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「イスラームの倫理」公開講義でのQ&A [中田考氏]
http://www.asyura2.com/0406/war56/msg/251.html
投稿者 なるほど 日時 2004 年 6 月 02 日 08:49:47:dfhdU2/i2Qkk2
 

(回答先: 日本のイスラーム世界外交の諸問題 [中田考氏] 投稿者 なるほど 日時 2004 年 6 月 02 日 08:47:33)

公開講義でのQ&A 2004年5月25日に京都の大学コンソーシアム京都というところで、「イスラームの倫理」と題して講義をしました。この頁はその発表のレジュメと講義の後で質問用紙に記入してもらった感想・質問への回答です。



発表レジュメ

2004年5月25日  大学コンソーシアム京都
「イスラームの倫理」

序. イスラームは理解可能か?

第一部:イスラームの倫理

1.善悪の基準

* 善と悪は客観的に存在する。

* 善悪の基準はアッラーフのみが定める。

* アッラーフは(1)世界の創造主であり、かつ(2)善悪の基準(=法の)制定
者。

* イスラームの第1信仰告白「アッラーフの他に神はない」とは「世界の創
造主のみが法の制定者」を意味する。

* 善悪の基準は預言者たちの言葉を通じて与えられる。

* イスラームの第2信仰告白「ムハンマドはアッラーフの預言者である」と
は「ムハンマドのシャリーア(クルアーン、スンナ)がアッラーフの法であること」
を意味する。

2.力に応じての義務賦課

* 全ての人間はそれぞれの力に応じて義務を負わされ、全能の法の制定者、
裁判官、執行者であるアッラーフは、全ての人間の個々の行為とその意図の全てを知
り、公正に裁き賞罰を与え給う。

* シャリーアは、(1)神と人との関係を定めるイバーダート(神事)と
(2)人と人の関係を律するムアーマラート(人事)、に大別される。

* 人はそれぞれ持てる力が違うので、人間の社会には、統治者と被統治者の
区別が生じるが、人の負う義務は力に応じて異なるので、ムアーマラートにおいて裁
判、刑罰執行、戦争等、統治者には、被統治者にはない特別な義務が生ずる。

3.イスラームの社会秩序

* この統治者の頂点に立つのがカリフであり、イスラーム教徒はカリフを頂
点に全てがムハンマドのシャリーアに平等に服する(各自が力に応じて異なる権限=
義務を負う)。

* このカリフの下にムスリムがシャリーアを遵奉する法治空間が「イスラー
ムの家(ダール・アル=イスラーム)」。

* ムハンマドのシャリーアのみが法であり、それ以外の人間による人間の支
配は全て「無法」、西欧が「法」と呼んでいるものは弱肉強食の抑圧の道具でしかな
い。

* 「イスラームの家」の外は「戦争(=無法)の家(ダール・アル=ハル
ブ)」である。

4.イスラームの使命

* 共同体としてのムスリムの使命は、この法治空間の拡大であり、法の支配
を認めるなら、内心の信仰は各自に委ねられる。(「イスラームの家」は全居住者が
シャリーアの公法に従いつつ、私的領域においては、各共同体が自治を享受する法治
空間)

* 宣教ではなく法の支配の樹立と無法者の武装解除による平和と秩序の確立

第二部:6信5行の実例

日没の義務の礼拝の実演



Q&A

問い「コーランにはアラビア語版しか存在しないのは本当ですか」

答え「はい。外国語に訳してしまうと意味も音も変わりますから、それはもうクル
アーンではありません。我々が翻訳と言っているようなものは、クルアーンの場合、
外国語による意味の解説と呼びます。」

問い「一神教どうしは対立するという話をよく聞きますが、イスラム教においてはそ
のようなことはないということなのでしょうか」

答え「『対立』という言葉で、武力衝突を指すなら、必ずしもそうはなりません。武
力衝突に至るには、政治、経済、社会、文化、軍事などのいろいろな条件がそろう必
要があります。」

