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J.E.ラブロック |
1969年にはまた、”アメリカによる月面着陸の成功”が報じられたりもしている。
1979年のラブロックの著作『GAIA』は、世界を席巻するベストセラーになった。
引用:GAIA仮説_J.E.ラブロック より:
GAIAが生まれた日
ラブロック > 最初は僕すら、自分自身の仮説を真剣に取り上げなかった。でも今は違う。
地球にはなにか奇妙なところがある。いや、奇妙なところがやたらとある、というのが本当だろう。
それらを総合すると宇宙の変わり者、宇宙のあらゆる法則の例外的惑星という像が浮かび上がってくる。
熱力学の法則に従えば、地球はとっくに平衡状態に達しているべきであり、地球ほど古ければ表面は高温度の塩水に覆われ、二酸化炭素が大部分を占め、沸騰点に近い温度の世界になっていて当然。とっくに生命は絶滅していてもおかしくない。
酸素と窒素の爆発性の二つの気体も、結合もせず、バランスを保っているのも奇跡的だ。
矛盾は前から見えてはいた。
余りに大きく立ちはだかり、余りに明々白々としていたため、目に入り難いものがあるが、これもそういう類のことであったらしい。
1969年まで、それには名前さえ与えられてなかった。
まったく、ものを見る能力は、空気が澄んでいるかどうかより、心が澄んでいるかどうかにかかっていると思い知らされる。
その年、J.E.ラブロックがこんな指摘をした。
「この地球の大気や海の塩分の安定は、偶然ではなく、生命が自らのために創造し維持している。」
「この地球上の微生物から植物、高等生命体に至るまで、ありとあらゆる生命が一丸となって、地球環境を保つために働いている。」
彼は、地球を一つの生きた生命体として捉え、それを”GAIA”と名付けた(実際は、ラブロックの隣人でノーベル賞作家のウィリアム・ゴールディングが提案した、「ギリシア神話の大地の女神」を意味する名称:引用者注)。
「操縦士も目的もなく永遠に太陽の内軌道を巡り続ける狂った宇宙船」という気の滅入る地球像に代わる、生物的なイメージとして地球を捉えたのだ。
(後 略)
GAIAの発見
ラブロック(当時JPL勤務:引用者注)は、NASAで行われた火星の生命探査計画に参加し、生命探査の手法を確立した。
それは、「どんな形であれ、生命体が物質やエネルギーを取り入れて排出するシステムを持つとすれば、その環境には検証可能な痕跡が残る事になる。」というものだ。
逆に、生命の存在しない惑星の場合は、大気・海・土壌などのすべてが化学的平衡状態になる。
実際の火星は化学的平衡状態であることが、ガス・クロマトグラフィーで検出されており、他の観測でも生命の存在は見られなかった。
さて、問題はこれからである。
この結論を出した後、火星のデータを地球と比較してみたのだ。
(地球は金星と火星の間にあるから、比較計算がしやすい。)
ガス | 惑星 | |||
金星 | 生命無き地球 | 火星 | 現在の地球 | |
二酸化炭素 | 98% | 98% | 95% | 0.03% |
窒素 | 1.9% | 1.9% | 2.7% | 79% |
酸素 | 微量 | 微量 | 0.13% | 21% |
アルゴン | 0.1% | 0.1% | 2% | 1% |
表面温度 | 477度 | 290±50度 | −53度 | 13度 |
気圧(バール) | 90 | 60 | 64 | 1 |
生命溢れる地球が火星のデータと違うのは当然であるが、問題は、生命誕生の40億年前からこのデータが保ち続けられているということである(海に生命が誕生した当初と、光合成によって酸素が海→陸に蓄積された後とでは、大気の組成は大きく異なる:引用者注)。
それは何によって制御されているのか?
