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● イラク問題に対する日本政府の方針小泉純一郎です。
先週に続いて、イラク問題についての政府の立場をご説明して、皆さんの
ご理解とご協力を得たいと思います。18日、ブッシュ大統領はテレビで演説し、48時間以内にフセイン政権
が自ら平和の道を選ばなければ武力行使に訴えざるを得ないと通告しました。私は、18日の午後、官邸で会見して、ブッシュ大統領の苦渋に満ちた決
断を支持することを皆さんに明らかにしました。日本は、今まで国際協調の下に平和的解決を目指して日本独自の外交努力
を続けてまいりました。ブッシュ大統領に対しては、直接あるいは電話で、
国際協調を得られるようにすることが大事だと重ねて強調してきました。ブッシュ大統領は今まで国際協調に向けて懸命の努力を続けてきたと思い
ます。ほかの国々もそうです。しかし、結局、今回国連安保理が一致結束し
て対応できなかったことは大変残念です。戦争か平和かと問われればだれでも平和と答えるでしょう。私もそうです。
しかし、問題は、大量破壊兵器を保有するイラクの脅威に私たちがどう対峙
するかです。イラクは12年間、国連の決議を無視し、大量破壊兵器の破棄
をしてこなかったのです。武力行使が始まると、犠牲者なしではすまされません。しかし、大量破壊
兵器、あるいは毒ガスなどの化学兵器、炭疽菌などの生物兵器が独裁者やテ
ロリストによって使われたら、何万人あるいは何十万人という生命が脅かさ
れます。フセイン政権がこれらの兵器を廃棄する意思がないことが明らかに
なった以上、これを放置するわけにはいきません。このアメリカの決断を支
持する以外に解決の途はないと思います。これが、支持の理由です。戦後50年間、日本が平和のうちに繁栄を築くことができたのは、日米同
盟関係の重要性を踏まえて、国際協調体制を堅持してきたからです。日本の
平和と安全を守るためにも日米の同盟関係を堅持しながら、今後も国際協調、
国際協力を追求していかなければならないと思います。たとえ、武力行使がはじまっても、日本は戦闘行為には一切参加しません。
もし、はじまった場合は、できるだけ犠牲を少なく速やかに終結することを
望みます。そして、イラクの戦後復興や国際社会への平和と安定のために、
日本は何ができるのか、何が必要かということを考えて、主体的に対応して
いきたいと思います。同時に、日本国民の安全の確保と、経済の混乱の回避に万全を期してまい
ります。難しい選択ですが、皆さんのご理解とご協力を心よりお願いします。
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[特別寄稿]● みんなが悩んだ(外交評論家、内閣官房参与 岡本行夫)
アメリカの武力行使の可能性が高まって、僕はずいぶん悩みました。何と
か査察の継続で大量破壊兵器を押え込むことができないか、武力行使ではな
く外交的な手段で解決できないかと。官邸の関係者も同じでした。僕みたい
な下っ端と比較しては気の毒ですが、アメリカのパウエル国務長官も年末ぐ
らいまでは何とか戦争を避けられないかと考えていたと聞きます。僕は2月に入ってからサダム・フセインの非協力ぶりを見て、アメリカは
これでは引くまいと思いました。フセインは25万の大軍の圧力の下でよう
やく、しかもほんの一部だけ、大量破壊兵器を出してきました。アメリカが
包囲を解けばまた元の12年間無視の立場に戻るでしょう。武力行使が良くないと言うのは簡単だし、僕自身もそう論評してきました。
ただここに至って「武力なしでの問題解決」という最善の選択肢が消滅して
しまった後の日本の「次善の選択肢」としては、アメリカを支持することし
かないと思うのです。フセインが大量の毒ガスや細菌兵器を隠し持っている
ことはまず疑いないでしょう。でなければ彼は巨額の経済的損失をイラクに
もたらす国連の経済制裁を甘受し続けてきたはずがない。アメリカは国連に
見切りをつけて少数国だけで、その除去に乗り出したわけです。ひとつだけお伝えしたいことがあります。僕はこの問題で何回か小泉首相
とお話しする機会がありましたが、最終段階での小泉さんの揺らぎのない信
念には正直言って感銘を受けました。このような難しい決断を国民にわかっ
てもらうためには、小賢(こざか)しい論理や手続論をかざすのではなく、
自分の信念を正直に自分の言葉で語りかけるしかないと強い口調で言ってお
られました。僕はこれまでに日本の安全保障政策の難しい場面を幾度となく
目撃してきましたが、感心しました。小泉さんは戦争を何とか避けられない
かという思いでした。しかし、地球上の全人口を何度も繰返し殺害できるく
らいの大量破壊兵器をイラクの手から取り上げなければ、そうした兵器がや
がて世界中に拡散して取返しのつかないことになる。それにその行動の先頭
に立つアメリカは、いざというときに日本を守ってくれる唯一の同盟国であ
る。アメリカ支持しかない…。そのとおりだと思います。武力を行使せずに
このような恐ろしい脅威が除去できればベスト、しかし残念ながらそれはで
きなかった。みんなが悩んだ末、苦しい道をとりました。今はただ、少々荒っぽくてもこの苦しみの過程ができるだけ早く終結し、
双方の犠牲者が最小限にとどまることを祈るばかりです。--------------------------------------------------------------------
(中略)
[編集後記]
サダム・フセイン大統領に与えられた、最後の猶予期間である48時間が、
すぎようとしています。小泉総理は昨年来、平和的解決を目指して努力して
きました。しかし、フセイン大統領は国際社会に対し、誠意ある姿勢を見せ
ようとしませんでした。
イランに戦争を仕掛け、クエートを侵略したのはフセインです。マスター
ドガスなどの化学兵器を使い、3万人のイラン人を殺しただけでなく、イラ
クの少数民族であるクルド人、つまり自国民を数千人、やはり化学兵器で虐
殺しました。大統領就任の会見において、会場にいる同士を裏切り者と名指
し、その場から連行して、直ちに処刑しました。この独裁者のもとに、あの
地下鉄サリン事件を7万2千回起こすことが出来る、VXガスを置いておい
ては、世界はとても危険です。もし、それを廃棄したなら、証拠は簡単に示
せます。世界は12年待ったが、彼はやらなかった。
イラク国民も被害者です。彼らを戦火から救うのはイラク共和国大統領と
して、サダム・フセインの責任です。しかし、イラク国民のために、フセイ
ン大統領の英断を期待するのは、やはり無理だったのでしょうか。
隣に脅威をかかえる盧武鉉(ノ・ムヒョン)韓国大統領も、米国を支持し
ました。小泉総理にとっても、万やむをえない決断でした。(晋)
http://www.kantei.go.jp/jp/m-magazine/backnumber/2003/0320.html
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