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10月10日 ◇◆ アフガニスタンの大統領選挙に思う ◆◇ベトナムの教訓に学ばない米国 ◆◇小泉首相は何を根拠に米国のイラク攻撃が正しかったと言い続けるの
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□★□ 天木直人10月10日 メディア裏読み □
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ご愛読者の皆さまへ
今回の「メディア裏読み」は10月10日掲載予定だったものです
掲載が遅くなりましたことお詫び申し上げます
◇◆ アフガニスタンの大統領選挙に思う ◆◇
10日付の各紙はアフガニスタンの大統領選挙の投票が9日に行われたことを
報じていた。9・11事件に怒り狂った米国が、テロを匿う国は「テロとの戦い」
の標的であると世界に宣言し、アフガニスタンを攻撃したのが三年前であった。
爆撃で瓦礫と化したアフガニスタンにカルザイという亡命アフガン人を据えて
親米国家建設を強引に進めてきた米国の、政治プロセスの総仕上げがこの選挙
である。
イスラム原理主義タリバンの圧政により苦しめられてきたアフガニスタンの
国民が直接指導者を選ぶことは民主主義の勝利であると米国は宣伝する。「新た
なる日の夜明け」とパウエル長官は対テロ戦争の成果を強調する(10日付読売)。
それはあたかも来年1月に予定されているイラクの選挙の前座のごとくである。
カルザイ大統領は9日、「選挙は自由で公正に行われた。どの候補が当選しよう
が、勝者はアフガン国民だ」と語ったという。選挙結果の発表は3週間ほど後
になるらしいが、カルザイ首相は米国の支援と現職の強みを生かして当選は確
実だといわれている。しかしそれで本当にアフガニスタンは安定するのであろ
うか。
「カルザイ優勢」を報じる10日付の毎日新聞のすぐ下に「米軍が武装集団を
空爆し24人が死亡」という見出しの記事が出ていた。ロイター通信によるとア
フガニスタン大統領選挙が実施された9日の未明、米軍機が中部ウルズガン州
の旧タリバン勢力とみられる武装集団を爆撃し、少なくとも24人が死亡した。
武装集団がアフガン国軍などの車列を攻撃して銃撃戦となったため、米軍機が
支援に向かい、空爆したというのだ。
戦闘の最中に大統領選挙を行うなどということがまともな国で起こりうるこ
とだろうか。このような状態で選ばれた大統領が、米国の軍事的庇護なしにア
フガニスタンの平安を実現できるというのか。すべては欺瞞である。その欺瞞
を4ヵ月後にイラクで再現しようと米国は躍起になっている。イラクの場合の
混乱と犠牲はアフガニスタンの比ではない。
◇◆ ベトナムの教訓に学ばない米国 ◆◇
米国のイラク占領統治の最高責任者を務めたポール・ブレマー前文民行政官
が、4日、私的な会合の場でイラクに「十分な兵力を配置しなかった」事を重大
な過ちであったと発言した事が5日付のワシントンポストで報じられた。その
ブレマーは8日、ニューヨーク・タイムズに寄稿し、「私はブッシュ大統領のイ
ラク戦略と対テロ戦に関する政策を一貫して支持してきた。・・・(イラクの民主
化という)目の前にある使命達成に必要で十分な兵力が存在していると信じて
いる」と、ワシントン・ポストに報じられた発言を否定している。ブッシュ再選
後には国務長官の候補にもなっているブレマーとしてはここでブッシュ大統領
の機嫌をそこねては元も子もないと思ったのであろう。
私がここで言いたいのはそんなブレマーの言動ではない。ブレマーの発言を
報じた9日付の赤旗の記事のことである。その記事はこう書いている、「・・・ブ
レマー氏のこの発言は、イラクの安定化がうまくいかなかったことを兵力不足
のせいにする責任逃れの感がありますが、かつて米国のベトナム侵略戦争にお
いても米軍司令官がいつも口にしてきた言葉です。ウェストモーランド将軍が
南ベトナム派遣米軍の司令官をつとめた1964年から68年までに南ベトナムの
米軍は1万7千人から50万人以上に増加しました。彼は在任中、いつもベトナ
ムでの米軍兵力の不足を嘆き、ワシントンに増派要求を繰り返したのです。・・・
50万人を超える米軍が、第二次世界大戦で使用した砲爆弾の三倍を使用しても
ベトナム国民を屈服させることは出来ませんでした。・・・米国はベトナム戦争で
実現できなかったことを、イラクで実現しようとしていますが歴史の教訓に学
ばない愚行に成功の見込みはありません」
ウェストモーランド将軍、なんと懐かしい言葉であろうか。この将軍の名前
を聞かない日は無かったほどの戦闘が続いたベトナム戦争であった。そのベト
ナム戦争の最中、4人の米軍脱走兵が日本に亡命したことを日本ペンクラブ理事
長の小中陽太郎氏の秘蔵フィルム「イントレピッド号の四人」で知った。1967
年10月、横須賀に寄航中の米空母「イントレピッド」から4人の水兵がベトナ
ム戦争に反対して船を下りた。小田実らのベ平連が彼らを匿い国外に脱出させ
るまでのドキュメントである。圧巻は、まだ19歳の4人の水兵たちが一人一人
脱走の理由を記者会見で述べる場面である。
