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借金漬けの米国経済とそれに支えられた世界経済はソフト・ランディングができるか?:問題は政府債務ではなく家計債務
http://www.asyura2.com/0406/dispute19/msg/314.html
投稿者 あっしら 日時 2004 年 9 月 06 日 20:01:46:Mo7ApAlflbQ6s
 


FRB(米国連邦準備理事会)は、0.25%刻みでFF金利を引き上げていく政策を採っている。
6月・8月と2回引き上げているから、FF金利はここ3ヶ月で0.5%上がったことになる。
織り込まれているように9月に同率の利上げが行われれば0.75%になり、10月・11月・12月のいずれかでも利上げが行われれば1%上昇することになる。


★ 参照書き込み

『ほんとうに金利を引き上げ続け引き締めも継続実施するのなら、「誤り」ではなく「確信犯」でしょう。』
http://www.asyura2.com/0403/hasan35/msg/647.html


ここ20年の世界経済は、借金漬けになりながら「世界の需要者」であり続けた米国を支えに成長を続けてきた。

要約すれば、

●米国は借金で手に入れたドルを経済社会に流すことで財を輸入する。

●米国相手のみならず財を輸出して稼いだ貿易黒字国は、ドルを自国通貨に転換し、ドル(外貨準備)を利息が付く米国債に転換する。


勝って手に入れたビー玉を負けた子に貸すことで“ビー玉遊び”を続けるという構図である。

ミソは、貿易で勝ったほうはビー玉が2倍になるという“魔法”にある。
米国などから勝って手に入れたビー玉1個は、「ドル・ビー玉」と「日本円・ビー玉」(「人民元・ビー玉」)の2個になる。

日本企業が1000億ドルを手に入れると、日本企業はそれで11兆円を手に入れ、政府当局は1000億ドルを手に入れる。そして、政府当局は1000億ドルを外貨準備として利息が付く米国債に転換する。それにより、米国政府当局は、債務証書を渡す代わりに1億ドルの現金を手に入れ、それを赤字財政支出で経済社会に流し込む。


これを整理すると、(所得収支や資本収支を除く)

● 貿易収支黒字国は、黒字額相当の通貨量が経済社会で増加する。

● 貿易収支黒字国の政府当局は対米債権として外貨準備を増加させ、米国政府当局は、ドル建てで貿易収支赤字になった国々が支払ったドルを債務証書の代わりに受け取る。そのお金は赤字財政支出として経済社会に戻る。


国際基軸通貨国である米国の“メリット”は、自国の貿易赤字分だけではなく、外国の貿易赤字分のドルも還流してくることである。
米国以外の貿易赤字国は、次の貿易赤字を支払うためにドルを借り入れなければならない。米国には他の国の貿易赤字分も戻ってきているので、それに応えることができる。

米国という国を一つの経済主体と考えると、「国際借り入れ受け取り利息−米国債支払い利息」だけ“金融利得”を上げることができるわけである。(たとえそれがマイナスであっても“利得”である)

このような循環を世界全体として考えると、貿易黒字分だけ非ドル通貨が増大することを意味する。
ドルは一定量で、「貿易赤字国→貿易黒字国→米国→米国外貿易赤字国→貿易赤字国→貿易黒字国→・・・」という循環でもとりあえずまかなえる。

(ドル安になれば、輸入財の価格が上昇するのでそうはいかない。このことからも、経常収支の赤字を解消するためにドルを意図的に切り下げることはありえない)

米国をはじめとした国々の貿易収支赤字が増加傾向にあるから、負けてとられたビー玉を米国政府が借りるだけでは済まず、他の手段でもビー玉を集めなければならない。
そのための仕掛けが、うまくいけば「ドル・ビー玉」(それを転換しての「自国・ビー玉」)を増やせるよと思わせる米国株式への投資誘導である。
この賭場で「ドル・ビー玉」を手に入れるのなら、支払い利息は必要ない。(配当なしや売買での損失は自己責任である)

米国の対外純債務は、2兆3千億ドルで、それはまるまる米国連邦政府の債務だと考えることができる。(米国民間部門は純債権保有)
日本の米国債保有高は、2兆1千億ドルと推定できる。
この債権債務バランスであれば、日本への利払いが現金ではなく債務証書(米国債)の追加で行われている限り、米国の対外債務が米国経済の直接的な重石になる度合いは小さい。