問い「善と悪は客観的に存在する、ですが、人が判断する善悪ではないということで
すか?具体的な例を挙げていただきたいです。」

答え「たとえば神の命じた婚姻の手続きに添っていませんので、援助交際は悪です
が、4人までの妻を持つことは神が許していますので、重婚は罪ではありません。」

問い「むち打ちは20回も打つとあまりの痛みで死んでしまうと聞いていましたが、単なる噂でしょうか」

答え「鞭の種類によりますが、20回ならともかく100回打つとまず死ぬそうです」

問い「石打などは本当に死んでしまいそうですが」

答え「石打は死刑で死ぬまで投げ続けますので必ず死にます」

問い「弱肉強食ではないと言うが、奴隷もあったしいまだ男尊女卑であるのではない
か」

答え「イスラームが弱肉強食でない、と言ったわけではなく、西欧の法が弱肉強食の
制度化である、と言ったのである。イスラーム法自体が本当は正義に適っていること
を理解するのは大変難しいことです。」

問い「アラーを信仰しない者には、無理やり武装解除させて税金を取るというのは、
イスラーム共同体による横暴ではないか」

答え「私は、民主主義など信じていないので、民主主義の信徒から武装解除され税金
も取られていることを横暴だとも思いませんが、民主主義を信じていて、なお武装解
除され税金も取られている一般の日本国民は、それを横暴と感じているのでしょう
か。」

問い「内心の信仰はイスラームの下にあっても日本の法律を捨てないと、『イスラー
ムの家』の中に加わることは出来ないのでしょうか。」

答え「日本の法律は属地主義ですので、日本国外では効力がありませんので、『イス
ラームの家』の中では特に捨てるまでもなく、無効です。それはアメリカで日本の法
律が通用しないのと同じです。」

問い「礼拝をする時は、決まった言葉があるのです、それを唱えるだけで、そのと
き、自分の感情はないのですか。」

答え「心を込めて決まった言葉を唱えるのです」

問い「何故、偶像崇拝を否定するのか」

答え「偶像は何の力もないので崇拝しても無駄だからです」

問い「礼拝の時の言葉は主にどういう事を言っているのか」

答え「たとえば礼拝の中心のクルアーン第一章の読誦では以下のように唱えます。

称えあれアッラーフ、万有の主。慈悲深く慈愛あまねき御方。審判の日の主宰者。あ
なたをこそ崇めまつり、あなたにこそお助けを請いまつる。直き道に導きたまえ。あ
なたが恵みを垂れ給うた者であり、御怒りを蒙らず迷ったのでない者の道へ。」

問い「日本の支援をイラク人は迷惑だと言っていましたが、実際は様々な考えがある
のではないでしょうか。」

答え「支援が迷惑なのではなくて、自衛隊が迷惑なのです。自衛隊に雇われてお金を
貰っている人は、お金を歓迎しているのであって、自衛隊を歓迎しているのではあり
ません。ただイラク人にもサダム・フセインの支持者もまだいますし、ひとそれぞれ
というのはその通りです。多数意見はそうだ、ということです。」

問い「イスラム教ではイエスやモーゼも聖人なのですか」

答え「そうです」

問い「キリスト教にもかつて興味があった先生にとって、現在の一部のキリスト教徒
とイスラム教徒の対立はどのように思われますか」

答え「イスラームは異教徒との戦争がありうることを否定していませんから、戦争を
しているからといって別に驚きませんが、キリスト教は暴力否定の教えのはずで、キ
リスト教徒を名乗りながら戦争を起す二枚舌の輩には憤りを禁じえません。」

問い「イラク戦争の終末は、アッラーフはどのような審判を下されるのでしょうか」

答え「神ならぬ身には分かりませんが、最終的にはアメリカは追い出されるでしょ
う」

問い「イスラームの女性はやはり『抑圧』されているのでは」

答え「現実の社会を見れば、イスラーム世界でも男性も女性も抑圧されています。正
義が全うされるのは最後の審判の後だけです」

問い「先生は日本国籍だけれど、ムスリムです。一夫多妻が出来るのですか?」

答え「もちろんできますが、日本の法律はそれを有効とみなしません」

問い「今も増え続けるイスラム教徒は何をもって自身がイスラーム共同体の一部であ
ることを保っているんでしょう?」

答え「一般的には儀礼と家族でしょうね」

問い「捕虜にされたイラク人の人々が、イスラームでタブーとされている豚肉やお酒
を無理やり飲まされるという身体的にも精神的にも苦痛を与えられていると聞いたの
ですが、侮辱された彼らは今後イスラム教徒やめなければいけないのですか。」

