現在地 HOME > 掲示板 > 政治・選挙7 > 593.html ★阿修羅♪ |
|
Tweet |
朝日新聞 2005/01/14
■《天声人語》
「私の趣味は○○」の、○○のところに入る言葉は、人によって千差万別で、数限りなくある。しかし、そこに自分の属する会社や役所、団体の名前を入れている人は、そう多くはないだろう。まして、それを公言する人は、ごくまれではないか。
そのまれなことを記者会見でしてみせたのが、NHKの海老沢勝二会長だ。「私は『趣味はNHK』と言っているほど、NHKを更に発展させなければならない立場……」。NHKへの思い入れは十分過ぎるほど分かるが、趣味としてのNHKとは、何を指すのだろう。あの巨大な組織か、それとも番組や報道の内容か、あるいは会長職なのか、釈然としなかった。
会長は、一連の不祥事などを受けて辞意を示唆したが、更に番組内容の改変をめぐって、内部告発がなされていたことが分かった。4年前、旧日本軍の従軍慰安婦問題を扱った番組の放送前に、自民党の有力政治家がNHK幹部と面談した。その後、番組内容が大幅に改変されたという。
NHKの組織図を見る。組織トップの会長の更に上には経営委員会がある。しかし、どこにも、政治家が番組内容に逐一口を出して良いような仕組みはない。番組内容を決めるのは、あくまでもNHK自身の責務であり、使命だろう。
告発したチーフプロデューサーは記者会見し、顔と名前を明かして述べた。改変について「会長はすべて了承していた……会長あてに作成された報告書も存在している」
会長が答える番だ。問題の大きさと深さは、とうに趣味の範囲を超えてしまっている。
http://www.asahi.com/paper/column20050114.html
読売新聞
1月15日付・読売社説(2)
[NHK番組問題]「不可解な『制作現場の自由』論」
公正な放送のために、NHKの上層部が番組の内容を事前にチェックするのは、当然のことではないか。
四年前、国内外の民間団体主催の「女性国際戦犯法廷」を題材に、いわゆる従軍慰安婦問題を取り上げたNHKのチーフ・プロデューサーが記者会見し、放送前日から当日にかけて、放送総局長の指示で、この番組の内容が一部変更されたのは不本意だと訴えた。
日本国と昭和天皇に責任があるとした部分などがカットされたほか、「法廷」に批判的な学者のインタビューが追加されたという。
安倍晋三、中川昭一両代議士がNHK幹部を呼び出し、放送中止を求めたために番組改変を余儀なくされたとし、「放送番組は、法律に定める権限に基く場合でなければ、何人からも干渉され、又は規律されることがない」とする放送法三条の規定に違反する不正行為であると主張した。
NHKは、放送直前まで内容の検討を続けたが両氏との面会によって番組の内容を変更したという事実はない、と反論している。
当時、官房副長官だった安倍氏は、「NHKから進んで説明に来たのであって、呼びつけた事実はない」と語っている。中川氏も「NHK幹部が来たのは、番組放送終了後」としている。ただし、全体の事実関係には、一部に、依然、不明な点がある。
放送法三条はまた、放送事業者に対し「報道は事実をまげないですること」、「意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること」なども求めている。
放送局の編集責任者は、現場が制作する番組の内容がこれに反する場合、政治家に指摘されるまでもなく、是正しなければならない。
「女性国際戦犯法廷」では、昭和天皇が「強姦(ごうかん)」の罪などで起訴され、有罪が言い渡された。
このような性格の「法廷」の趣旨に沿った番組が、「制作現場の自由」としてもしそのまま放送されたとすれば、NHKの上層部はあまりに無責任、ということになる。
そもそも従軍慰安婦問題は、戦時勤労動員の女子挺身(ていしん)隊を「慰安婦狩り」だったとして、歴史を偽造するような一部のマスコミや市民グループが偽情報を振りまいたことから、国際社会の誤解を招いた経緯がある。
偏向しないバランスのとれた報道が必要だ。それが、NHKの責務である。
(2005/1/15/01:40 読売新聞 無断転載禁止)
