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朝日の朝刊を開いて驚愕した。社説はこう述べる。
ロシアのプーチン大統領は「前例のない非人間的なテロリストの犯罪だ」と事件を糾弾した。しかし、大量の犠牲者を出したことへの自らの責任には触れようとしない。国民が知りたい人質や死傷者数の公表は遅れ、情報操作の疑いさえ出ている。テロに屈するなという方針は正しい。だが、どんな結果になっても構わない、ということではない。
http://www.asyura2.com/0406/war59/msg/699.html
事件を詳しく知らない人間には大量の犠牲を出したのはプーチンのせいという風に思うだろう。プーチンの過去のチェチェンに対する強硬策か今回の事件か、どちらかをのべているか明らかにせずにぼかしているのが実にいやらしい。
社説に並んで紙を占めているのが『政権批判 メディア沈黙』というタイトルの記事である。「主要紙、記事・見出しのない1面」とある。プーチンのメディア統制叩きだ。要は社説でほんの少しテロを批判したものの、悪の根源はプーチン、という論調で埋め尽くされているのだ。
副題には「主要紙」とあったので「すわっ、軒並みか」と思い、身を乗り出して写真を見ると、何とそれを行ったのはイズベスチアだけではないか。他の新聞にはしっかりタイトルがある。ここでも巧妙な誘導が見えるというわけだ。写真はいわばアリバイのようなものだ。
朝日の特派員が現地を取材し「批判的な記事を載せている」ことも私には実に奇妙だった。本当に統制を行うとしたら、かつて911でアメリカが行ったようにWTCそばに近づかせないというようなことをするのではないだろうか。
かつてプラウダがユーコス騒動以降のプーチンに対する西側報道について考察し、今後もそれは続くだろうと述べていたのを思い出す。
ところで国内向けに統制を行っているのは果たしてロシアだけなのだろうか。アメリカにおいては米軍のイラク戦死者報道など、ほとんど報じられずブラックアウトの状態だが、寡聞にして朝日がその統制状態を糾弾したことは知らない。日本においてはアブグレイブの虐待については、当の朝日が写真はおろか情報すらしばらく自己検閲していたではないか。(写真はほとんど未だに公開されていない)
ベネズエラにおいてチャべスはメディアに対する注意を怠りないが、政府系メディアであるベネズエラ紙は数々のアメリカの謀略と偽善を暴いている。朝日などよりはるかにスキャンダラスな情報を世界に報じているのだ。
権力に屈しているのは一体全体どちらなのだろう。
オリガークはメディア、石油を押さえていた。ユダヤお得意の分野である。ユーコスの着手にかかってから本格化した「メディア統制」という西側メディア揃ってのバッシングの意味を考えても損はないだろう。
むろん、私はプーチンを全面的に支持するものではない。政治的な情報操作の流れに、他ならぬ朝日が乗っている感がいよいよ強まったのでここに警鐘を行っている次第。そう。情報操作に対抗するとしたらあなたは何をする?
プーチンはなぜこれほど叩かれるのだろう。チェチェンを利用している勢力があるんじゃない?
権力を恐れロシアのメディアが批判できなくなっていることを朝日は指摘しているが、プーチンなどという人物などよりでかいのが、他にどこかあるのを忘れてるんじゃない?自分たち自身懐柔されたか恐れてか、そうしたところに対する批判をやってないんじゃないの? 朝日くん。
警察国家の恐れは、アメリカを主体とするところから、起こっているとは思わないの? 朝日くん。
イズベスチアの見事なタイトルなし記事と辞任「劇」について考えるために重要な材料を次に紹介する。イズベスチアの実質的経営者はポターニン。朝日にかかれば、メディア弾圧の聖戦戦士なのだが、果たしてそうだろうか。
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チェルシーを買った男
プレミア・リーグの名門クラブ、チェルシーがロシアの富豪に買収された。その富豪とは、ロシア第2位の長者ロマン・アブラモヴィッツ36歳。2003年度Forbes世界億万長者番付49位に位置する資産総額57億ドルの金持ちである。とうとうロシア・マネーが世界のサッカー界に流れる時代になった。しかし、ちょっと待って欲しい。ロシアはほんの10年ほど前まで社会主義だったのではないか。15年前には無一文の青年がこんな短期間にどうして巨額の富を築くことができたのだろうか。ビル・ゲーツのように、よほど大きな発見・発明で、世界商品を開発したのだろうか。今年の億万長者番付500位には、ロシア人が17名も名を連ねている。ロシアの資本主義が本格的に稼働した証拠だろうか。
そうではない。億万長者番付に名前を連ねるロシア人は、皆、石油、天然ガス、金属の巨大企業の株主だ。それらの企業はすべて、「民営化」された旧国営企業。しかし、どうやって株主になれたのか。元手の資金を持っていたはずがない。「無から有」を生み出す錬金術があったのだ。ロシアにおける「民営化」は、多数の命の犠牲と、権力を使った術数、それを利用した知恵者の才覚で実行された。その錬金術の結果が億万長者の登場なのだ。
Yukosへの捜査
7月19日付けFinacial Times第一面の3分の2は、ブレア政権を揺るがすケリー博士の死亡記事で占められた。ところが、紙面の右欄の3分の1には、"Yukos probe extends to five murder cases" (Yukosへの捜査が5件の殺人事件に及ぶ)という記事が並べられている。何故、この事件が一面記事になるほど重要なのか。