答え「イスラームでは無理強いされたことは、殺人以外の全てを免責しますので、何
の問題もありません。第一、無理強いでなくても酒を飲んでも豚を食べても、アッ
ラーフを信じている限り、イスラームをやめることにはなりません。」

問い「なぜ一神教のイスラム教が『最後の審判』などを祈るのですか」

答え「祈るのではなく、アッラーフが『最後の審判』がある、と仰ったので、『最後
の審判』を信じているのです」

問い「未婚の男女が性行為をすると火刑に処せられるのはイスラム教ですか」

答え「いいえ。イスラームでは鞭打ちの上で、所払いです」

問い「イスラームの人々は戦争の家へテロ行為を起しても問題はないという考えでも
あるのですか」

「戦争との家との間に和平条約が結ばれておらず、カリフの宣戦布告、出撃命令があ
ればかまいません」

問い「法というものは弱者を守るものであると私は考えています。私の考えはイス
ラームの人々には批判されてしまうのでしょうか」

答え「いいえ。そのような『法』がシャリーア以外にはない、ということです。」

問い「結局、イスラームにはデモクラシーはなじまないのか」

答え「国民が1000人を超える共同体にはデモクラシーは不可能です。」

問い「盗人は手を切られるといいます。なのに彼らの住む町がカギだらけなのは何
故。」

答え「盗人の手を切るのは、鍵がかかって保管されている物品を盗んだ場合だけで
す。だから鍵はかけないといけません」

問い「利子はとってはいけないといいます。なのにアラブ商人のエゲツなさは有名で
す。」

答え「利子を取ってはいけないのは、貧しくて困っている人から元本を取り戻すだけ
でも酷なのに更にそれ以上を取り上げるからです。商人がいくらえげつない商売をし
ても、買い手に金があり、自分で満足して買うなら何の問題もないでしょう。えげつ
なく儲ける姿は見えても、彼らがどれだけ気前よく貧しい人々に施す姿が見えないの
は日本人の心の貧しさを表しています。」

問い「少し聞き取りにくかった」

答え「聞き取りにくかったのは申し訳ないと思います。もともと舌足らずな上に、
年々呂律が回らなくなってきており、授業が出来なくなる日もそう遠くないように思
います。良かったですね。私がまだ話せるうちに話を聞けて」

問い「最初にあんな話を聞かされると聞く気がうせた。前回の授業との格差があまり
にも激しかった。」

答え「異文化に触れるというのはいろいろな体験をすることです」

問い「教えを自分なりに解釈して、善悪を判断したりしないのですか?」

答え「講義の最初に言った通り、いろいろ解釈して分からないことだらけです。善悪
の基準がこれだけはっきり規定されていても、具体的な事柄を決めるのは大変なので
す。自分で無から全て決められるなど、とんでもない思い違いです」

