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祖先神、自然神への信仰 前17C〜前770年:殷〜西周 (今岡大介)
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投稿者 愚民党 日時 2005 年 1 月 30 日 12:31:04: ogcGl0q1DMbpk
 

前17C〜前770年:殷〜西周 (今岡大介)
祖先神、自然神への信仰
 
http://webclub.kcom.ne.jp/ma/dimaoka/doukyouF/rekisiF/innsyuu.html

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 中国最古の人間の集合体は、未だにはっきりとはわかっていない。現在では、紀元前17世紀頃興った殷王朝が中国最古の王朝であることがはっきりしているが、19世紀後半に劉鉄雲、王懿栄らによって甲骨片が発見されるまでは、殷が実在するという証拠すらなかった。

 殷の実在が証明された後に、今度は夏王朝が実在するか否かが学者たちの間で討論されている。この夏王朝は、殷と比べてもさらに伝説的な要素の強い王朝であり、実在しない伝説上の王朝だとする意見が強い。また中国の歴史や伝説を調べてみても、夏王朝末期の状態などがあまりにも殷の末期の状態と似過ぎていることが伺えたりする。

 殷王朝が周王朝にとってかわられた時には、殷には紂王という暴虐な王が美女妲己の色香に溺れて悪逆非道を行い、当時西方の一諸侯であった周の文王がこれを諌めると、紂王は文王を7年の間、監禁した。やがて文王が釈放されると、その子の武王が立って紂王を討ち、天下を平定したという。

 夏王朝の時にも、ほとんど同じような政権交代の伝承がある。その末期には桀王というやはり無道な王がいて、これが妹喜という美女に溺れて、諌めた殷の湯王を投獄して後に湯王に討たれた―――。

 疑ってくれと言わんばかりに類似している。少なくとも、どちらかの伝承が一方の伝承のコピーであろうことは容易に想像のつくところだ。しかし、だからと言って夏が実在しないと断定する理由もない。「夏」という王朝かどうかはともかくとして、殷以前にも何らかの政権が存在していた可能性は大いにあり得ることだ。

 中国の最初の人類は、北京原人などの、やはり原始人である。石器時代の中国人が、どのぐらいの時期を経て後の殷・周といった時代へつながっていくのか、その間どのような人間たちのドラマが展開されていたか―――そのことを知る術は、今のところない。

 従って、中国人の信仰の原点を調べるには、必然的に現在判明している最古の王朝(国家)である殷から見ていくことになる。

 河南省安陽県小屯で殷の都の跡、すなわち殷墟が発見された時、そこからは牛などの骨や亀の甲羅の骨などに刻まれた数多くの甲骨文字が発掘され、すでにいくらかの甲骨文字が解読されている。

 甲骨文字で刻まれているのは卜辞、つまり占いの結果である。

 当時、占いで神の意志を知ろうとする時には、まず甲骨の裏面にくぼみをほり、その周囲を火で焼いて、表面に現れる割れ目によって吉凶を占った。そして、その結果は割れ目のそばに卜辞として刻んだ。

 甲骨に刻まれた卜辞から推測された殷の時代はきわめて宗教の力が強い時代だったらしい。というより、各地でまだかなり原始的な生活をしていた人々を結集させたのが宗教だったようだ。
 
当時、占いによって神のことばを人に伝えることができた(とされている)占い師は「貞人」と呼ばれる人々で、彼らは神意と称して人々を様々に指導していった。この貞人のもとに人々が集まって部族となり、その部族の一つ一つがさらに集合して部族連合を形成する。その連合の盟主が、すなわち王であった。王もまた占い師(貞人)である。殷王家は占い師の一族であったわけだ。

 占われていた内容は、当時の人々の生活のほとんどすべてだと言ってよい。狩猟、戦争、祭祀など人々の行動は占いによって決定され、また、天候や病気などの予知を行うこともあったようだ。

 そして、当時祀られていた神々は、山や土地などの自然神、天界の神、王家や部族の首長の祖先神などであったらしい。

 その中で最高位とされる神は「帝」または「上帝」と呼ばれていて、国の政治や生産を左右したり、王の行動や行為を取り決め、また王に賞罰を下す、といった役割を果たしていたらしい。だが、なぜか祭祀の対象とされていないらしい。後代の道教でも、最高神あるいはそれに準ずる力を備えた神として「玉皇上帝」や「玄天上帝」といった神がいる。道教世界では神々に限らず仙人でも、「帝」の字がつく者がよく存在している。

