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9月16日(ブルームバーグ):日本銀行の植田和男審議委員は16日午後、静岡市内で記者会見し、「景気がややはっきりと減速、調整局面に至る場合には、やはり追加緩和策を打てるのかどうか、どういう策があるのかは、真剣な検討の対象になると思う」と述べた。
植田委員はそのうえで「その際、どういう政策手段があるかについては、これまでいろいろ議論されてきたなかから見つけることになると思うが、今そのどれを使うかを話すのは適当ではないし、また新しいやり方が見つかる可能性も残されていると思う」と述べた。
植田委員は、現在の景気については「減速の兆候がある」と指摘。そのうえで、「可能性のある景気の減速は、不況にはならず、潜在成長率より少し上くらいのところに成長率がだんだん下がっていき、その辺で安定するという意味での減速と、景気が少しいったん後退局面に入る減速と両方ある」と述べた。
植田委員はさらに「前者においては、潜在成長率を一応上回る姿を想定しているので、普通に考えればどこかで物価は上昇し始めると思う。ただし、前者においても、生産性上昇が高い率で続いたり、非正規雇用へのシフトがまだまだ続いたりした場合は、成長率がそこそこ高くてもなかなか物価に結び付かないケースが考えられる」と語った。植田委員はまた、日本の潜在成長率について「漠然と頭の中にあるのは2%前後ぐらい」との見方を示した。
ゼロ%以上を引き上げるのも1つの選択
植田委員はそのうえで「景気循環的な意味でちょっと調整という局面に行く可能性もゼロではないと思っている。ただ、その場合でも現在見渡せる範囲では、非常に深刻な調整に入る可能性は少ないのではないか。したがって、インフレ率はその調整局面で大幅にマイナス幅を拡大する可能性も見にくいとみている」と述べた。
植田委員はさらに、今後の景気と物価の動向について「景気がいったん下がって、その後の(景気)上昇局面でインフレ率がはっきりプラスになることも考えられるが、(景気が)単調にこのまま良くなり、インフレ率がそのままプラスになる可能性も十分あり得る」と指摘した。
消費者物価指数の前年比上昇率が安定的にゼロ%を上回るまで量的緩和政策を続けるという約束について、ゼロ%以上を0.5−1%に引き上げるべきだとの声があることについて「一つの選択肢だと思う。完全には否定しない」と言明。
そのうえで「ある種ののりしろみたいなものだが、ここを上回れば自動的に解除という、かなり定量化した機械的なルールで対応できた方が透明性は高いが、現実問題としては難しい。私は、今は裁量的な判断の余地を残しておかなければならないと考えている」と語った。
予想が下に外れるコスト
植田委員は講演で「日本経済のおかれた現状では、当面インフレ率予想が下に外れるコストの方が上に外れるコストより大きいと見られる。こうした点を念頭に置きつつ、今後の経済動向予測、金融政策決定に当たりたい」と述べたことについては、「インフレ率やインフレ予想はプラスになったが、景気はピークを過ぎつつあって、先行き心配なときに、出口を出られるか」と指摘。
そのうえで「来年度のインフレ予想はプラスになったが、どうも来年度のどこかが景気のピークで、その次の年を考えてみると、インフレ率がもう少し下に行き、いったんデフレに戻ってしまうリスクもありそうなときは、そういう点に配慮して慎重に行動すべきではないか、という意味だ」と述べた。
会見の主な一問一答は次の通り。
――講演で潜在成長率に触れたが、日本の潜在成長率はどの程度だと見ているか。
最近は私独自で計算し直してみたことはないが、漠然と頭の中にあるのは、2%前後くらいだと思っている。
――日本経済は既に減速していると判断しているのか。
どのデータを見るかによるが、どのデータを見ても、ある程度の期間のトレンドを見ないといけない。ここまでに出たデータからは、減速の兆候があるというくらいしか言えない。
――テイラールールで見て、日本の適切な政策金利はどの程度だと見ているのか。
前提の置き方次第なので、まだまだマイナスというのも出せると思うし、かなり無理をすれば若干プラスというのも出せなくもないという程度かと思う。