この疑問に対して唯一の可能な解釈は、「地球は生きている」というものである。
当然、一個の生物を指すものではなく、地球上の全生命が現在の環境を一定に保つように一丸となったフィードバック・ループを持った、ホメオスタシスをなしている生命群という意味である。
GAIA仮説
全ての生物系というのは、自分で自分の体調を物理的、化学的にコントロールする力がある。
これをホメオスタシスといい、生物学の用語でふつう「恒常牲」と訳されている。
地球の、数十億年も安定した大気の酸素量、海水の量や塩分濃度は、生命の総体により生命の総体のために、ホメオスタシスが機能しているとし、地球というものを一つの生命体として捉え、その生命体に”GAIA”と名付けた。
彼の『GAIA仮説』が優れているのは、宇宙の創世から生命の誕生までが首尾一貫して説かれているところにある。
地球起源(双子の太陽説)
「太陽は今は一つだが、元は双子の星であった」というのがこの説の前提だ。
これは、宇宙物理学者のホイルが以前から唱えているが、日本では糸川英夫などがいる。
ある時、二つある太陽の一つが終焉を迎えて爆発し、その飛び散った原子が残された太陽の引力で集まり、徐々に噴まった(ママ:引用者注)というのが双子説の概略である。
『GAIA仮説』がユニークなのは、そうして飛び散った物質が地球へと囲まって(ママ:引用者注)いく中で、生命が発生したのだとし、その可能性を具体的に示しているところである。
生命起源説
生命の起源説には、2大分類として、地球での発生説と宇宙飛来説がある。
私は、宇宙飛来説を唱えているのはほんの一部の学者で、定説は地球での発生説であると思っていた。
最近知ったのだが、実は、生物学者や物理学者を含め、宇宙飛来説はかなり古い時代から定説とされていて、今でもこの説を唱える人が圧倒的に多い。
”GAIA”が発表当時異端の仮説とされたのは、生命が地球で誕生したとしている点で、かの「ネイチヤー」から「科学的でない」といって掲載を拒否されている。
GAIAのフィードバック・ループ
大気
酸素21%、窒素79%というのが地球の大気の組成比である。
空気中の酸素が22%になったとする。たった1%増えたにすぎない。どうってことはないと思いたいところだが、そうはいかない。酸素が1%増えただけで、山火事になる危険性は70%も増加する、と試算されている。
25%になるともう最悪で、雷ですぐに火事が起こり、地上は全て焼け野原となってしまう。
反対に酸素が減ったらどうなのか?これも同じで、酸素が20%を切ると現存の陸上生物はすべて生きていけないだろう、といわれている。
今の大気成分の濃度はたまたまそうなったわけではない。なるべくしてなった、それ以外にない、絶妙のバランスなのだ。
化石からでも古代の大気は分析できる。何十億年という間、この比率は変わっていないのである。十億年前の太陽のエネルギーは今と大きく変化しているのに、地球の大気の組成はまったく変化していないのである。
更に、あるかないか分からないほど微量だが、アンモニアやメタン、アルゴンなどといった希少ガスの組成もぜんぜん変わっていない。まさにミステリーだ。
こうしたコントロールを解きあかす科学的アプローチは、『GAIA仮説』によって始めてなされた。
メタンガス
この安定に重要な役割を担うのが、微生物が生産している(嫌気性のバクテリアが、水素と炭酸ガスから生成する:引用者注)メタンガスだ。この地球上で年間に生産されている量は10億トンにも及ぶ。
メタンガスの分子(CH4)は、炭素(C)1つと水素(H)4つからなる。炭素は重いが水素は非常に軽い原子である。いわば、メタンは炭素に4つの風船を結び付けたような格好をしていると想像してもらいたい。この4つの風船によって、メタンは発生後どんどん空中に上がっていくが、それは2つのコースを辿る。
1つは成層圏まで上り詰めるコースである。このコースを辿ったメタンは酸化され、水と炭酸ガスになる。そして水はさらに太陽エネルギーによって酸素と水素になる。水素は軽いので、宇宙の彼方に飛んで行ってしまうが、重い酸素は下におちてきて、大気に混じり込む。そして地球の酸素は増加する。
2つめのコースは対流圏に留まる。なぜ留まるかというと、酸素と結合子や水性室(酸素と結合しやすい性質:引用者注)のため、故化され(水酸基OHと反応して:引用者注)、メチル基(CH3:引用者注)に変わってしまうのである。
