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週刊ポスト<エディトリアル>小泉・環境税は「隠れ年金保険料」だ−−「年間1500億円アップ」の計画書を入手
2004年
12月3日号
http://www.weeklypost.com/jp/041203jp/edit/edit.html
(1)朝日は社説で環境税を推進
環境省は去る11月5日、地球温暖化対策のための≪環境税≫の具体案を突然打ち出した。新税導入の表向きの目的は実に立派なものだ。地球の温暖化は異常気象を招き、各地で自然災害が相次いでいる。先進国は温暖化防止のために国ごとに二酸化炭素などの温室効果ガス(GHG)の削減を義務づける条約『京都議定書』を交わし、日本も08〜12年の平均排出量を、90年当時より6%減らすことを約束した。しかし、現状では排出量は逆に8%ほど増えているから、あと数年で約13%もの削減を迫られる。
そこで、ガソリン、灯油など石油製品に重税をかけて消費量を減らし、GHG排出を抑制しようというのが環境税である。環境省の計画では、1年後の06年1月から、ガソリンや軽油、灯油、電気・ガス料金などに新税が課せられて一斉に値上げされることになる。
大新聞がそれを後押ししている。朝日新聞は『環境税「いやだ」では済まない』という社説を掲げた。
<地球の温暖化を防ぐための京都議定書の発効が近づき、環境税の議論にも弾みがついてきた。環境税は欧州各国で導入されているが、日本ではここ数年、話題になりながらも先送りが続いてきた。今度こそ導入を真剣に考えてもらいたい>(11月2日付)
毎日新聞も社説(10月2日付)でこう書いている。
<(前略)重要なのは、実際に国内の排出量を削減することだ。そのための具体策として環境省が提案するのが温暖化対策税(環境税)の導入だ。企業の反発は根強いが、削減達成に有効な手段であれば前向きに考えたほうがいい。ただし、その際には効果的な制度設計が必要だ>
政界でも、自民党は環境部会が導入推進の旗を振っており、公明党も前向き、民主党はマニフェストで「環境税創設」を掲げている。正面から反対しているのは新税導入によって負担が増える経済界と経済産業省ぐらいなのだ。
環境省中枢幹部は連日、自民党の環境部会や環境基本問題調査会の幹部のもとを回り、増税工作を展開している。表面的な動きだけでは、どこをどう見ても環境税と年金とのつながりは出てこない。
そこにカラクリが隠されている。本誌は環境省の内部文書の中に重大なくだりがあることを発見した。環境税の使途の一つに、こうあった。
<雇用促進など企業活力の維持・向上 例 社会保険料の軽減>
軽減という言葉からは、環境税の収入で国民の年金や健康保険の保険料を引き下げるかのように思えるが、まるで違っていた。環境税の仕組みと導入の経緯を追うと、実態は≪年金増税≫だということがわかった。大新聞はそれに気付こうともしない。
http://www.weeklypost.com/jp/041203jp/edit/edit.html
(2)「税率を2倍」のマル秘計画
環境省資料『環境税の具体案』『環境税について』から新税の仕組みを見ていこう。
環境税は石油、石炭、天然ガスなどすべての化石燃料に課税される。ガソリン、軽油、プロパンガス(LPG)の税金は石油精製会社が負担し、国民にはガソリン代の値上げなどの形で回ってくる。
一方の電気代は、毎月の家庭への請求額の中に「環境税」として加算され、国民が直接支払わなければならない。税率はガソリン1リットル当たり1・5円などで、同省では1世帯当たり年間約3000円と試算している。税収は4900億円に上る。
<環境税は、温室効果ガスの排出量に応じ、工場や企業、家庭などから幅広く負担を求めることができるなど、公平性、透明性、効率性にすぐれた施策>
そう自画自賛しているが、課税方法には不可解な点が多い。製鉄会社が使う石炭、コークスと農林漁業用のA重油は免税にされており、アルミ産業などが使う電気・ガス代の課税は2〜5割引きされる。運送会社のトラック用軽油の税率も半分だ。「地球環境対策」といいながら、GHG排出量が大きな企業ほど環境税が減免され、その分、国民が税負担を負わされるのである。どこが「公平な税制」なのか。
そして核心部分が税収の使い途に隠されている。環境省案では、新税は環境対策だけに使う「目的税」ではなく、政府の予算編成次第で何にでも回せる「一般財源」となっている。
それをいいことに、文書では4900億円の使途を2つに分け、本来の目的である温暖化対策に使うのは3400億円とされている。残りの1500億円は企業活力の維持・向上という温暖化とは関係ない目的に回され、具体例として前述のように「社会保険料の軽減」と書かれている。これは何を意味しているか。
自民党環境部会の幹部が裏の狙いを明かした。
