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(回答先: 「9.11報告書」を読みやすくして提供するブロガーたち【hotwired】 投稿者 クエスチョン 日時 2004 年 9 月 26 日 14:55:49)
ネットで無料公開の『9.11委員会報告書』、書籍版もベストセラー【hotwired】
http://hotwired.goo.ne.jp/news/news/business/story/20040924104.html
Joanna Glasner
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2004年9月20日 8:50am PT ベストセラー・ランキングのノンフィクション部門で7週連続1位という事実を目の当たりにしても、出版関係者は今なお、『9.11委員会報告書』のヒットに困惑気味だ。
この本は、米国の同時多発テロに関する国家調査委員会(通称:9.11委員会)の報告書を一字一句そのままで印刷し直した、516ページにもおよぶペーパーバックだ。通常この種の本が米国民の読書リストのトップを維持することはない。しかも、この報告書は他のたいていの政府発表文書と同様に、オンラインで無料で入手可能なのだ。
それでも、委員会のウェブサイトにアクセスして報告書をダウンロードする作業よりも、10ドル程度を支払って書籍版を購入することを選んだ人は、60万人以上を数える。書籍版の公式出版元である米W・W・ノートン社にとって、これは予想外の大ヒットとなった。
報告書のオンライン公開日と同じ7月22日(米国時間)に書籍版を売り出したノートン社の広報担当者は、「この本がこれほどまで売れるとは誰も予想していなかった」と言う。同社は8月から、詳細な索引を付けたハードカバー版の販売も開始した。
『9.11委員会報告書』は、国家のきわめて重要な問題を驚くほど読みやすくまとめた文書であり、政府予算による著作物の歴史の中で独自の地位を占めることになった。さらに、オンラインでの無料配布が書籍版の売上におよぼす影響について、明確な特徴を示すケーススタディーとしての役割も果たしている。ここから教訓が1つ得られた――何かをオンラインで無料で読めるからといって、そうしたいと思う人ばかりではない。
「あれをオンラインで読む(日本語版記事)と思っただけで、私は頭がくらくらする……プリントアウトして読もうと思う人もいないだろう。いろいろ考慮すると、書籍版を買った方が安くつく」と語るのは、出版業界の市場調査サービス『イプソス・ブックトレンズ』の主任アナリストを務めるバリー・ラパポート氏。
ノートン社の広報担当者は、同社の歴史の中で、公的な文書が過去にこれほどまでに飛ぶような売れ行きを見せた例は思い当たらないという。
近年もっとも記憶に残っている例としては、1998年に出版された『スター報告書』が一時ベストセラーとなったことが挙げられる。この報告書は、クリントン大統領(当時)の不行跡に関するケネス・スター独立検察官の調査結果を、ポルノまがいの細部に至るまで時系列で記したもので、やはりオンラインで無料で入手可能だった。しかし、インターネットの接続人口が今より少なく、ブロードバンド接続も珍しかった(日本語版記事)ので、ダウンロードという選択肢は今よりも敷居の高いものだった。
今回の『9.11委員会報告書』の堅調な売れ行きは、これまで自分の著作を書籍版とオンライン版の両方の形式で発表したいと出版社に働きかけてきた作家らにとって、主張の新たな拠り所となっている。多くの出版社は、本の抜粋を無料で公開しているが、今のところ作品全体を積極的にオンラインで無償提供している出版社はほとんどない。
「従来の定説はもちろん、無料で配布すると誰も買おうとしなくなる、というものだった」と語るのは、生物学者で作家でもあるピーター・ワッツ氏。同氏は自著の版元である『トー・ブックス』に、自分の小説をオンラインで無料で公開させてくれるよう要請してきたが、受け入れられなかった。
ワッツ氏はそれでも自身のウェブサイトで短編を無料で公開しており、これまでの定説には異議を唱える。ある小説に無料でアクセスできれば、読んでみようとする人が増える。ひとたび読み始めて興味をそそられた人は、おそらく書籍版を買ってくれるだろう。
「本を丸ごと提供しても、その小説をオンラインで読みたいと思うのは、生まれつきマゾ気質の人だけだろう。ほんの数分で目が充血してくるはずだ」とワッツ氏は語る。
とはいえ、電子書籍とその閲覧用端末の業界はまだ立ち上がったばかりだ。ラパポート氏は、電子出版社がやがて、眼精疲労を大幅に和らげる技術を開発できると考えているが、現状では、本格的なミステリーをPDAやノートパソコンの画面でちまちまと送りながら読みたいと思う人は多くないと話す。だが、辞書や事典など参照のための文献やノンフィクション分野では、電子書籍への需要が高まっていくと、ラパポート氏は予測している。
誰も小説をオンラインでは読みたがらない、というフィクション分野の定説にも多少の例外が存在する。SF小説『ダウン・アンド・アウト・イン・ザ・マジック・キングダム』の著者であるコリー・ドクトロー氏によると、この作品はオンラインで無料提供を開始した2003年1月から40万回以上ダウンロードされている(日本語版記事)という。
この小説にはハードカバー版もあり、こちらも、少なくともSF作家一般の控えめな期待を上回る勢いで売れ続けているとドクトロー氏は語る。同氏の推計では、ハードカバー版で1万部近くがすでに売れており、さらにペーパーバック版で1万部以上が販売店向けに出荷されているという。
ドクトロー氏は、自著の購入者のうち何割が、事前にこの小説をインターネットでつまみ食いしたのかは明確でないとしながらも、オンラインでの無料提供が売上に貢献したと確信している。もし本の売上が散々だったとしても、同氏はなお、自分の小説をオンラインに掲載して、読者に入手しやすくすることには意味があると考えている。
「私の考えでは、これは後世に何を残すかについての、また芸術的欲求の充足についての問題になるはずだ。SFの世界に金目当てで入ってくる人は、あまり努力をしていない」とドクトロー氏は語る。
『9.11委員会報告書』に話を戻せば、ベストセラー・ランキングのノンフィクション部門でのトップの地位はそろそろ危うくなりそうだ。読者は、超党派の委員会の見解よりも、明白に特定の党派に偏った政治的主張のほうを選び始めている。『ニューヨーク・タイムズ』紙のベストセラー・ランキングのペーパーバック・ノンフィクション部門では、『9.11委員会報告書』は9月第3週まで1位を維持しているが、『USAトゥデイ』紙のベストセラー・データベースでは、いくつかの小説と、ジョン・ケリー大統領候補の軍歴を攻撃する『アンフィット・フォー・コマンド』(司令に不適格)に水をあけられている。
[日本語版:江藤千夏/高森郁哉]
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