メチルは不安定な物質である為、その後わずか1秒で分解される。つまり、成層圏まで行ったのとは反対に、酸素を消費しているのである。これが、酸素21%の調整メカニズムの一端である。
実に巧妙な仕組みである。しかもこのメタンガスは、嫌気性のミクロ・フローラ(バクテリア)によってただ闇雲に造られているのではなく、大気中の酸素濃度、太陽エネルギーの変化などによって、リアルタイムにその生産量を調整している。
亜酸化窒素(NO) 窒素(N)+酸素(O)
やはり微生物によって造り出され、その量は年間に100〜200メガトンになるという。やはり2つのコースをとり、大気圏内酸素と結合するケースと、成層圏に行ったものは、酸素と結合して二酸化窒素に変わるのである。
ここで重要なのは、酸素のほとんどない成層圏で二酸化窒素に変わる時に、何から酸素を得ているかということだ。
それは、オゾンからである。オゾンは酸素が3つ集まったものだが、そのうちの1つの原子をいただくのである。
当然オゾンは少なくなる。最近オゾン破壊が問題となっているが、自然のメカニズムは人間のそれを問題としないほど、何十億年にわたり大規模に破壊し続けている。
もしこの破壊がなかったら、オゾンが増えすぎ、太陽光は地上に届かなくなってしまう。そして、この破壊される量も微生物自身によって調節されている。
アンモニア
微生物によって年間じつに1000メガトンという莫大な量が生産されている。こんなに大量に造られているというのに、アンモニアもまた大気中に存在する量は微少だ。どこに消えてしまうかというと、酸性物質と中和結合して、消費されている。
環境問題では、フロンと並んで酸性雨が大きくクローズアップされている。酸性雨は、人間が石油を燃やしていることが最大の原因だが、自然界においても、火山活動や死骸によって造り出されている。
そして、この自然界からの酸の総量は、生物系が作り出すアンモニアの総量とちょうど見合い、雨がph8に保たれるようにしている(中性はph7だから、ph8はややアルカリ性である)。
いままで説明したものは、生命活動に間接的に働きかけるものであった。ではその前提である、生物の生存、生命がその機能を続けていくことに対して、この地球の大気はどのような役目をしているだろうか?
その、生命活動に対する直接的な働きをするのが、炭酸ガス(二酸化炭素)と水(水蒸気)である
酸素の供給源は一般に、アマゾンの熱帯帯雨林が半分以上を供給していると聞かされているが、GAIA説の中では、海中の珪草がアマゾンよりはるかに酸素の供給量が多いと計算されている。
ここでラブロックは、警告を一つ投げかけている。
「目に見える森林は保護しようという活動が働いているが、見えない海中の珪草は保護という人の感性に入らない。」
宇宙研究の副産物
宇宙研究の特筆すべき副産物は、新しいテクノロジーではない。その本当の成果は、宇宙からこの美しい瑠璃色の惑星を実感できたことだろう。そしてこのことが、その後の大きな洞察をもたらしたのだ。
不断の生命記録を辿ると、時という偉大な酸化者の手から逃れ、海洋は一度として沸騰したり凍ったりせず、僕らを見守っていてくれたことが解る。酸素バランス、気温、湿度すらコントロールする巨大なサイバネティックス・システムが働いているのだ。
大気圏ではなく、バイオスフィア(生命圏)こそがまさしく、我々の”生命維持システム”の名にふさわしい
この強固なグリーンハウスは、輝ける進化を生み出したが、その成果は巨大な破壊力をもつ集団を作り出した。唯一の汚染、それは人間だったのか?
(後 略)
新しいGAIAの頭脳
”GAIA”は、一つの「散逸構造」または「自己組織化」をなしているといえる。
こうした視座に立つ『GAIA仮説』によって、生命とは何かについて非常に興味ある問題が提起されてくる。
GAIAの人間原理
こうしたホメオスタシス機能を持った惑星において、「認知フィードバックをもった人類の発生は何を意味するのか」ということだ。
人類が二酸化炭素の量をコントロールして、氷河期を回避したり、その認知フィードバック能力で地球規模の危機を回避する事ができるなら、人類は地球のホメオスタシスをより安定化させる為に発明されたと言えるだろう。
”GAIA”の自己組織化に能動的な役割を果たせた時、人類の存在意義があったと言えるのだ。
地球にとって我々がガンであるのかどうかは、まだ結論が出されたわけではない。
自覚があれば今からでも、”GAIA”の必要性に応じた生き方をすることができるのだ。
(中 略)
90年代、『ガイア仮説』が複雑系と出会った時、それは『ガイア理論』となった。