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11月30日 ◆ 対中強硬姿勢の愚 ◆ 二つの世論調査 ◆沈黙の世代、いつ爆発? ◆何故日本政府はミャンマーの軍事政権に甘いのか ◆三位一体改革劇を論評する知事たちの名セリフ
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□★□ 天木直人 11月30日 メディア裏読み □
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天木総合政策研究所 「メディア裏読み」事務局
E-mail:n.amaki@nifty.com HP:http://www.amaki.info
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◆ 対中強硬姿勢の愚
◆ 二つの世論調査
◆沈黙の世代、いつ爆発?
◆何故日本政府はミャンマーの軍事政権に甘いのか
◆三位一体改革劇を論評する知事たちの名セリフ
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◇◆ 対中強硬姿勢の愚 ◆◇
小泉政権の下で日米同盟が急速に絶対視されつつある一方で日中関係が緊張している。その原因が小泉首相の靖国神社参拝であったのだが、その小泉首相がサンチャゴで胡錦濤国家主席と会談した直後から、「靖国神社参拝ばかりが日中関係ではない。今後は靖国神社参拝について報道関係者に話さない」と態度を急変させた。この事が中国に対する小泉首相の譲歩と受け止められ自民党タカ派議員や保守的言論者たちの対中強硬論が続出している。
私は米国かアジアかといった二者択一の態度は間違いであると考える。その意味で中国との関係を過度に重視することは、あたかも日米同盟を絶対視することと同じように不適当だと思う。
しかし政治家といわず民間人といわず対中強硬発言を繰り返す人たちの考え方には根本的な誤りがある。なかでも11月18日付けの産経新聞「正論」欄に渡部昇一上智大学名誉教授の次の発言には驚かされた。
「・・・日本が大戦争に突入したのは生存の為の自衛戦争であったのみならず、アジアの解放、諸民族の完全独立、植民地状態からの復興であり・・・」などと述べている。発言をいくら産経新聞紙上であるといっても公器ともいうべき新聞で掲載する積極的意味があるのかどうか。
先の太平洋戦争の評価についてここで議論するつもりはない。しかし少なくとも次の二点は指摘しなければならないと思う。
その一つは日本が中国を軍事力で植民地化したまぎれもない歴史的事実である。当時は世界全体が帝国主義の時代であったとか、南京大虐殺は誇張であるなどという議論をいくらしてみたところで、日本が犯した誤りが正当化されるはずはない。日本と中国の立場が逆であったと考えて見るがいい。日本は中国に対しもっと激しく戦争責任を迫ることであろう。
29日付日経新聞のコラム「核心」に、田勢康弘がこう書いている。
「中国の武大偉外務次官は黒竜江省の出身である。その武氏がまだ若い頃(会談のなかで)、筆者(田勢)も同郷だと言ったことがある。そう言ったとたん、彼の表情に一瞬緊張感が走った。メガネの奥の柔和な目が、厳しく光り、互いの親愛の情を断ち切ったように見えた。・・・筆者の父親は広東軍の兵隊だったのだ・・・」。憎悪の感情が人の心から消え去るには長い年月が必要であるに違いない。そこに気づかない限り日中関係(日韓関係も)の真の安定化は望めない。
小泉首相はかつて田勢氏にこういったという。「一般の英霊もA級戦犯も区別しない。オレはそういうことにこだわらないんだ」。問題は首相がこだわるか否かという話ではない。中国、韓国の人たちが「こだわって」大きな外交問題になっているのだ。被害者の心の痛みに思いが及ばない時、そこに本当の理解はうまれない。ましてや一国の首相が自分の思い込みに固執して外交を行う時、その結果生ずる不都合を受けるのは我々国民である。
もう一つ忘れてはならないのは国際政治の冷徹な現実である。日中の分断、アジアの離反こそ米国の戦略である。かつての黄禍論 を持ち出すまでもなく米国がアジアの結束をおそれているのはこれまでのあらゆる情報が教えている。東アジア共同体の成立を警戒し、アジアにおける円通貨圏構想を即座に潰した事を見ても、米国の本音は明らかである。日中関係が緊張している限り米国は安心できるのである。もっとも米国を喜ばせる為に敢えて中国との関係を緊張関係に置いておこうと小泉政権が考えているのであれば何をかいわんやであるが。
◇◆ 二つの世論調査 ◆◇
30日付の朝日新聞と読売新聞に興味深い世論調査の結果が出ていた。
朝日新聞が27日、28日に行った世論調査では小泉内閣の支持率が39%、不支持率が43%と不支持率が上回っている。これは10月の調査(支持率38%、不支持率43%)とほぼ同じであるが、同様の他の世論調査に比べて、小泉首相に対する不支持率のほうが支持率より高いという結果に注目すべきである。
