現在地 HOME > 掲示板 > 雑談専用10 > 733.html ★阿修羅♪ |
|
Tweet |
(回答先: 『思想劇画 属国日本史 幕末編』 投稿者 エンセン 日時 2004 年 9 月 07 日 10:12:27)
エンセンさん、『思想劇画 属国日本史 幕末編』のご紹介ありがとうございました。その後、副島隆彦氏のホームページ[学問道場]を訪ねてみたところ、須藤よしなおさんという学問道場のメンバーの方が『思想劇画 属国日本史 幕末編』の一部を紹介していました。
「585」本日発売のマンガ本『思想劇画 属国日本史 幕末編』(早月堂書房刊)の中身を一部公開。発刊記念講演会『司馬遼太郎をぶった斬る!』にもお越し下さい。2004.09.04
http://snsi-j.jp/boyakif/diary.cgi
ただ、エンセンさんの紹介してくれた『思想劇画 属国日本史 幕末編』の一部を拝見したものの、副島氏の「バカヤロー! ふざけたことをぬかすな!」といった台詞に代表されるように、品のない副島氏の言葉のオンパレードといった感があり、故手塚治虫の作品を知る一人として、『思想劇画 属国日本史 幕末編』は手にする気が起こりません。内容的には良いものだけに大変残念だと思ったのですが、『思想劇画 属国日本史 幕末編』は同じ副島氏が著した『属国・日本論』(五月書房)の「幕末・明治期編」を劇画化したものと後に知り、取り敢えず『属国・日本論』をクロネコヤマトのブックサービスを通して取り寄せて一読したところ、予想に反してなかなかの良書でした。特に深く共鳴したのは以下のくだりです。機会があれば拙稿「近代日本とフルベッキ」で紹介させていただく予定です。
+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++
政治の流れを大きく背後で動かしているのは、軍事力とそのための資金である。このリアルな事実を抜きにしてあれこれ見てきたようなことを書いてある本は駄本だ。現実の政治を知らない学者たちの、厳密な文献考証だけでも駄目である。どれだけの軍事援助をどのような勢力が行ったのかを見きわめようとするリアルな眼を持たなければ、幕末維新期の謎を解明することはできない。 『属国・日本論』P.200
+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++
このくだりを読んでピンと来たので、同書を最初から最後まで目を通してみました。そうした中で思わず息を呑んだのは、「なぜ佐藤栄作元首相はノーベル平和賞を受賞したのか」という題名の章でした。佐藤栄作元首相のノーベル平和賞受賞した理由と、それが20年後のソビエト連邦崩壊結びつくまでのプロセスを、ものの見事なまでの副島氏のインテリジェンスで以て炙り出している箇所を読み、思わず唸った次第です。
+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++
私は、歴史もの評論家が過去の事実を並べたてて講釈をするように書いているのでない。ことはまさに自分がいきたこの二十数年の世界の動きは、本当はどうだったのか、に関わる私自身にとっての大問題である。私は世界史の波に洗われて、木の葉のように翻弄された自分の、躓きの多かった青年期に重ね合わせて、沖縄返還→ニクソン訪中→米中合作→佐藤氏のノーベル平和賞→ソビエト衰退を一連の出来事として今、ふりさけ見ているのである。
これは決して私一個の感慨ではなくて、おそらく同時代を生きた日本人ほとんどを襲う共通のものであろう。一言で言えば、大きな世界史のうねりの中で自分たちは、いかに世界の広さを知らずに国内だけの視野でものを考え、行動して来たことであったか、という反省である。私は、自分とは何者であり、自分たちを動かして生かして来た大きな力の正体の一部に触れたような気がしている。今や私は、自分の出生の秘密を知ったような気持ちだ。自分とは何者か、すなわち、自分のアイデンティティを理解し、自分の過去の三十年間の思考と行動に大きく影響を与えた力の発生源を知って、驚愕したのである。 『属国・日本論』P.93
+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++
ただ、二カ所惜しいところがありました。
一つは、「甘粕雅彦(大杉栄と伊藤野枝を殺害した軍人でもある)」(P.233)とある点です。確かに通説ではそうなのですが、大杉栄と伊藤野枝を殺害した真の犯人は甘粕雅彦ではないという説もあるのです。そのあたりの詳細は『賢者のネジ』(藤原肇著 たまいらぼ出版)の「第八章 大杉栄と甘粕雅彦を巡る不思議な因縁」に書かれていますので参照願います。
二つは、米国のシンクタンクを分類するのに、リバータリアン保守派=iP.120)という表現を副島氏が用いている点です。しかし、欧米の識者であれば、個人であれシンクタンクのような組織であれ、自らをリバータリアンと名乗るような危ないことはしないはずです。「本当のリバータリアンというのは、自身がリバータリアンであることを徹底的に隠すのが本来の姿であり、自分がリバータリアンであることを公にすれば、命が幾つあっても足りない」というのがリバータリアンという存在であると、知人の在米の某識者が語ってくれたのを思い出します。