問い「イスラーム教徒しか裁かれないのだろうか」

答え「イスラーム教徒でない人間は、イスラームを受け入れなかったことを裁かれま
す」

問い「回心を必要としないけれど、公的な部分の法を広めるとはどういうことでしょ
うか」

答え「殺人、強盗、窃盗などの刑法を守らせ、税金を払わせる、ということです。今
の日本と変わりませんね。」

問い「個人的な質問ですが、ある宗教の信者でありながら、その宗教と客観的に(学
問的に)向き合うことはできるのですか。」

答え「日本人であっても日本の研究ができるならできるでしょう。」

問い「ムスリムにとってイスラム教徒とは法なのでしょうか?それとも心の支えなの
でしょうか?または他のものなのでしょうか。」

答え「生きる指針であり、支えでもある、ということでしょうが、イスラーム世界で
は、それ以前に自分が生まれ育った当たり前の存在です」

問い「ムハンマドみたいな預言者が今現在の世界に現れて新しい神の言葉を預かる、
ということはないのですか」

答え「ムスリムは『ない』、と信じていますが、理論的には可能ですので、信じないなら、一
つ一つ偽預言者であることを実証していく必要があります。」

問い「でも『イスラームの家』の外が『戦争の家』という表現法は少し抵抗がある。
結局、イスラーム以外は否定されているのではないか、と少し感じてしまった」

答え「そうでしょうね。それが自然な感じ方だと思います。」

問い「イスラームをイスラーム教というのか、いわないのか」

答え「どちらでも良いでしょう。文脈次第で使い分けてください」

問い「ハマスやアルカイダの行動派、イスラームの倫理規範に逸脱した行動をとって
いるのでしょうか。それともイスラームに狂信的過ぎる、ということなのでしょう
か。」

答え「預言者ムハンマド以外は、誰であれ、イスラームから多かれ少なかれ逸脱して
います。彼らが特別ということはありません。」

問い「イスラームは民主主義であるのか」

答え「違います」

問い「先生は豚肉を食べないのですか。お好み焼きの豚玉は食べないのですか。ラマ
ダン中は先生もラマダンなさるのですか。厳しい質問になるかもしれませんが質問さ
せていただきます」

答え「もちろん食べませんし、断食もします。ちなみに豚食の禁止とラマダーン月の
断食は、最もよく守られている戒律で、かなり不真面目に見えるムスリムでも、日に
5回の礼拝はしなくてもラマダーンの断食は守りますし、酒は飲んでも豚は食べませ
ん。」

問い「世界がイスラム共同体に同化していかない存在ならイスラム信仰体は世界と敵
対していくのですか。たとえば武力によって」

答え「状況次第ですね」

問い「現代の世の中でのイスラム教はどのようなものなのか?変化は起きているのか
?」

答え「どんどん悪くなっていきそうで嫌ですね。それはイスラームだけではなく世界
全体がどんどん悪くなっていくからです。」

問い「力というものは、どれもきたえて伸ばすものだと思います」

答え「鍛えれば将来伸びるとしても、今の力は決まっている、ということです。力が
伸びれば、その時点でそれに応じて義務も増えます」

問い「ゆっくりしゃべるイスラム人はいますか」

答え「あまりいません」

問い「イスラーム教徒によっては善悪も自然と同じようにあるものとして考えられて
いるのでしょうか」

答え「ムウタジラ派などがそう考えます」

問い「先生は礼拝の時間は必ず礼拝をするのですか?もし旅行でディズニーランドに
行ったらどうするのですか?また普段はどうしているのですか?」

答え「預言者ムハンマドが許したケース、つまり寝過ごした場合と忘れていた場合、
それに時間を間違えた場合を除き、時間通りにやらなかったことは入信以来一度もあ
りません。ディズニーランドには20年ほど前に一度行ったきりですが、普通に地面
に絨毯を敷いてやったはずです。乗り物に乗っている間に、定刻が過ぎそうになった
場合には、立ったまま、座ったまま、目の動きでやる場合もありますが、ほとんどの
場合は、どこでも人目につかぬ場所を探して絨毯を敷いてやります。もっとも私の場
合、おそらく全礼拝の90%以上は家か研究室でやっていますので問題は殆どありま
せん。」

問い「カリフとは統治者の頂点に立つ人ですか、それは誰が決めるのですか」

答え「本来はムスリムが合議で決めますが、武力征服によって自分でなる場合もあり
ます」

問い「異国人が客人である以上、イスラム世界で外人がイスラム世界のために何か
を行うなどという考えから自体がありえないのでしょうか」

答え「客人としての礼節さえわきまえていれば、どんなことも可能です」

問い「統治者、非統治者は生まれながらに決まっているのではないのですか」

答え「いいえ」

問い「善悪の基準が心にあるのでなく、アッラーにより創造されているなら、なぜそ
のような世界で戦争などがおこるのでしょうか」

答え「基準があることとそれを守ることはまったく別のことだからです」

問い「世界は一瞬ごとに創造されているというのは、ついさっきの自分の行為も時間
とともにきえているということにつらなるのでしょうか」

答え「その通りです」

問い「飲酒した人、Sexした人に罰を与えるのは統治者の責任というが、統治者は一
人しかいないのに処理しきれるのか」

答え「統治者の権限で、部下に命令して裁判、刑の執行を行わせます」

http://homepage3.nifty.com/hasankonakata/sakusaku/5_1.htm
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