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イラク戦争と米国の腐敗を描く 『華氏911』
都築忠志 19:44 08/29 2004
http://www.mynewsjapan.com/kobetsu.jsp?sn=149
窓が破れ、壁は汚れ、庭も荒れ果てた空き家が続く街。ハリウッド映画では豊かに描かれる米国の地方都市の実態である。庶民は貧しさと失業に苦しむ。この庶民の子どもが、イラク戦争に出征して、イラクの同じように貧しい庶民を殺す。巨大な矛盾を描く作品。
ブッシュ大統領は米国民に信望がなかった。その理由は政治手腕や人気の問題ではない。2000年の大統領選挙で、ブッシュ大統領に不正の疑いがあるからだ。大統領選挙の後、首都ではかつてない大規模なデモが行われた。米議会の下院ではアフリカ系アメリカ人(黒人)の女性議員が「フロリダ州で当局による不正があり、貧困層など数万人の投票権が奪われた」と次々と抗議した。画面に映し出される下院議員たちは一様に困惑した表情をしている。ブッシュ大統領がフロリダで敗北すれば、対抗していたゴアが大統領選挙に勝利していたのである。監督のマイケル・ムーアはブッシュ大統領の正統性に疑問を投げかける。
ブッシュ大統領の父、ブッシュ・シニア元大統領とサウジアラビアの財閥との間の癒着が描かれる。元大統領が関係する会社はサウジアラビアの財閥から多額の投資を受けている。米国の同時多発テロの後、子のブッシュ大統領はサウジアラビアの財閥の関係者を米国から出国させるために便宜を図る。FBI(米国連邦捜査局)の元捜査官が出演して「出国したサウジアラビアの財閥の関係者には同時多発テロの犯人と親族関係にある者もいたため、捜査に協力してもらう必要があった」と述べている。
一方で、ムーア監督はイラク戦争の実態を描く。大型の自動ライフル銃を持った若い米軍の兵士たちが、夜間、イラクの民家に車両で乗りつけ、押し入る。民家で眠っていたイラクの主婦や娘たちは恐怖のあまり泣き叫ぶ。イラクの男たちは完全に制圧され、米兵に逮捕される。取調べのためだ。場面が変わり、米軍の砲撃や爆撃の後の様子だ。イラクの子どもたちや赤ん坊の手足が吹き飛んでいる。米軍の車両が爆破される攻撃の後に、イラクの庶民は歓喜して、米兵の死体を引きずり出し、吊り下げ、辱める。イラクの庶民の米国への憎しみが伝わってくる。
画面はこの米兵たちの姿に迫る。音楽CDを聞きながら砲撃を続ける若い兵士が「イラク人を殺し続けるとノッてくる」と話す。ところが、イラクにいる若い兵士たちの出身をたどると、米国の貧しい庶民の子どもであった。米国の地方都市は失業者や貧しい庶民であふれている。その地方都市の住民は「ここはバクダットの街のように荒れ果てている。バクダットは戦争のせいだが、ここは戦争がなくても荒んでいる」と嘆く。福祉や教育、雇用に対して、米政府は責任を負っていない。進学の費用がなく、夢も持てない米国の貧しい庶民の子どもたちに対して、米軍の当局者が入隊を勧める。「将来の夢の足がかりになる」「進学の費用を稼ぐことができる」と貧しい庶民の子どもを米軍に誘うのだ。この子どもの親たちも「米軍はよい就職先」と信じている。
米国の国際企業はイラク戦争の兵站などで大もうけしている。画面は大企業の幹部たちの姿を描く。パーティー会場で「費用は何しろ税金だからね」と表情をほころばせる大企業の経営者たち。
米軍はよい就職先と思い、子どもを出征させた親は不幸な思いをする。子どもは思いがけず、戦死した。この親は首都にあるホワイト・ハウス(米国大統領官邸)の前を訪れ、「私の子どもを殺したのは同時多発テロの犯人ではなく、この国の大統領だ。こんなに無知だったなんて」と泣き叫ぶ。
政治とは真実を覆い隠すものである。米国の貧しい庶民の子どもたちが兵士となって、イラクの貧しい庶民を殺している。その巨大な矛盾を実現させているのが米国の政治である。告発映画である。
映画『華氏 911』公式ウェブサイト
http://www.herald.co.jp/official/kashi911/index.shtml
+++ 記者コメント +++
ブッシュ大統領は2003年5月、イラク戦争の戦闘終結を宣言しましたが、記者はブッシュ大統領とは違ってイラク戦争は終結していないと考えています。そこで、記事の中では現在イラクで続いている戦闘を「イラク戦争」と表現しました。
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