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薬害エイズ 厚生省ルート
25日に控訴審判決
薬害エイズ事件「厚生省ルート」で、業務上過失致死罪に問われた元厚生省生物製剤課長松村明仁被告(63)に対する控訴審判決が二十五日、東京高裁で言い渡される。同被告はエイズウイルス(HIV)が混入した非加熱製剤の販売中止・回収を命じなかったとされる。危険性を予見しながら回避しなかったという官僚個人の「不作為」が、罪に問われたのは前例がない。有罪とした一審判決も、危険性の予見時期をめぐって起訴事実の一部を無罪としており、二度目の司法判断が注目される。 (社会部・橋本誠)
■再び問われる『不作為の罪』
五百人以上が死亡した薬害エイズ事件で、検察当局は一九九六年、松村被告と血友病治療の権威とされた元帝京大副学長安部英被告(88)、製薬会社「ミドリ十字」(現三菱ウェルファーマ)の歴代三社長を業務上過失致死罪で起訴した。
事件は三ルートに分かれており、安部被告は帝京大病院で八五年五−六月、非加熱製剤を投与され、HIVに感染した血友病患者の死亡について刑事責任を問われた(帝京大ルート)。
一方、旧ミドリ十字の元三社長は大阪の病院で八六年四月、同社の非加熱製剤を投与され、死亡した肝臓病患者について起訴された(ミドリ十字ルート)。
松村被告は事件当時、厚生省課長として権限があったにもかかわらず、医療機関に非加熱製剤の投与を禁止させたり、旧ミドリ十字に製品の販売中止・回収を命じたりする義務があったにもかかわらず、怠ったとして、両方の事件で罪に問われた(厚生省ルート)。
松村被告の裁判では(1)権限があったか(2)感染の危険や被害を予測できたか(予見可能性)(3)回避措置を取れたか―が争点となった。一審判決は松村被告の「不作為」を罪と認定。ただ、HIV感染や死亡の予見可能性が高まった時期を「八五年末ごろ」と判断。そのため、帝京大ルートについては無罪とした。
禁固一年執行猶予二年の判決を受け、被告側、検察側双方が控訴。検察側は控訴審でも予見可能性の時期を「八四年十一月ごろ」とし、「危険性が学問的に確立するまで何もしないのは行政官として失当」と主張した。
弁護側は「二人の患者の投与時期の間で、エイズ研究に一定の進歩があったのは否定しないが、刑事責任を左右するほどの相違はない」と主張。権限についても「主管ではなかった」として無罪を主張している。
旧ミドリ十字の元三社長は有罪となった(一人上告中)が、帝京大ルートの安部被告は一審で無罪となった。検察側が描いた「医・業・官」の構図の一角が崩れ、検察側は控訴したが、東京高裁は昨年、安部被告の健康状態の悪化を理由に公判を停止した。
東京HIV訴訟弁護団や被害者は、「(松村被告の裁判で)帝京大ルートを無罪とした一審判決が見直されれば、安部被告の無罪判決も事実上覆る」と注目する。
■約1400人が和解済み
薬害エイズは一九八〇年代、血友病患者を中心に千四百人以上が感染、五百人以上が死亡した戦後最大級の薬害事件。被害者らが八九年、国と製薬会社に損害賠償を求めて一次提訴。九六年、国と製薬会社が、原告一人当たり一時金四千五百万円を支払うことで和解した。
その後、全国で提訴が相次ぎ、原告は約千四百人に達した。血友病患者だけでなく、夫婦感染や母子感染の被害者にも広がった。原告のほとんどは九六年の和解基準で和解に応じている。提訴した人のうち、すでに五百六十人以上が死亡した。
■薬害エイズ事件の経過
1981年6月 米国の防疫センター(CDC)が初めてエイズ症例を報告
82年7月 CDCが血友病患者のHIV(エイズウイルス)感染を報告
7月 帝京大病院で血友病患者が死亡。後に日本初の血友病患者のエイズ発症者と認定される
84年3月 厚生省エイズ研究班が最終報告で、非加熱製剤の使用継続を決定
7月 松村明仁被告が厚生省生物製剤課長に就任
9月 安部被告が米国に依頼した検査で、非加熱製剤投与の帝京大病院の血友病患者48人のうち23人がHIV感染と判明
85年5月〜6月 帝京大病院の血友病患者が非加熱製剤を投与され、HIV感染(帝京大ルート)
12月 厚生省が加熱第9因子製剤を承認。中央薬事審議会で「加熱製剤承認後は非加熱製剤を速やかに回収するよう厚生省が指導すべきだ」との意見が出る
86年1月 ミドリ十字が加熱第9因子製剤の販売を開始。非加熱製剤も継続出荷
4月 関西の大学病院の肝臓病患者が非加熱製剤を投与され、HIV感染(ミドリ十字ルート)
96年8月 東京地検が安部被告を逮捕
10月 東京地検が松村被告を逮捕
2001年3月 東京地裁が安部被告に無罪判決
9月 東京地裁が松村被告に有罪
http://www.tokyo-np.co.jp/00/kakushin/20050322/mng_____kakushin000.shtml