 後代の道教の神々の世界は、現実世界における宮廷の機構とまことによく似ている。ようやく信仰が芽生えたこの時代においても、すでに神々の官僚組織が存在していたらしい。

 その組織の頂点あるいは中央に位置するのが、先ほどの帝や上帝である。その配下に、祖先神や、山や河などの自然神、風や雨や雷などの自然現象の神がいる。こうした自然神は、存在としては北欧神話やケルト神話などにおける精霊と非常に似ていると言えよう。もっとも、こちらの世界では精霊ほど自由な存在でもないようだが。

 また、この時代、雨乞いや疫病治癒祈願などの祭祀に際して、しばしばイケニエを屠って天への貢ぎ物としている痕跡が、殷墟の宮殿跡から発見されている。それもただの鳥獣ではなく、人間を、である。

 それに関連する事実として、殷王朝はしばしば人間狩りをやっている。狩りの標的とされたのは、主として殷の北方に居住していたチベット系の遊牧民族―――羌族である。彼らは殷に捕らわれると、奴隷として使役され、祭祀の時には神への供え物として首を斬られたりしていたようだ。

 殺されていたのは、羌族ばかりではない。

 殷の王などが死ぬと、その墓に殉死者が備えられる。彼らは羌人奴隷ではなく、殷王の側近や妻妾、あるいは配下の軍隊などである。死後も家臣として王に仕えることが期待されていたらしい。殷墟の宮殿跡の、ある前庭では、850人もの軍隊がそっくり埋められている発見例がある。それも司令官から隊長、兵卒まで戦車までつけてきちんと揃っているのである。

 現代の我々の感覚からすれば、殉死だのイケニエだのといった思想は、まったくの狂気の沙汰だと感じるのが普通であると言えよう。だが、当時の殷は、神の権威が我々の想像を絶するほど大きい神権国家であった。しかも、原始的な神々信仰以外の思想や信仰は一切存在しない社会であったから、人々の信仰心は不動のものだったと考えられる。殺されて埋められていく王の家臣たちの心理は、おそらく現代人の想像を絶するものであっただろう。もっとも、拉致されてきただけの羌人奴隷たちなどは、どうだかわからないが……。

 殷王朝をたおして天下のあるじとなった周王朝の頃にもなると、さすがにイケニエの習慣はなくなったようだ。

 中国の歴代王朝では代々、「社稷」の信仰が重んじられている。社は土地で、稷は土地からとれる穀物である。すなわち、人々が生存するための糧である。もともと殷王家を盟主とする諸部族の信仰を統合するためのシンボルのようなものであったようだ。

 殷の次の統一王朝である周は、殷を倒してから幽王の代で犬戎に逐われて洛陽に遷都するまでを西周といい、後に秦によって完全に潰されるまでを東周という。東周の時代はすでに周王家は力を失っていて、代わって着実に勢力をつけていた諸侯や楚や秦などの異民族国家がしのぎを削っていたからもっぱら春秋戦国時代と呼ばれている。ここでは、西周までの信仰を調べていこうと思う。

 殷代に発生した社稷信仰は、そのまま周に受け継がれていった。殷における祖先神信仰は、後々までかなり忠実に、それも発展を遂げながら存続していった。歴代王朝における宗廟の祭祀や、人々が祖先の墓を重んじて時には祭祀を行うことが、それにあたる。

 中国では、西洋における「神」のような信仰の対象として「天」がある。そして中国の代々の王や皇帝は、天より命を受けて地上に君臨しているものとして「天子」と称されている。これも、ブルボン朝時代のフランスなどにおける王権神授説と非常に似通っているものがある。

 殷における王がすなわち貞人、シャーマンだったのに対して、周では王は政務を専門に担当し、信仰を司るのは「巫」と呼ばれる人々となっている。とは言え、西周あたりはまだまだ、神権の存在が人々に大きな影響を与えていた時代だったようだ。

 殷までの中国を「超古代」とするならば、周代は「古代」とするべきだろう。今のところ実在が確認されている最古の王朝・殷は、奴隷制度に神権政治と、人間の集合体の典型的な原型をとっていて、次代の周王朝になると、奴隷制度に代わって封建制度がしかれ、多少現代に近付いている。しかし、西周の頃には、礼法を整えた周公旦(殷を倒した武王の弟)を別とすると、儒教はまだ存在していない。

 春秋戦国の世になり、後の中国に2000年に渡って信仰を集めてきた孔子や、「道教」の一つである道家思想の創始者である老子や荘子、そして諸子百家が現れると、再び中国は変革していく。

 
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