「経済界は年金改革で負担増を押しつけられたばかりで、加えて環境税を導入するといっても絶対に納得しない。税収を年金や健保の保険料軽減などに使うというのは、企業を説得するための作戦だ。現実には年金財源は保険料を値上げしてもまだ足りないのだから、企業に回す余裕はない。経済界には税制上の優遇措置を与えて取引することになる。1500億円はそっくり国の社会保障費にあてるのが最初からの筋書きだ」
政府は年金改革の際に、国の負担割合を引き上げることを約束したが、財源不足で宙に浮いている。現在、年金財源を捻出するために所得税減税の廃止や消費税率の引き上げが議論されている。環境税も、そうした年金財源づくりが真の狙いだった。
税率もすぐに上がる。
≪税収1兆円≫を目指している確かな証拠もある。中央環境審議会が昨年8月にまとめた報告には<温暖化対策税の税収は約9500億円>という金額がはっきり書かれている。厚生年金の保険料はこの10月から値上げされ、その後も毎年アップしていく。それでも足りないから1年後には≪環境税≫を導入し、税率をどんどん上げていく。これでは環境対策を騙った第2の年金保険料ではないか。
http://www.weeklypost.com/jp/041203jp/edit/edit.html
(3)与党議員団を“ヨーロッパ接待”
環境省で新税創設の先頭に立っているのが田村義雄・総合環境政策局長だ。自民党議員への説明にも自らこまめに足を運び、具体案づくりも局長直々に練ったといわれる。田村氏は財務省出身で主計官や関税局長を経て環境省に転じた人物であり、環境税導入の背後には増税で財源を増やしたい古巣の財務省との密接な連携がある。
11月12日には政府税制調査会の総会で環境税導入問題が議論され、財務省主税局長、総務省自治税務局長ら税制のプロが参加した。議事録は公表されていないものの、「取扱注意」と印字された環境省内部文書には、会議での石弘光・税調会長の発言が次のように書かれている。
<京都議定書発効が近く、2010年のターゲット(※)も迫っているので、先送りしてはいけない。環境税に係る様々な問題を早急に検討する>
総会後の記者会見で、石会長は環境税の税収を社会保障費にあてることについても踏み込んだ。
政府税調は現在の所得税減税(定率減税)を廃止する方針を固めており、環境税を国民への新たな減税に使う気などさらさらない。環境税=社会保障費というレールが敷かれようとしていることははっきりしている。
さらに環境省は驚くべき手を打っていた。自民党環境族議員をごっそり海外旅行に連れて行ったのだ。去る9月13日から5日間、自見庄三郎・自民党環境基本問題調査会長を団長とする与党視察団がノルウェー、オランダ、ドイツを訪問した。メンバーは自見氏ら自民党環境部会の幹部ら8人と公明党1人だったが、この種の視察団では異例なことに、環境省から総合環境政策局ナンバー2の審議官と同局企画法令係長が参加した。2人は環境税のプランづくりに直接かかわっている。
訪問先の3か国はいずれも90年代に環境税を導入しており、中でもドイツは税収を年金など社会保障費にあてていて、日本の環境税のモデルといわれる。
同省の目論見通り、自民党環境部会は視察を機に新税導入推進に大きく傾き、税収を社会保障にあてるという方針が固まった。ちなみに議員団の旅費は各党が負担したが、環境省の2人は公務出張扱いで、旅費はすべて税金である。
さすがに、経済界は環境税に反対の姿勢を変えない。日本経団連の椋田哲史環境・技術本部長の指摘だ。
「そもそも日本のエネルギー効率は世界でも最高レベル。そこへ環境税をかければ、企業は海外へ流出し、より効率が悪い海外生産が増える。それでは温暖化対策にも逆効果です。今回、唐突に出てきた1500億円の社会保険料の軽減にしても、説明はなく、本当に企業に還元されるかどうかもわからない」
正論だろう。では、環境省は国民無視の増税をどう説明するのか。鎌形浩史・環境経済課長にぶつけた。
――環境税をなぜ年金など社会保障に使うのか。
「社会保障というのは例としてあげているだけで、決まったわけではない」
――GHGの排出量が多い産業に税率を低くするなど矛盾ばかりだ。
「産業の国際競争力を考えて軽減措置を盛り込んだ。それでも企業の負担が税収の7割ほどになる」
――税収1兆円という内部試算がある。
「あれはGHG削減目標を環境税だけで達成する場合の試算だ。今回は他の削減策と合わせて考えている。税率アップは検討していない」
最も重大な疑問を質した。環境税導入の真の狙いは環境省と財務省合作の年金財源づくりではないのか。
「財務省に頼まれてやっているわけではない。環境税を導入しないと、京都議定書の目標達成は困難になる」
最後はそう居直った。こんな新税をゴリ押しする小泉内閣も、後押しする大新聞も、≪増税詐欺≫の共犯だ。
※日本では京都議定書の削減目標を達成するために、環境省が「地球温暖化対策推進大綱」を策定して、具体的な対策を定めている。2004年、2007年に達成状況の確認と大綱の見直しが行なわれ、2010年には削減目標を達成することを目指している。