http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20050114ig91.htm
日経新聞 2005/01/14
社説2 公共放送の独立性を貫け(1/14)
NHKが自民党の政治家の指摘を受け、放送内容を改変した、と当時の制作責任者が記者会見で明らかにした。番組制作費をめぐる不祥事の渦中での内部告発であり、事実なら公共放送の信頼性をさらに傷つけたといえる。受信料で成り立つNHKは国会の予算承認が必要だが、国会に従属しているわけではない。報道機関としての独立性を貫かなければ、公共放送の使命は全うできない。
問題の番組は2001年1月に教育テレビで放送された「戦争をどう裁くか」シリーズの2回目。旧日本軍の従軍慰安婦問題を扱った内容で、内閣官房副長官だった安倍晋三幹事長代理が放送前にNHKの幹部と面会し、偏った内容だと注文をつけたとされる。NHKは元慰安婦の証言などをカットし、短縮して流したという。
同番組制作責任者は(1)NHKは昨年9月に「コンプライアンス(法令順守)通報制度」を設けたので昨年末、改変について告発したが、通報から1カ月以上たった今も具体的な調査が行われていない(2)改変は海老沢勝二会長ら上層部も当時承知していた――としている。
NHKは公共放送である一方、独立した報道機関である。報道の自由は憲法で保障されており、放送法でも法律に定める権限に基づく場合でなければ、誰からも番組に干渉されないことになっている。政治家が事前に内容を知り、政治的圧力を加えていたとすれば、憲法で禁じる検閲に通じる行為だといえる。
海外でも政治家と報道機関との確執は度々問題となっている。英国でもイラク戦争報道を巡り、公共放送のBBCがブレア首相と対立したが、政治的介入をはねつけてきた。特に公共放送は中立公正を求められるが、内容における中立性はもちろんのこと、報道姿勢における中立性や独立性も極めて重要だ。
NHKは国民の信頼を回復しようと経営委員会の改革など組織の立て直しを進めている。今回の問題についても、改変にいたる経緯を明らかにし、慰安婦を巡る当初の制作内容が妥当だったかどうかも含めて、報道姿勢を改めて検証し、結果を国民の前に示すことが公共放送機関としての信頼を回復する道である。
http://www.nikkei.co.jp/news/shasetsu/20050113MS3M1300R13012005.html
東京新聞 2005/01/14朝刊 筆洗
いくら気に入らないからといって、国会議員が憲法二一条の定め…
いくら気に入らないからといって、国会議員が憲法二一条の定める「表現の自由、検閲の禁止」規定や放送法三条の「放送番組編集の自由」を公然と犯して反省がないとすれば困ったものだ。それも与党のホープ、次期総裁候補が▼旧日本軍の慰安婦問題を裁く民衆法廷を扱った二〇〇一年一月のNHK特集番組で、安倍晋三・自民党幹事長代理と中川昭一・経済産業相が、事前に内容の変更を申し入れ、改編されていたという。安倍氏と中川氏は指摘の事実はないとする▼当時の番組制作責任者が十三日、異例の告発会見を開き説明した。安倍、中川氏のような憲法に触れる検閲まがいの放送内容への政治介入が、海老沢体制下のNHKでは恒常化していたというから驚く▼この問題では番組に協力した市民団体が「制作に多大な協力をしたのに、趣旨と異なる番組を放送した」としてNHKに損害賠償を求める訴えを起こしており、政治家の関与はなかったとする局幹部の偽証問題にも発展しかねない▼それ以上に、安倍氏や中川氏が放送前に内容をチェックし変更を申し入れながら、反省がないとすればその方が問題だ。安倍氏は教科書記述を調べる「日本の前途と歴史教育を考える若手議員の会」の元事務局長で、中川氏は当時、代表だった▼報道各社に送ったファクスの声明で、安倍氏は「告発している人物と朝日新聞とその背景にある体制の薄汚い意図を感じる。今までも北朝鮮問題への取り組みをはじめとし、誹謗(ひぼう)中傷にあってきたが、わたしは負けない」と強腰だった。
http://www.tokyo-np.co.jp/00/hissen/20050114/col_____hissen__000.shtml