――植田委員は講演で、中央銀行の物価見通しが上下に外れるリスクがあるので、政策運営でリスク管理が必要だと指摘した。この考え方を応用すると、仮に物価予想が下振れたリスクが大きいことを念頭に置けば、「消費者物価指数の前年比が安定的にゼロ%以上になるまで量的緩和を続ける」という約束について、予想が外れた場合の保険として、0.5%程度に引き上げることも必要ではないか。
それが1つのオプションだと思う。ただ、具体例で話すと、インフレ予想が 0.3%や0.4%になったとする。それで解除できるかどうか。0.3%や0.4%という予想にかなり確信があれば、もう一度デフレに戻るというリスクが非常に小さい。そういう場合と3つくらいシナリオがあって、1つは0.3%くらいである、1つはデフレに戻るリスクある、1つは0.3%よりちょっと高いインフレ率になるかもしれない。そういうなかでの平均0.3%では、違うと思う。
さらに言えば、来年は0.3%だが、その辺がどうやらピークであって、その後は下がっていきそうだという場合も、同じ0.3%でいろいろ考えられる。したがって、前もってX%という数字を出し――Xがある種ののりしろ、保険料みたいなものだが――、ここを上回れば自動的に解除という、かなり定量化した機械的なルールで対応できた方が透明性は高いが、現実問題としては難しい。私は、今は裁量的な判断の余地を残しておかなければならないと考えている。
――景気が減速した場合のインフレ率をどのように予想するか。
今、可能性のある景気の減速は、2通りある。不況にはならず、潜在成長率より少し上くらいのところに成長率がだんだん下がっていき、その辺で安定するという意味での減速と、景気が少しいったん後退局面に入る減速と両方ある。前者においては、潜在成長率を一応上回る姿を想定しているので、普通に考えればどこかで物価は上昇し始めると思う。
ただし、前者においても、生産性上昇が高い率で続いたり、非正規雇用へのシフトがまだまだ続いたりした場合は、成長率がそこそこ高くてもなかなか物価に結び付かないケースが考えられる。最後に、景気循環的な意味でちょっと調整という局面に行く可能性もゼロではないと思っている。
ただ、その場合でも現在見渡せる範囲では、非常に深刻な調整に入る可能性は少ないのではないか。したがって、インフレ率はその調整局面で大幅にマイナス幅を拡大する可能性も見にくいとみている。
――量的緩和の出口では、日銀当座預金残高を引き下げていくことと、金利を上げることの両面がある。具体的なイメージはどのようなものか改めて見解をお聞きしたい。また、その時は国債買い入れ額を維持するのかどうか。
出口の時に金利が上がるというのは、出口全体を広くとらえれば、そのどこかで翌日物金利は結局上がることになるだろうという意味だ。そこの至る過程で金利が上がることは起こるし、同時に日銀当座預金残高を現在の高い水準から格段に低い水準に下げていくことも起こる。これがどれくらいの時間的な長さで起こるのか、あるいは起こすのかは、いろいろなやり方がある。
長く時間をかけて当座預金残高を回収するやり方もあるだろうし、極端に言えば1日で回収することも理屈上は考えられなくもない。ある程度まで回収しないと翌日物金利も上がらない。そのなかのどれを選ぶのが適切かは、今これだとは言いにくく、出口に近くになったときの経済・金融情勢に対応して一番良いと思われるものを選びたい。
量的緩和の一環である長期国債の買い入れの扱いについても、出口の技術的な側面をどうするかということの一環として考えたい。いろいろなやり方があるが、そこもそのときの状況に応じて、出口で他にやらなければならないことと併せて決めていきたいと思う。
――その前に、低金利政策の効果と量を出すことによる効果を一度検証しないと、解除する際も政策の論理として難しい点があるのではないか。仮に量を出すことがデフレ払しょくに効果があるとすれば、ゆっくりとしか解除できないかもしれないし、ほとんど効果がないのであれば、技術的な問題に過ぎないので簡単に解除できることにもなる。
解除する前にきちんとした分析をして、これまでの緩和局面でこれだけの効果があった、それがこれくらいの大きさだから解除のスピードはこれくらいが望ましい、というようなきれいな議論なり分析ができる種類の問題ではないかなと思っている。
したがって、効果が小さかったから解除は早くやって良い、あるいは効果がたくさんあったからゆっくりとしたペースで解除するというふうに決め打ちはできない。ある程度そこにリスクがあることを頭に置いたうえで、やや試行錯誤的なやり方になる。出口を出て、閉めてみると、今よりはもう少しはっきり量の経済への影響はどれくらいだったかを分かる面もあるかなと思っている。
