みずほ腰上げた農林中金と資本提携…みずほ証券株売却 ---三菱・ＵＦＪ上回る規模、大統合も視野？

　みずほフィナンシャルグループ（ＦＧ）＝写真右＝が農林中央金庫＝同左＝と資本提携することで最終調整に入ったことが７日、分かった。ＵＦＪとの経営統合をめぐり三菱東京と三井住友が激突し、メガバンク再編の「台風の目」となる中、これまで沈黙を守っていたみずほがついに動き出した。

　同日付の読売新聞によると、農林中金がみずほコーポレート銀行の１００％子会社で証券業界４位のみずほ証券株の１５％超を取得する形で提携するという。

　みずほＦＧは８００億円規模の売却益を得るのに加え、みずほ証券の株式上場も視野に入れており、数千億円規模とみられる上場益もフトコロに入る見込み。これらの資金は公的資金の返済にあてる算段だ。

　みずほ証券は法人向けに特化しており、企業のＭ＆Ａ（合併・買収）や社債の引き受けといった投資銀行業務の拡大を狙っている。農林中金と提携することで資本増強に加え、新たな顧客基盤を獲得し、業界首位の野村ホールディングスとの差を一気に詰める狙いだ。

　みずほと農林中金は、今年３月にみずほ証券が農中証券の営業譲渡を受けるなど関係を深めている。さらに踏み込んだ今回の資本提携交渉には、「三菱東京フィナンシャル・グループとＵＦＪグループの全面統合で、傘下の三菱証券とＵＦＪつばさ証券が合併することへの対抗策」（金融担当アナリスト）との観測も浮上する。

　また、大手行では三菱東京と住友信託銀行がすでに公的資金を完済しているほか、ＵＦＪも三菱東京との統合によって財務改善を図る。みずほは公的資金の残高を今年度中に１兆７０００億円まで減らす計画だが、今回の資本提携をきっかけに一段と返済のペースを早めることができる。

　一方、農林中金側も、資金運用力の強化を目指しており、みずほ証券に出資して上場が実現すれば、株式譲渡益（キャピタルゲイン）が期待できる。

　みずほと農林中金の傘下の証券会社の資本提携話が浮上したが、金融業界では「これだけでは終わらない」（関係者）との声が上がる。

　農林中金は農協、漁協など農林水産業の協同組合などを会員とする金融機関で、機関投資家としても存在感は大きい。また、「農林中金は豊富な資金を持て余している傾向があり、経営不振に陥った企業が資金繰りで最後にすがりつく金融機関となっている」（金融アナリスト）という。

　資本金１兆２２４９億円で、政府出資や公的資金注入は受けておらず、自己資本比率も１２．９４％と健全性が高く、１６年３月期は１４４６億円の連結純利益を上げている。

　連結総資産は６１兆８３３０億円で、仮にみずほＦＧ本体との統合が実現した場合、総資産は２００兆円を突破し、三菱東京−ＵＦＪ連合（１８９兆円）を上回る世界最大の金融機関が誕生することになる。

　農林中金は農林中央金庫法によって定められているため、銀行本体との合併はハードルが高いがフランスでは、農業系金融機関のクレディ・アグリコルが民営化後、インド・スエズやクレディ・リヨネと合併し、欧州最大の金融グループに成長している。

　日本でも将来的に大統合が実現する可能性も視野に入る。

　みずほは１５年３月期に取引先を相手に１兆円増資を行い、約２兆円の最終赤字に転落したのを底に、財務面でも健全性を増してきている。

　現在はシステムの完全統合に全力を傾けているため、動きが取れないとされているが、将来に向けた布石を打ち始めたようだ。

ZAKZAK 2004/09/07

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