そのほかに注目すべきは政党支持率について自民党27%(前回30%、以下同じ)、民主党17%(21%)といずれも前回10月の調査結果より下っており、逆に支持政党なしが41%へと前回の34%より大幅に増えている事である。最近の国会論戦などから政治への失望、不満が強まっているのであろう。
イラクへの自衛隊派遣については反対が62%と前回の63%からわずかながら減っている。小泉首相は派遣延長を決めているからもう仕方がないと言うことか。私が注目したのは小泉首相の靖国神社参拝の継続について賛成38%。反対39%と拮抗していることである。これの数字が小泉首相を勇気付けるのかどうか。なにしろ自分にとって都合のいいものは「世論」でありそうでないものは「衆愚」という人だから。
もう一つの世論調査は読売新聞による、人生勝ち組、負け組みの調査である。すなわち読売新聞は11月13日、14日、所得意識に関する世論調査を行いその結果を掲載した。生活水準を「上」、「中の上」、「中の中」、「中の下」、「下」の5段階に分けて自分はどの位置にあると思うかという質問に対し、調査の結果は10年前に比べ、「中の下」と「下」を合わせた数字が34%で11%増えた一方で、「上」と「中の上」をあわせた数字は14%と9%減少した。
読売新聞はこれを見て「勝ち組」と「負け組み」がより鮮明になってきたと解説するが、やはり驚くのは中流意識がここ二十数年間つねに9割以上であるという事実である。しかも自分は「中の中」と思っている人が常に50%〜54%で推移しているという事である。まさに日本は一億総中流社会なのである。この意識こそ自民党永久政権を支えてきた理由なのだ。
◇◆ 沈黙の世代、いつ爆発? ◆◇
30日付の東京新聞に比較文学者の小谷野敦氏と東京新聞の小栗康之記者の対談が載っていた。「即興政治論」と題するその対談は、何故今の若者は政治に無関心で沈黙し続けるのであろうというテーマに集中していた。私が面白いと感じたさわりの部分を紹介したい。
小栗: 良い悪いは別にして、二十、三十歳代の若い世代の政治への関心が低い。私も小谷野さんも60年代生まれで安保闘争も原体験としては持っていないし、政治に対し、とりわけ関心が強い世代ではない。それでも。今の若い世代に比べれば、政治への関心やそれなりの思いもあったような気がする。
小谷野: デモはもちろん暴動も起こらない。妙におとなしい。自由経済主義以外の体制はあり得ないと言うのが前提ですからね。かつての学生運動は、単純に言えば社会主義への革命を目指していた。・・・ところが物心ついた時、旧ソ連は崩壊していた世代。革命なんか誰も目指さない。だいたいマルクスなんか読まないでしょう。
小栗: 僕らの世代だってマルクスなんか読まなかった。・・・学生運動やれというんじゃないが、政治が怒りとか反発の対象にさえなっていない。投票にもいかないし、政治は眼中にない。2000年の総選挙で、当時の森善朗首相が「投票に行かないで寝ていて欲しい」と発言して騒ぎになったが、本当に寝ているんじゃないか。
小谷野: 政治によって、自分の生活や社会が変わると考えていないんだろう。・・・とりあえず自民党に任せておいていいんじゃないか、今のままでも飢え死にすることはないだろうと。
小栗: 反面、世の中に対する関心が薄いとは思えない。実際、ボランテア活動なんかには積極的な人間もいる世代だ。
小谷野: ただ、あれは政治意識とか何とかではなくて、自分探しの旅なんでしょう。・・・自分がどうするのか、政治的というより宗教的だ。そして読むのは純愛小説。
小栗: それが悪いとは思わないが、もうちょっと日本の政治を見張っておいたほうがいいんじゃないか。気がついたら徴兵制が導入されていたなんて。・・・さすがに徴兵制となれば怒るんだろうが。
小谷野: それでも怒らないんじゃないか。・・・「自分は特殊な政治的意見は持っていません」、「目立とうとは思いません」。そんな感じだ。・・・軋轢を避けるために、自分の意見を言わなくなる。怒りを抑え込んで、地道に生きようというふうになる。
小栗: インターネットの掲示板への書き込んだ内容なんか見ると、若い世代と思われる人間が結構、過激な政治的発言を出している。
小谷野: 匿名だからでしょう。
小栗: 政府・自民党が聞いたらうれしくなるような沈黙の世代だ。
小谷野: 怒りを抑え込んだ沈黙は不気味でもある。こうした沈黙が続くのか、何かをきっかけに吹き出すのか。
