったか。戦争によって、おそらく何万もの犠牲者が出たことを思えば、無念と言うしかない。
強い疑問は、日本の対応にも向けられる。今回のイラク報告書について、細田博之官房長官は、日本を含む関係国の「大きな責任論にはならない」との見解を示した。しかし、小泉純一郎首相は「(フセイン元大統領が)見つかっていないから、存在していなかったと言えるか」などと述べ、大量破壊兵器はいずれ発見されるとの態度だった。あると思った兵器がなかったのに、なぜ「責任論にはならない」のだろう。小泉首相は、イラク戦争を支持した理由を改めて説明する必要があるはずだ。
ブッシュ大統領の説明も聞きたい。大量破壊兵器や治安維持の問題も含めて、イラク戦争には数々の見込み違いがあったはずだ。米国を取り巻く空気が、これほど冷え込んだ時代があっただろうか。単独行動主義への率直な反省なしには、冷えた空気を暖めることはできず、「テロとの戦争」を立て直すこともできない。
毎日新聞 2004年10月8日 2時37分
http://www.mainichi-msn.co.jp/column/shasetsu/news/20041008k0000m070158000c.html