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http://www.tokyo-np.co.jp/00/tokuho/20041021/mng_____tokuho__000.shtml
コクドの西武鉄道株大量保有 40年以上 なぜ分からぬまま…?
西武鉄道の株式をめぐって、コクドなどグループ会社の保有比率が虚偽記載されていた問題で、今度はインサイダー取引疑惑が浮上した。しかし、そもそもなぜ四十年以上もこんな虚偽記載がまかり通っていたのか。コクドの堤義明前会長は「知らなかった」と弁明したが、チェック機能はなぜ働かなかったのか。そんなシステムができあがった“体質”とは−。
「一人が二十七年、もう一人は十七年」。日本公認会計士協会の藤沼亜起会長は二十日、西武鉄道の決算監査を長く同じ個人会計士が手がけていたことを明らかにした。
経営のチェック機能を担うのが監査だ。このため、上場企業の場合、「九割が大手監査法人」(大手監査法人)という。これに対し、堤氏のワンマン経営で知られた西武鉄道は、決算上の連結対象が八十五社、従業員は約一万六千人を数える大企業にもかかわらず、個人事務所が決算監査を手がける、いわば少数派だ。しかも非上場企業のコクドが実質的な親会社で、堤氏がその筆頭株主としてグループ全体を統括するという構図も外からは分かりにくい。
公認会計士でもある愛知工業大学の岡崎一浩教授(会計学)が指摘する。「コクドも長期間、同じ個人会計士が決算監査を担当していた。非上場だし、『いいお客さん』だ。四月施行の改正公認会計士法では、こうした企業と会計士の癒着を防ぐため、会計士は五年(当初のみ七年)で交代するルールを導入したが、個人事務所は対象外。今後、適用対象になっても『弟子に引き継ぐ』といった抜け道がいくらでもある」
決算監査で、会計士は企業の財務諸表を見るが、株主名簿は財務諸表とは別でチェックの対象外。このため「会計士は『株主名簿が実態と合っているかどうか確認する責任はない』と開き直ることもできる」(岡崎氏)というのが現状だ。
一方、十三日の記者会見で、西武鉄道とコクド側は「約千二百人の個人名義の株式を実質的にコクドとプリンスホテルが保有していた」と説明、十八日の国土交通省の事情聴取では、西武側は「その個人名義株の配当はコクドなどに送金していた」と説明した。
経済評論家の三原淳雄氏は「西武鉄道の手法は、実質的には名義借りと言える。堤氏が、自らの所有株数と異なる虚偽記載に気づかなかったとは考えにくい」と指摘する。
西武鉄道は、名義書き換えなどの株式事務も自社で済ませ、外部の目は届かなかった。「上場した際に自社で名義書き換えをすることにした後、今に至っている」(広報担当者)と説明するが、自社で行っているのはほかに西武鉄道グループの伊豆箱根鉄道と、大和自動車交通の二社だけだ。
虚偽記載の発覚で慌てる東京証券取引所は今後、例外なく株式事務の外部委託を義務化する方針だが、再発防止には課題を残す。
前出の岡崎氏は「虚偽記載は証券取引法違反だが、単なる形式犯の扱いで罰則は軽く、違反行為に歯止めがかからない。こうした手抜きの会計ルールは国内では通用するが、日本の証券・金融市場がそもそも信用失墜してしまっており、これが国際競争力を失う最大の原因」と警鐘を鳴らす。
チェック機能の働かない証券市場を背景に、少なくとも一九六四年から四十年以上、西武鉄道の個人名義の株式をコクドが実質的に保有してきた。
そもそも大量保有に至った原因は何か。経営評論家の針木康雄氏は「買い占め防止説」を唱える。
「約四十年前、故・横井英樹氏が西武鉄道の株を買い占め始めた。保有比率は7、8%まで上昇し、危機感を持った当時の堤家の当主格だった堤氏の兄、清二氏らが数年かけて買い戻し交渉を行い、あらゆる手段を使って買い戻しを完了した。しかし、表に出せない株なので金庫の中でいわば塩漬けになった。これが今回問題になっている株だ」
横井氏とは、火災を起こしたホテルニュージャパンの社長だが、針木氏は「横井氏は西武のようなオーナー会社を狙い撃ちにして株を買い占めることで有名だった。オーナー会社ならば株の買い戻しの際、高値で引き取ってくれる可能性が高いからだ。ただ当時まだ堤氏は西武の顔ではなく、こうした経緯にはタッチしていなかったはずだ。今回のことも本質は最近まで知らなかったのではないか」と話す。
一方、取材に応じた堤氏の親族の一人は「株を社員に分散して持たせたのは、社員にストライキを起こさせないためだ」と別の見方をする。事実、西武鉄道は一度もストライキによる運休はない。「社員全体で会社を盛り上げていこうという意図で、堤氏の父康次郎氏が買わせたのだろう。知っている西武のOB数人にも毎年株主総会の通知が来ており何の不自然さもなかった」とする。
これに対し、前出の三原氏は、四十年も虚偽記載が続いてきた背景として、「市場で実際に取引される株数を少なくして高値で維持できれば、大量に西武鉄道の株式を保有するコクドの財務基盤を強くできる。利益が出そうになると沿線の不動産投資等につぎ込み、もうけを薄くして税金を払わず、結果として節税してきた」と解説する。「ところがバブル崩壊後、不動産投資等に伴う借り入れの負担の方が経営を圧迫、打ち出の小づちだった経営手法が通用しなくなった」
では、なぜ虚偽記載が発覚しないような体制ができてしまったのか。先の親族は「堤氏の学友で、いわば番頭として実務を仕切っていた戸田博之前西武鉄道社長ら側近は株の大量保有の実態を知っていたはず。しかし堤氏には報告しなかった。彼らは堤氏と外部を遮断し、祭り上げてしまった。そういう体制に安住し、信用しきってしまった堤氏も自業自得だ」と嘆く。
こうした“社内体質”の一端について、コクドの元幹部は「堤家に対する奉仕と感謝の精神。社員はそう洗脳されていた」と話す。
元幹部によれば、コクドでは社員が管理職になる際、箱根で六カ月間研修を受けていた。そこでは堤氏に対するあいさつの仕方やお辞儀の角度、「君は誰だ」と尋ねられた際の受け答えなどをマニュアルで徹底的に仕込まれたという。
「飯能市の宮沢湖に堤氏専用のヘリコプターの格納庫があり、幹部候補生が一年中詰めていた。ヘリ番と呼ばれ出世が早いなんていう話もあった。コクドでは堤家への絶対忠誠を年中テストされているような感じ。あの状態では堤氏に直言はできない」と振り返る。
十数年前、西武グループが経営の不透明さを指摘された際、「今回は反省した」という堤氏に、針木氏は「西武鉄道は公共交通機関であり、グループのコクドの経営内容などを世間に公表すべきだ」と忠告し、堤氏も「やる」と答えたという。「だが結局、公表されなかった。取り巻きが現状維持を図ったのだろう。堤氏はますます奥の院に囲われ、世間知らずになった。それがこんな事態を招いた原因ではないか」