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哲学クロニクル208号
(2001/10/03)
アメリカと同盟軍による攻撃が近づいているようだ。このあたりで攻撃側の認識を確認しておくのも有益だろう。ニューヨークタイムズの9月27日号に掲載されたラムズフェルド国防長官のコメントを紹介する。自由のイデオロギーとは別に、戦闘の多様性と、協力する諸国による援助のニュアンスの違いがとくに強調されているところに注目したい。原文もリンクしておく。
まったく新しい戦争
(ドナルド・ラムズフェルド国防長官)
ブッシュ大統領は、わたしたちの日常生活にたいするテロリストの攻撃にたいする戦争のために、アメリカの力を糾合しています。どんな戦争でも、まず最初に真理が失われるという意見もあります。しかしこの戦争の最初の勝利は、真理を語ることでなければなりません。そして真理とは、この戦争はこれまでわが国が直面したことのない戦争になるということです。実のところ、わたしたちをこれから迎えている事態については、それがなにであるかよりも、それがなにでないかを語るほうが容易なのです。
この戦争は、敵対する戦力の枢軸を打倒するという単一の目的のために、た巨大な同盟軍が力を合わせて戦うものではないでしょう。そうではなく、この戦争に参加するのは変動し、発展し続ける浮動的な連合でしょう。さまざまな諸国が異なった役割を果たし、異なった形で貢献することになるでしょう。外交的な援助を提供する国もあり、財政的な援助や、兵站面での援助、軍事的な援助を提供する国もあるでしょう。公的に援助する国も、自国の状況のために、私的に、秘密のうちに援助する国もあるでしょう。この戦争では、使命によってどのような国が連合するかが決まるので、その逆ではありません。
わたしたちの友人である国が、特定の活動で援助してくれたり、他の国には内密のうちに援助してくれることもあるでしょう。反対にわが国の行動が、それほど友人ではないと考えてきた諸国の関与に左右されることもあるでしょう。
このような状況では、アメリカ合衆国にとっては友人であるサウジアラビアやアラブ首長国連合が、タリバンとの外交関係を停止することを決定したことは、このキャンペーンの初期の段階における重要な成功だといえます。ただしこうした決定は、これらの諸国が、アメリカ合衆国がこれからとろうとしているすべての行動に参加することを示すものではありません。
この戦争は、軍事的なターゲットを詳細に調べあげて、このターゲットを確保するために巨大な戦力を投入するという戦いにはならないかもしれません。軍事力は、個人、集団、諸国にテロリズムを行わせないためにわたしたちが利用する多くの手段のうちのひとつにすぎないものになるでしょう。
わが国の実行する手段には、世界のある場所にある軍事的なターゲットに巡航ミサイルをを発射することも含まれるでしょう。オフショアの金融センターでの投資の移動を追跡し、移動を停止させるために、電子的な闘いを進める可能性も十分にあります。この戦闘で着用される制服は、砂漠用のカモフラージュ戦闘服だけではありません。銀行の役員が着用するピンストライプのスーツも、プログラマーの普段着も、どれもが立派な制服なのです。
これは個人、集団、宗教、国家にたいする戦争ではないのです。わが国の敵は、自由な人々が、自分の好む形で生きることを否定しようとするテロリスト組織と国家の地球規模のネットワークなのです。テロリズムのスポンサーとなる外国の政府に、軍事的な攻撃をかけるかもしれません。あるいはこうした国家が抑圧している人々に、同盟を求めることもあるでしょう。
この戦争について語る語彙も、以前と同じではないのです。「敵の領土に侵入する」という言葉を使っても、サイバースペースで侵入することを意味することもあるのです。「終戦戦略」などというものもありません。わたしたちは最終的な期限のない持続的な闘いを進めることを検討しているのです。わたしたちの軍隊を展開するための固定した規則というものもないでしょう。特定の目標を達成するために、軍事力の行使が最善の方法であるかどうかを決めるガイドラインを定めることになるでしょう。
華々しい軍事的な行動が展開されても、外見からは、これが勝利だという成果を確認できないこともあるでしょう。あるいは人々の気付かない行動によって、大きな勝利をあげることもあるでしょう。「戦闘」を戦うのは、わが国の国境で不審な人々を調べる関税の役人たち、マネー・ロンダリングが行われないように協力する外交官たちなのです。
これはまったく新しい種類の戦争です。しかしひとつだけ変わらないものがあります。アメリカは不屈だということです。アメリカの国民、この自由で偉大な国民が、これまでとまったく変わりなく、日常の生活を暮らし、仕事に通い、子供を育て、夢を抱くことのうちに、わが国の勝利は訪れるのです。
作成:中山 元 (c)2001
http://nakayama.org/polylogos/chronique/208.html