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「最愛ブッシュに首相似てきた」ムーア監督インタビュー
米ブッシュ政権を痛烈に批判した映画「華氏911」は、公開から約2カ月で、全米で2000万人を超す観衆を集めた。監督のマイケル・ムーア氏が18日、朝日新聞のインタビューに応じ、映画に込めた思いを語った。
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制作の意図について、ムーア氏は「映画で描こうとした本当の悪漢は、ブッシュじゃない。米の主流メディアだ。ブッシュがイラク相手に戦争を始めたことには驚きもしないが、メディアはチアリーダーになって戦争をあおった。怒りの矛先はむしろそっちに向いている」と語り、米メディアを批判した。
小泉首相が「華氏911」を「政治的に偏っているから見たくない」と語ったことについては「自国民よりブッシュを愛していると公言したようなものじゃないか。知的な人間なら、様々な意見や真実に好奇心を持つものだろう? 真実に目を伏せ、無知なままでいたいだなんて、最愛のブッシュに似てきたね」と皮肉った。
マイケル・ムーア監督のもとには、今も1日に約6000通の電子メールが届く。一方で200以上の米の映画館が「華氏911」の上映を拒否するという、過去に例のない記録も打ち立てた。喝采(かっさい)とブーイングの渦中にある。
「制作の意図は観客に伝わっていると思う。映画館から出てきた人々の感想は『ブッシュは何て悪いやつだ』じゃない。『初めて見聞きすることばかり』だ。イラク戦争は戦うに値する戦争だったのかどうか。考えるのに必要な情報を、主流メディアが伝えなかったからだ。新聞やテレビは一体何やってたんだ、と観客は怒っている」
「私の仕事は、人々が見ないでいたものを目の前に突きつけることだ。主流メディアのエリート連中には、恥じ入ってほしいものだ。あなた方が怠けてしなかったことを、こんな野球帽をかぶった高卒の男(ムーア氏本人)が世界中で映像を掘り起こして、補っているんだから」
ムーア監督は89年、ゼネラル・モーターズの工場閉鎖で荒廃した町と、同社社長の華やかな生活を対比・風刺したドキュメンタリー映画「ロジャー&ミー」でデビュー。03年には銃社会を告発した「ボウリング・フォー・コロンバイン」でアカデミー長編ドキュメンタリー賞を受けた。アポなしで対象に肉薄する「突撃スタイル」を持ち味とする。
「華氏911」は米の社会現象になる一方、「ブッシュ批判に都合のいい場面をつぎはぎしただけの政治宣伝」「事実関係に誤りがある」といった批判も多い。
「これは事実を積み重ねたドキュメンタリー映画。プロパガンダ(政治宣伝)じゃない。スクリーンでは、ブッシュもラムズフェルド(国防長官)も、無名の兵士も、あるがままに登場させた。新聞やテレビが、それこそさんざん行ってきた戦争プロパガンダの解毒剤でもある」
日本については、こう問いかける。
「戦争の恐怖を最も知っている日本が、イラク戦争に加担する道を選んだのは、まったく悲しいことだ。第2次大戦後、日本は世界で、平和のたいまつのような存在だったはずだ。60年大事にしてきたものを、ブッシュへの貢ぎ物にしてしまった。それで日本はより安全になったのかい」
ムーア氏を突き動かすものは何なのか。
「目下の目標はブッシュを政権から追い落とすことさ。だが最終的には、一握りの金持ちの支配からアメリカを救い出したい。超大国といいながら、子供の5人に1人が、まともな教育も医療も受けられない貧困の中で暮らしている。イラク戦争も、戦場で戦っているのは貧乏人の息子や娘だ。戦争を仕掛けた閣僚や議員、戦争で利益を得る石油企業の重役の息子らが、真っ先に行くべきなんだ。徴兵制は復活させるべきだ。そうすれば戦争はうんと減るだろう」
(08/20 17:40)
http://www.asahi.com/culture/update/0820/002.html
写真:インタビューに答えるマイケル・ムーア監督=トラバースシティーで
http://www.asahi.com/culture/update/0820/images/cul0820001.jpg