「合衆国憲法に照らしても戦争を合理化する理由は見つからない。ベトナム人
を殺す理由を見つからない。我々は二度と米国に帰れないかもしれない。家族
に会うことができないかもしれない。しかし自分たちの行動で米国が過ちに気
づいてくれることを願って脱走を決意した・・・」19歳の少年たちの言葉に涙が出
るほどの感動を覚えた。小中さんによればその後の消息はわからないというこ
とであるが、見つけ出してもう彼らの口から今の米国を論じてもらいたい。
残念ながら米国はその後もベトナム戦争を続行し、1976年統一ベトナム実現
という形で敗北した。今米国はベトナム戦争のときよりもはるかに殺傷力のあ
る非人道的な武器を使ってイラク人への攻撃を続けている。ベトナム戦争の教
訓から米国は何も学ばないかのように。
◇◆ 小泉首相は何を根拠に米国のイラク攻撃が正しかったと言い続けるの
か ◆◇
あの時点では大量破壊兵器も存在せずアルカイダとの結びつきもなかった
ことが確認された今となっては、小泉首相は何を根拠に米国のイラク攻撃が正
しいと判断したのか。この点こそ来るべき国会で徹底的に検証されなければな
らない。
小泉首相がブッシュ大統領の言っている事を受け売りしているようだ。すな
わちサダム・フセインを排除したことは正しかったとか、大量破壊兵器が存在し
ない事を自ら証明しなかったサダム・フセインが悪いとか、国連決議を無視し続
けてきた(この点についてはサダム・フセインが繰り返したように中東諸国の
中で国連決議を一番無視して来た国はイスラエルなのである。つまりイスラエ
ルは1967年の第三次中東戦争でエジプト、シリア、レバノンを軍事占領し、度
重なる国連の撤退決議にもかかわらずいまだにゴラン高原などを軍事占領し続
けている)ことが悪いなどという理由は、どう考えても武力行使を正当化でき
る根拠にはなり得ない。そのような後講釈で武力行使が正当化されるのであれ
ば、まさにかつての帝国主義の時代に逆戻りする事である。
小泉首相がイラク攻撃の根拠としてたびたび引用する決議1441号について小
泉首相に正したい。あなたはどこまでこの決議が成立した背景をご存知である
のかと。この決議がいかようにも解釈できる妥協の産物であったかということ
を。イラクが査察に関する国連の要求を完全に従わなければ「重大な結果を招
く」という言葉自体、自動的にイラク攻撃を認めるということではなく「再度
検討し、攻撃に踏み切るためにはあらためて安保理決議による承認が必要」で
あるとされていたのである。そしてその新たな決議を必死になって成立させよ
うとした米国は、結局多く非常任理事国の反対や仏の拒否権発動の動きに遭遇
して、もはやこれまでと単独攻撃に踏み切ったのである。米国自らがそのよう
な単独攻撃を正当化する理由として、「差し迫った脅威があった」としていたの
であるから、それがなかったことが確認された今となっては、どのようなすり
替えの議論を行おうとも、米国の攻撃は正当化されえないのである。
それよりもわが国の場合どういう情報に基づきイラク攻撃を正しいと判断し
たのか。「米国がどんなに無茶な事をしようとも米国を支持するしかない」とい
うきわめてお粗末な判断で、あのように深刻な結果をもたらす米国のイラク攻
撃を支持したと私は100%確信している。そしてそれを裏付けるような記事を週
刊金曜日10月8日号に見つけたので紹介したい。
2002年11月21日の衆議院安保委員会で安藤裕康外務省中東アフリカ局長は
「米CIAおよび英政府が発表した文書によると、フセイン政権が化学生物兵
器を開発し、核兵器の開発を執拗に試みているとの記載がある」「ミサイルに関
しては英政府の証拠文書がある」などと答えている。要するに日本には独自の
情報はまったくなく、米英文書に記載があるので日本もそう思うということだ
けなのであった。もしそうであればその米英の文書が間違いであったと米英が
認めているのであるから、小泉首相も少なくとも間違った文書を根拠に判断し
たわが国のお粗末さを素直に認め謝罪すべきである。
しかしそれよりも驚くのは次の事実である。すなわち週刊金曜日の記事の筆
者である川崎哲氏は、米国がイラク攻撃を始める直前の03年2月21日に、フ
ランス、ドイツ、ロシアが共同で「国連査察を更に強化し戦争を回避する」と
の覚書を発表していたことを引用し、その中身を検討して外務省にいくつかの
質問をしたという。ところが外務省の担当官は、これほど重要な覚書について、
発表されてから一週間近くもたっているのに、「実はまだその三国提案を精読し
ていないのです」と質問に答えられなかったという。
このことがすべてを物語っているのだ。つまり日本政府は、小泉首相は勿論、
外務省の誰一人として、イラクの大量破壊兵器の事実関係についても、それを
明らかにする為の国連査察についても、十分な関心を払っていなかったのであ
る。
膨大な人命を奪う侵略の口実に使われた米国のデマに、十分な関心を払わず
に世界に先駆けて追従した小泉首相の責任は、無責任というよりも犯罪的です
らある。この点こそ国会で追及してもらいたいものである。
http://homepage3.nifty.com/amaki/pages/ns.htm