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(回答先: 浅学を晒し恥ずかしいのですが、「流動性の罠」とは? 投稿者 オニオン 日時 2004 年 10 月 15 日 02:57:41)
オニオンさん、こんにちは。
>お伺いしたいことがあるのですが、「流動性の罠」とあっしらさんのいう利潤なき社
>会の定常状態、均衡状態とは同じ原理なのでしょうか?
>そもそも流動性の罠とは、
>何らかの理由により短期的か、長期的か、決定的かは兎も角として、社会全体での利
>潤追求が不可能となり、利潤が得られないので追加投資が図られずよって(銀行)貸
>出も伸びない、つまり借りて側の理屈によるものなのでしょうか?(これが定常状態
>の方でしたよね?)
>それとも、(信用なので資金の限界性は理論上無いとして)会計上の理由や誰かさん
>の個人的な理由などの貸し手側の理屈によるものなのでしょか?
>或いは全く違う理屈によるものなのでしょうか?
「流動性の罠」はマクロ経済学の概念で、金利が上昇すれば、手持ち通貨を債券類に変えようとする動きが高まると同時に経済主体(企業)は投資を控えるようになり、金利が下落すれば、手持ちの通貨をそのまま保持しようとする動きが高まると同時に経済主体は投資を拡大させようとするするという見方を前提に、それ以上は下がらない水準まで金利が下落すると投資は拡大しなくなるというものです。
金利が下がる条件は通貨供給量の増加とされていますから、通貨供給量を増加させても、金利が下がらず貸し出しも増加しない状況を「流動性の罠」と呼ぶと約めることができます。
日銀がゼロ金利下でベースマネーを増加させる金融緩和策を採っても、政府の赤字財政支出を除けば、日銀当座預金残高の増加にしかつながらないこの間の日本は、「流動性の罠」の典型と言えます。
しかし、金利が投資(借り入れ)を規定するという見方ではなく、利益(見込みを含む)と利払いの関係そして元本返済のためのキャッシュフロー見通しが投資(借り入れ)を規定するという見方をしていますので、「流動性の罠」の理屈(理論)をそのまま受け入れる立場ではありません。
金利を実質金利と考えると、金利が上昇すれば最終利益が減少しますからリスクも勘案して投資は拡大しないとは言えます。
しかし、実質金利を規定するインフレ率は投資(固定資本形成)に規定されるので、投資が拡大すると実質金利は下落することになります。オニオンさんが説明されているように、借り入れで投資しても利益が得られないという判断が「流動性の罠」の基本です。
“定常状態”と「流動性の罠」の関係ですが、借り入れをして投資しても利益が得られない経済状況が生み出す金融状況という意味では、“定常状態”は恒常的に「流動性の罠」にはまっていると言えます。
しかし、「流動性の罠」は、“定常状態”に固有の事象ではなく、景気変動によっても生じるもので、デフレ・スパイラルはそれを激越に生じさせると考えたほうがいいでしょう。
>また、上の記事で日本経済が「流動性の罠」に陥っている(た)との内容について疑
>問に感じたのですが、貸し渋り、貸し剥しと流動性の罠は両立するのでしょうか。少
>なくとも論理的には矛盾しているような、、、、
日本経済が「流動性の罠」的事象に陥っている主たる原因は、銀行財務の毀損に起因する「信用創造機能」不全とデフレ・スパイラルです。
銀行は不良債権=過剰債務問題の処理に追われ、リスク資産を減少させようとしていますから、貸し出しは減らさせています。
また、デフレは、経済社会全体が債務を過大な負担と判断したり債務不履行に陥らせる経済状況ですから、銀行が貸してもいいと考える借り手は債務を減少させたいと考え、借りてなんとかしたいと思っている借り手は銀行が貸したくないと考える事態をもたらします。
日本経済の実体面から言えば、「流動性の罠」というより、銀行財務問題とそれを起因とするデフレが「流動性の罠」と見えるような状況を生み出していると判断しています。
(「流動性の罠」は、借り手が最良の条件で借りられる状況でありながら借りない(投資しない)というものですから、貸し渋りや貸し剥しは矛盾するものです)