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(回答先: 正食-その6 投稿者 謝寅 日時 2004 年 11 月 12 日 20:48:56)
メンドリの記
私が中学生のころ,ウチに1羽のメンドリがいた。ふうさいのあがらない灰色の中年のトリだった。だんだんタマゴを生まなくなってさたのであすあたりツブして食おうかと両親と話していると翌日あたり,ポロリと1個だけ卵を生むのだ。そしてまた長く生まない日が続く。ヤッパリ.ソロソロ,ヒネろうかといいだすとまた1個だけ,ポロリと生むのである。どうもトリに話を聞かれているみたいだということになり,ツブすにツブせないでいるある黄昏どき,コトコトと台所の戸を叩く音がする。ガラス越しに裏庭をみたがダレもおらぬ。再びハシを動かしかけるとまたコツコツとノックの音。またのぞく。ダレも居ない。三度目のノックにはさすがに気味わるくなりガラリと戸を引き開けると,居た。
すぐ目の下に,中年のメンドリが小首を傾げてオレを見上げていた。
目が合うとくるりと踵をかえして鶏小屋の方へ歩いてゆく。ときどきふりかえってオレがうしろに続いているのをたしかめながらトコトコとゆく。まるでホントについてこいといっているみたいだ。そこでハッと思いあたった。そうか。もう日が暮れるからイヌなどが這入らぬよう小屋の戸を閉めてくれと彼女はいっているのだ。よしよしわかった。わかった。
戸をしめてやるとバタバタと止まり木にあがり安心したように羽根の下に首をつっこむ様子がなんともいとしい。それからというもの,夕暮れどきオレがトリ小屋の方へゆきかけると放し飼いの彼女はどこにいてもかけよってきて止まり木へゆく。思わず頭をなでてやりたくなる。ヨシヨシ・・・・・・・・・・・。
××
しばらくすぎたある夏の日のこと。むんむんするセミの声に混じってふと,「助けてえ」 という女の悲鳴が頭の中にひびいたような気がした。傍にいた母の顔をみたが聞こえのはオレだけみたいだ。「助けてえ」とまた一声。こんどは確かにトリ小屋の方角だ.
なぜかはわからぬながら心せくまま手繰り寄せられるように鶏小屋へ急いだ。みれば,何とあのニワトリが宙吊りになっているではないか。入口の両偶の柱に頭と尾を巻きつけた大きな蛇が胴体で彼女の細い首を絞めあげていたのだ。髪の逆立つ思いでオレは剪定鋏をつかんだ。オンドリャー,どうするかみていろっ。夢中でメンドリの両側からへビを三つに切り離し,落らた頭を踏み躙るとハサミをおっぽり出して彼女を抱き上げた。
トリは白目をむき,かわいそうに絞めつけられた首の部分は段がついてエンピツのように細くなっている。オレはけんめいに首をモミほぐした。人工呼吸もやった。そうするうち彼女はうすく黒目をあけ, オレを見た。そしてクエーッと鳴いて涙をこぼしながら激しく咳きこんだ。女が喜ぶと嬉しいという字になるのだがメンドリが息をふきかえしたときオレは思わず彼女をひしと抱きしめてしまった。ヘビに襲われたときメンドリは薄れゆく意識を振り絞って必死にオレを呼んだのにちがいない。
このことがあってからトリが卵を生まなくてもツブそうという言葉は二度と私たちの口の端にのぼることはなかった。
やがて年老いて遠く見送った彼女のなきがらはいまもウチの墓地の片スミに眠っている。
メンドリの記
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--丁度、投稿している最中にエントランスが変わった。ちょっとビックリ!--