――景気が調整局面に入る可能性に言及したが、その場合は追加緩和も選択肢になるのか。
先ほど、景気の減速には2種類あって、潜在成長率をやや上回る程度の水準に成長率が減速していく場合と、もう少し景気循環的に調整局面に入る可能性を指摘したが、前者では基本的にGDPギャップが縮小を続けるわけなので、追加緩和策は必要ないと思う。ただ、それでも物価の上昇に転じるタイミングが非常に後ずれするときにどう考えるかは、悩ましい問題として残る。
後者の景気がややはっきりと減速、調整局面に至るケースになった場合には、やはり追加緩和策を打てるのかどうか、どういう策があるのかは、真剣な検討の対象になると思う。その際、どういう政策手段があるかについては、これまでいろいろ議論されてきたなかから見つけることになると思うが、今そのどれを使うかを話すのは適当ではないし、また新しいやり方が見つかる可能性も残されていると思う。
――インフレ率の予想が下に外れるコストの方が上に外れるコストより大きいのであれば、景気減速の兆候がある今、量的緩和をよりはっきりと長期化させると宣言した方が、長期金利を低下させることによって景気刺激効果も強まるのではないか。
私は先ほど、(量的緩和の出口では)保険的な意味で、ある意味でリスク管理的な意味での考慮が必要だと述べたが、これをさらに長期金利を下げるということになると、「消費者物価指数の前年比が安定的にゼロ%以上になるまで量的緩和を続ける」という約束をもう少し定量化させて、たとえばインフレ率の予想が0.5%になるまで量的緩和を解除しないとか、あるいは1%になるまで解除しない、あるいは他の言い方もあるかもしれないが、定量的にはっきりしたルールを示さないと、なかなか強い長期金利への働き掛けにはならないと思う。
しかし、先ほど言ったように、はっきりとした定量化ができない部分について、できにくい部分について配慮が必要なので、定量化して、それで期待にはっきり働き掛けるところまでは行きにくいと私は思う。保険の部分を定量化して、たとえば(消費者物価上昇率が)0.5%まで我慢する、あるいは1%まで我慢するというオプションを私として完全に否定したわけではない。
そういふうにすれば、ぼんやり言っているよりも、期待に対する効果は強いと思う。ただ、保険をかけるという考え方の根本を先ほどから話しているように、そういうふうに定量化しにくいケースに対する対応という面がかなりあるので、今のところは、そういうオプションに直ちにいくというふうには踏み切りにくい、という立場だ。
――景気が不安定なときに物価が上がることもあると思うが、そういったときに量的緩和の出口に入るのは望ましくないのか。
景気がいったん下がって、その後の(景気)上昇局面でインフレ率がはっきりプラスになることも考えられるが、(景気が)単調にこのまま良くなり、インフレ率がそのままプラスになる可能性も十分あり得る。そのうえで、インフレ率やインフレ予想がプラスになったが、景気はちょっとピーク、ないしピークを過ぎつつあって、先行き心配なときに出口を出られるかという質問だと思うが、それは先ほどから出ている保険とかリスク管理的な考え方の適用例の1つだと思う。
機械的に、たとえば来年度のインフレ予想を出してみたらはプラスになった。しかし、どうも来年度のどこかが景気のピークである。それから少し遅れて来年度の平均のインフレ率はプラスである。その次の年を考えてみると、インフレ率がもう少し下に行き、いったんデフレに戻ってしまうリスクもありそうなときは、そういう点に配慮して慎重に行動すべきではないか。
記事に関する記者への問い合わせ先:
静岡市 日高正裕 Masahiro Hidaka mhidaka@bloomberg.net
記事に関するエディターへの問い合わせ先:
谷合 謙三 Kenzo Taniai ktaniai@bloomberg.net
Chris Wellisz cwellisz@bloomberg.net
更新日時 : 2004/09/16 17:04 JST
http://quote.bloomberg.com/apps/news?pid=90003017&sid=aWS.UvoUXMn8&refer=jp_japan