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かなしみの星にうまれて:
04夏・平和の自画像/1 イラク(その1)
http://www.mainichi-msn.co.jp/kokusai/america/news/20040730ddm001070125000c.html
◇子どもは戦車にひき殺された 民兵は怒り、米兵殺害−−憎悪の連鎖、果てなく
米軍に石を投げた子どもが戦車でひき殺された。それを見たイラク人民兵はロケット砲を担いで走り出した……。60億の人間が生きる地球には戦火がやまず、無辜(むこ)の命が失われていく。どうすれば憎悪の連鎖を断ち切ることができるのか。私たちに何ができるのか。この夏、絶望を乗り越えようともがく人々の心に耳を澄ませてみたい。「かなしみの星」に生きる命のために。
<……担架に乗った黒い影がすべり込むように病院に運ばれてきた>
次の瞬間、画像は大きく揺れた。ビデオカメラが、撮影していたイラク人民兵の手から落ち、別の仲間がカメラを拾って撮影を続けた。
「黒い影」は焼け焦げた父子だった。父親は25歳。生後2カ月の乳児を抱いたまま焼けて炭化している。撮影者の親友だという。男たちが頭を抱え泣く。手を広げ、あふれる悲しみや怒りを訴えた。
今年4月4日、イスラム教シーア派の聖地ナジャフ近郊の町クーファの病院。午後2時41分から21分間の映像を撮影した民兵は、対米強硬派の指導者、ムクタダ・サドル師を支持する「マフディ軍」の幹部。日本製のビデオカメラで撮影した。
「こんな形で殺されていくんだ。この現実を外の世界に伝えてくれ」。戦禍に遭った子どもを支援するためイラク入りした大阪府吹田市職員、西谷文和さん(43)が民兵組織から、映像を複写したCDを託された。
このビデオが撮影された4日、ナジャフ近郊では占領政策などに反発した抗議デモとスペイン軍主体の連合軍が衝突、200人以上が死傷した。
同日、バグダッド北東部サドルシティーでも、サドル師派の民兵組織と米軍、イラク治安当局の激しい戦闘が始まった。
翌5日、ファルージャでは米軍が武装集団掃討のため包囲作戦を始め、女性や子どもを含め600人以上の住民が犠牲になったとされる。一連の衝突の背景には、3月31日に米民間人4人の遺体が、ユーフラテス川の橋につるされる事件があった。
黒焦げの父子を撮影した民兵は、その3日後、サドルシティーで米軍に石を投げた子どもが戦車にひき殺される瞬間を目撃した。衝動的にロケット砲を担いで走り、戦車に向かって撃ち込んだ。米兵は死んだ。
民兵は米兵が持っていたカメラのフィルムを現像し、西谷さんに4枚の写真を見せた。そこには米兵が写っていた。民兵は青く変色した写真のうち2枚を西谷さんに渡し、残りの2枚は懐に戻した。「これは渡せない。米兵が笑ってやがる。戦いの証しだから」
◇記者は写真を手に米兵の遺族の元へ
写真の中の米兵が誰なのか分からない。もし、戦死したのならば、最後の写真かもしれない。はるかイラクの地で死んだ米兵にも家族はいるはずだ。イラクの人々にとっては憎むべき敵。しかし、彼の妻や子どもに何の罪があるというのか……。悲しみと憎悪の連鎖の果てを見届けたい。
「隊列を組む高機動車の上の米兵たち」「街角で燃え上がる何か」。記者は西谷さんが持ち帰った2枚の写真を手に米国に渡った。
【高尾具成】(社会面につづく)=次回から社会面に掲載
毎日新聞 2004年7月30日 東京朝刊