残るナゾ　多数の子供に乱射／解放交渉で何が起きた？

　死傷者九百人以上という大惨事となったロシア南部、北オセチア共和国ベスランの学校占拠事件。特殊部隊の突入から一夜明けた四日、事件の詳細が次第に明らかになりつつあるが、人質の人数は当局が当初発表した三倍以上に上るなど事件の謎は少なくない。（モスクワ　内藤泰朗、外信部　佐藤貴生）

■突入作戦は

　武装集団は、立てこもっている間に死亡した人質の遺体を引き渡すことで非常事態省と合意。同省の救助員が現場に足を運んださいに犯人グループが人質の足を撃ち始めたことで銃撃戦が始まり多数の死傷者を出したとの見方が強まっている。

　しかし、水や食料、医薬品の差し入れを拒み続けた武装集団が、なぜ遺体引き渡しにだけ同意したのか疑問が残る。

　事件発生から五十時間以上も飲まず食わずだった人質の疲労はピークに達しており、治安当局が急襲計画を練っていた可能性が強い。このため「救助員が接近したのを機に、制圧作戦に着手する計画があったのでは」との報道もある。

■人質道連れ

　制圧の端緒となった銃撃戦の開始直後、立てこもり現場の体育館からは猛烈な爆発や銃撃音が長い間続いた。武装集団がなぜ、無差別に多数の子供を含む人質に銃口を向けたのだろうか。

　共和国のザソホフ大統領は声明でアラブ傭兵部隊が参画したことを指摘し、「大規模なテロ戦争」がロシア南部で進んでいると警告した。武装集団の大半が死ぬ覚悟を固めていた可能性が強い。

　犯人側は校内に地雷を敷設、校舎に仕掛けた爆発物と連動するようにセットしていたとされる。またロシアのテレビ局ＮＴＶは、犯人の女が自爆したという人質の話を伝えている。

■情報操作？

　事件当初、共和国の行政当局の発表は人質を三百五十四人としたが、制圧前に脱出した複数の人が「人質は千五百人前後いる」などと証言。突入作戦が終了後、ロシア大統領府は実際の人質の数は約千二百人だったと訂正した。

　ベスラン第一番学校の児童・生徒数は約九百人。入学式・始業式当日で多数の保護者が学校に居合わせたことを考慮すれば、当初の数字はあまりにも少ないとの印象が否めず、犠牲者数を少なく見せるため、当局が情報操作したのではとの見方が出ている。

http://www.sankei.co.jp/news/evening/05iti002.htm

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