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毎日新聞 2004年11月28日朝刊
今週の本棚 山内昌之 評 『評伝 北一輝 T〜X』松本健一著(岩波書店)
天皇と国民の直結を試みた≪革命原理≫
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(最後の方を一部だけ)
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北は、朝鮮を日本の「属邦」や「植民地」でなく「日本帝国の一部」だとし、日本人と朝鮮人が「異民族」として対等の立場にあるとも論じていた。
皇太子(後の昭和天皇)暗殺を企てた朴烈(パク・ヨル)らが北の懐に飛び込んだのには根拠があったのだ。北の『改造法案』は石原莞爾の「東亜連盟」の昭和維新論とともに、戦前の朝鮮民族が辛うじて同意できた考えだという松本氏の説は検討に値するだろう。
また、北に私淑した西田税はもともと、秩父宮と陸士の同期であり、西田は日本の無産者階級が「極度に虐げられて」おり、「げに、日本改造すべくんば天皇の一令によらざるべからず」と宮に語っていた。
・・・・・・・・・・・・(中略)・・・・・・・・・・
北は、二・二六(事件)が起こると安藤輝三大尉に「マル」(金)はあるかと電話で聞いている。大事にあたって金が必要だというのは、中国革命を体験した政治リアリズムに由来するのだ。リアリズムは、日米戦争がソ連の参戦をうながし「世界第二大戦」につながり「破滅」を招くので断固回避すべきだという主張を生み出していく。
これほどの現実主義者の北は、青年将校の決起を単純に扇動したわけではない。北は、青年将校らが外部の誰にも自体の収拾をあらかじめ頼んでいなかったことを聞いて「しまった」と思ったらしい。
北は、法廷にあっても、青年将校が自分の『改造法案大綱』を信じたという理由から極系になったのなら、
「青年将校を見殺しにすることができません故、承認致します」
と罪状を争わず、彼らと同じく死刑の判決を自ら求めたのである。
松本氏の感想は多くの読者のものでもあろう。
「ここには、じぶんのことを信奉してくれた青年将校たちとともに死に赴きたい、という北一輝の人間性が明らかにでていた」
と。
北にとってのせめてもの慰めは、裁判長の吉田あつし少将の公正さだった。吉田は、第1回公判で北について「柔和にして品よく白皙。流石に一方の大将たるの風格あり」と手記に印象をのこしている。
法務官(検事)が死刑を求刑すると、事件の最大の責任者は「軍部とくに上層部の責任である」暗に純真な将校たちを死に導いた真崎勘三郎大将らの野心に「許し難きところ」があると示唆したのだ。
≪敵≫の裁判長や刑務所長からも信頼と敬意を寄せられた北の人間性と思想性を多面的に描いた傑作といえるだろう。
(終わり)
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(感想)こんな大人物は、今の日本には見当たりません。小泉みたいな、セコイ奴ばっかりですわ。
えっと、肝心の≪革命原理≫の解説については、URLをご覧ください。