YukosはGazprom、UESやLukoilに次ぐロシア最大級の石油・天然ガスのエネルギー関連企業。そのYukosが同じく石油企業の Sibneftを併合して、世界メジャーに匹敵する企業になる計画が進行中である。その事実上の所有者が殺人容疑で捜査を受けているのだ。
すでに逮捕されたプラトン・レヴェジェフは、2003年のForbes億万長者番付427位に顔を出した富豪である。彼の資産はYukosの持ち株。レヴェジェフは本命でない。最終的な標的はYukosのCEO、泣く子も黙るロシア一の億万長者ホドルコフスキーだ。2003年億万長者番付世界26位、公表資産80億ドルの富豪である。モスクワのホドルコフスキーの邸宅は、「ホドルコフスキー宮殿」と通称されている。記事によれば、ホドルコフスキーと盟友ネヴズィリンも、検察の聴取を受けた。容疑は1998年6月に起こったYukosの生産基地ネフチェユガスンク市の市長暗殺。Yukosの不正と闘っていた人物として知られている。
Sibneft創生の秘密
何を隠そう、Yukosの併合対象になっているSibneftこそ、アブラモヴィッツの主要な資産を構成する。旧ソ連では、Gazpromに次ぐ第二の巨大企業として、石油発掘・精製会社Rosneft社があった。Rosneft社保有の最良の資産である二つの事業所(石油生産のナヤバルスクニェフトガスと石油精製のオムスク精油所)を切り離して、新会社Sibneftを創設することを提案したのが、若くして石油ブローカーになったアブラモヴィッツである(Paul Klebnikov, Godfather of the Kremlin, Harcourt, 2000)。当時、クレムリンへの接近を図り、後にエリツィン大統領を手玉にとったベレゾフスキーに、この話が持ち込まれた。1995年初頭のことである。この戦略にホドルコフスキーとポターニンが加わった。ベレゾフスキーがエリツィンを説得し、チュバイスとチェルノムイルジンが会議を取り仕切り、 1995年3月の閣僚会議決定にこぎつけた。ホドルコフスキーとポターニンはこの会議に出席し、「民営化」の全体スキームを説明した。
ここから、猛烈なスピードで、エネルギー関連の巨大国営企業を「民営化」する策略が練られた。これが1995年暮れに行われた「負債と株式の交換スキーム」による巨大企業の事実上の売却に結実した。キャッシュ・フローに問題を抱えていたこれらの企業に融資し、その見返りに株式を取得する。スワップを装ったダンピング買い取り戦術だった。
1995年12月に公示された入札で、Lukoil, Yukos, Sibneft, Surgut, Sidanco, Norilskなどの負債オークションがおこなわれ、ベレゾフスキー・グループは他の産業・金融グループを巧妙に排除して、すべての入札を落札した。落札価格は市場価額のほぼ20分の1。ベレゾフスキー・グループが握る銀行や投資会社が落札した。後は事実上の山分け。「民間」会社に移った持ち分を個人資産に転化するのに、何の策略も要らない。
こうして、ベレゾフスキー・グループ全員が、突如、2001年のForbes億万長者に顔を出すことになった。もっとも、ベレゾフスキーは資産を隠しているので番付には出ていない。チェルノムイルジンは、後を継がせたビヤヒレフとともに、管轄企業Gazpromの「民営化」で株を「取得」して億万長者になったが、奇妙なことに、2002年の番付から姿を消した。
捜査はどこまで及ぶか
このような巨額の富の配分を、他のグループがただ指をくわえて見ていたはずがない。だからこそ、ロシアでは1990年代を通して、抗争による殺人事件が年間1千件以上も発生し、明白な嘱託殺人が年間100件以上起きるという異常事態が続いている。ほとんどの殺人事件で、実行者や黒幕は逮捕されていない。ソ連崩壊後のロシアは無法地帯と化した。無能なエリツィンに代わってKGBプーチンの登場が必要になった社会背景である。
Yukosの捜査はSibneftにも向かっている。Rosneftの分割に強硬に反対したオムスク精油所長リツコヴィッチは、1995年8月に溺死体で発見された。プーチンがその気になれば、逮捕・拘束の理由に事欠かない。チェチェン・マフィアをバックにモスクワ・マフィア戦争を勝ち抜き、1995年春のリスチェフ(トーク・ショウの人気ホストでORTテレビ社長)暗殺事件の首謀者とされながら捜査を逃れ、逆にエリツィンに取り入ったベレゾフスキー。その彼と行動をともにしたアブラモヴィッツが安泰であるわけがない。モスクワ市長は「ロシアのサッカー界に唾する行為」とチェルシー買収を批判し、体制崩壊の貧困に喘ぐ国民も国家資産をかすめたお金がホビーに使われることに批判的なのは当然だろう。いかに資金不足とはいえ、出所の怪しいお金に飛びつくサッカー・クラブは、もはや名門でも何でもない。マネー・ロンダーリングの道具になったと言われても仕方がない。チェルシー売却は、「ケリー博士」事件に次いで、今夏イギリスの第二のスキャンダルだ。諸悪の根元とも言えるベレゾフスキーも、イギリスに逃亡中だ。
それにしても、プーチン大統領は民営化犯罪をどこまで追及するつもりだろうか。国会選挙と大統領選を控え、各種の勢力の駆け引きが続いている。
アメリカは例のごとく、一連の逮捕について、投資資産を脅かす政治介入と懸念を表明している。マフィアが背広を着て、サッカー・チームを持てば免罪されるのか。この種の資金洗浄も「グローバリゼーション」で放免されるのか。もっとも、身近な事例がある。イタリア首相もACミランの持ち主だ。 (2003 年8月)
http://www.japhun.com/indexjp/News/kakonews/moritatune/moritatune0309.htm