政治に無関心であってもいい。そもそも政治なんて我々の日常生活にはなくてもいいものであると思う。毎日政治を考えているのはそれで飯を食っている一部の人間ではないのか。問題はそのような政治家やそれに相互依存する官僚たちが国家権力をほしいままにしていることだ。我々の税金を勝手に使い放題していることだ。しかも彼らがこの国の運営を誤っても責任を取らされることがない。このような現状を無関心で沈黙することは馬鹿げている。だから、つまらない政治にも関心を持って権力者の不正を監視して行かなければならないのだ。もし政治家が権限を濫用することなく我々の生活に干渉もしてこなければ政治なんか放っておけばよい。「お前ら、勝手にやってろ」と言って馬鹿な小泉首相の国会答弁なんか無視すればよい。しかし現実は彼らが決める政策で我々の生活が大きく影響を受ける。安全さえも危うくされそうになりつつある。だから政治から目をそらさずに関心を持たなければ損をするのだ。彼らに甘い汁を吸わせ続ける事になるのだ。若者はこう考えなければならないのだ。
◇◆ 何故日本政府はミャンマーの軍事政権に甘いのか ◆◇
ラオスで開かれていたアセアン首脳会議に出席した小泉首相は29日夜ミヤンマーのソー・ウィン首相と初めて会談したがそこで小泉首相は「民主化の努力を是非進めていただきたい」という通り一遍の発言にとどめ、自宅軟禁され続けている民主化運動指導者のアウン・サン・スー・チーさんの釈放問題に一切触れる事はなかった。
この事について30日付の東京新聞は「外交上の失点」になるのではないかと要旨次のような疑問を呈している。
「・・・小泉首相がアウン・サン・スー・チーさんの釈放に触れなかったのは、スー・チーさんの自宅軟禁の一年延長を通告された直後だっただけに、外交上の失点となる可能性がある。小泉首相はソー・ウィン首相に民主化の努力を求めながら、その象徴的存在であるスー・チーさんの名前を何故出さなかったのか。会談に同席した外務省関係者は『次に会談するフィリピン大統領が待っているとのメモが入り時間がなくなった』、『自宅軟禁はソー・ウィン首相との会談が終わった直後に聞いたので小泉首相に伝える機会がなかった』という趣旨の釈明をした。しかし小泉首相は首脳会談の冒頭で『ミャンマーではソバは箸で食べるのか』などと雑談を交わしていた。のんき過ぎるのではないか・・・」
私はこの記事を読んで失笑した。そして外務省の仕事の質の低さに改めて絶望的になった。アウン・サン・スー・チーさんの自宅軟禁延長の動きを事前に全くつかめなかった事自体お粗末であるが、そんなことよりも日本政府はアウン・サン・スー・チーさんの解放に冷淡なのだ。もし解放を真剣に願っているのであれば、首脳会談で問題提起をし、自宅軟禁の早期解除に言及していたであろう。そしてもし言及していれば軟禁延長についても何らかの形で議題に上ったであろう。
不思議な事に外務省はアウン・サン・スウー・チーさんの解放に関心が低い。軍事政権に好意的である。歴代の日本の在ミャンマー大使の中にはスー・チーさんは英国人と結婚して一旦は国を離れた人物だからミャンマーの民主化運動を訴える資格はないなどとミャンマーの軍事政権と同じ発言をする者もいるほどである。
小泉首相にとってはミャンマーのことなど関心はない。関心のない問題については小泉首相は官僚の書いた発言要領を何の疑問もなくそのまましゃべる。その外務省がスー・チーさんの事に関心がないのであるから、そもそも初めから首脳会談で言及される可能性はなかったのだ。
それにしても首脳会談の冒頭の発言が「そばを食べるのに箸を使うのか」などというのはあまりにも悲しすぎる。小泉首相の発言はいつもこんな調子だ。そしてそれを許すのは外務省が中味のある発言要領を作っていないということの証左でもある。今の外務省の幹部はイラクと拉致と米軍再編でアップアップしている。そんな時こそ担当課長が自分の担当分野の仕事に専念できるのにその担当課長が問題意識を持っていないということなのだ。
◇◆ 三位一体改革劇を論評する知事たちの名セリフ ◆◇
大騒ぎをして終わった小泉首相の三位一体改革の内容を全国知事会会長の梶原岐阜県知事が60点と評価した。その点数が合格点なのか落第点なのかは不明であるが、その後の論評を見ると殆どが骨抜き改革であると断じている。今度の改革案をまじめに批評する事が馬鹿げてくる中で、知事たちの洒落た評価に救いを見る思いだ。いずれも30日の朝日新聞からの引用である。
「三位一体という演目の劇に我々も舞台に出た。ずっこけるかと思ったらまとまったセリフが言えた。しかし主役は小泉さんなのに、出番がなくて良かったなどと言っている変な劇」(浅野史郎宮城県知事)。
「今度の事で政府と言うものがいかにバラバラか国民の前に明らかになった。トップの言う事をひっくり返そうと役人が動き回る。陸軍が勝手なことをして日本を滅ぼした戦前とそっくりだ。政府のありかたを変えなくちゃいけない。政府を替えなくちゃいけない」(片山善博鳥取県知事)。
「公共事業で、建設国債を財源にした事業を税源移譲の対象にしないのはおかしい。教育や社会保障より、地方の裁量の余地が大きい分野だから、これが税源移譲の4番バッターでした」(増田寛也岩手県知事)。
「補助金削減ではなく補助金廃止へ。ひとつの体制の中で変えるのではなく体制そのものを変えよう」(北川正恭前三重県知事)。
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