結論的に言えば、日本政府当局が米国の対外純債務のほとんどを引き受けているのなら、米国が対外純債務でおかしくなることはない。

このとうなことから、米国経済の問題は米国内部に見出したほうがいい。
連邦政府対内債務は、利払いが米国民(米国企業)に行われるので“相殺”されると考えることもできる。(貧乏人から金持ちへの“所得移転”というかたちであることは重要だが)

問題は、政府部門が借金をしてGDPを支えているだけではなく、家計部門や企業部門もこぞって借金で消費や投資を行いGDPを拡大してきたことである。

ということで、米国経済の内情を見ていきたい。(データは「ドル暴落から世界不況が始まる」(リチャード・ダンカン著・徳川家広訳・日本経済新聞社・税抜き価格1800円より)

■ 米国経済の実状

● 米国GDPに対する債務比率:

80年:169%
02年:292%

※ P.81:69年から81年までは緩やかな増加で、レーガノミックスが開始された82年から85年にかけて急上昇し、86年から95年まではまた緩やかな増加になり、「ニュー・エコノミー」ともてはやされた96年から99年にかけて再び急上昇している。

● ダウ平均の推移:

72年: 1000ドル超え
74年:  600ドルに下落
83年: 1000ドル回復
99年:11500ドル超え

※ P.82:95年までは4000ドル水準だから、90年代後半の4年間で脅威的な株価上昇があったことがわかる。83年から90年で163%上昇、90年から00年で320%上昇した。

● 米国のGDP支出:

01年:家計消費(70%)・民間投資(15%)・政府消費(18%)・純輸出(マイナス3%)

● 米国の企業活動:

00年にITバブルが崩壊して、企業利潤が激減した。
エンロンやワールドコムに代表される企業の会計詐欺や破綻もおき、企業への信頼は大きく低落した。

98年・99年の企業向け融資残高は年率12%の伸びを見せていたが、02年には2%にまで落ち込んだ。


● 失業問題:

00年10月から02年6月の間に、失業者が290万人増加し、840万人に達した。
失業率は3.9%から5.9%に上昇した。

● 家計状況:

米国の家計消費支出は、景気後退が始まった02年6月時点でも年率換算で3%の伸びを見せた。
米国の賃金上昇率は00年半ばに頭打ちになって、02年には90年代初頭の不況時と同程度まで落ち込んでいる。
失業者の増加と賃金の低落でも消費が増加しているのは、借金の増加に負っている。

家計の債務は80年の対GDPで50%から78%に増加している。
ある銀行の会長は「ローンの審査に通らないのは、破産した放火魔くらいなもの」と言っている。

00年以降、個人所得は急速に低下しているが、個人債務は伸び続け、消費の伸びさえ超えている。
01年末は、個人消費の伸びは過去40年間最低の2.5%まで落ち込んだが、家計の債務は4年連続で8%の伸びを見せた。

これを可能にしたのが住宅バブルである。
02年6月の一戸建て住宅の価格は、対前年比で10.4%上昇した。
米国人は値上がりを続ける家を抵当にして謝金をし、それで消費を維持してきた。


※ P.88


● 住宅抵当金融公社:

住宅バブルと低金利で借金を膨らませ、その資金で消費を拡大する米国民の動きを支えてきたのは住宅抵当金融を担当する三大公社である。

ファニー・メイ(連邦モゲージ金庫)、フレディ・マック(連邦住宅抵当会社)、FHLB(連邦住宅金融銀行)の資産総額は、01年6月以降、1年間で2480億ドルも増加した。(年率13%の増加)

98年を基準にすると、133%の増加で、金額にして1兆6600億ドル(約183兆円)増加している。

このような資産増加の基礎である住宅ローンは、95年には6390億ドルであったローン貸し付け残高が、02年には2兆ドル(約220兆円)を超えた。


◎ 市中銀行など住宅ローンの貸し手は、借り手の債務不履行リスクというババを政府系三大公社に回して安全圏に居続けようとしている。


住宅ローンが低下することで、借り換えを行い現金を手にする家計が増えた。
貸し手の多くが住宅価値の120%まで貸し付けている。その現金がすべて消費に回った。
02年8月の時点では、住宅ローンの新規申し込みのうち借り換えが71%にまでなった。

グリーンスパンFRB議長は「住宅ローン利率の低さが住宅の売上とキャピタルゲインの両方を大いに強めた。ローンの借り換えで家計に入った現金は、00年前半には200億ドルしかなかったが、01年第3四半期には750億ドルまで増えた」と語っている。

米国の不動産バブルがあとどれだけ間もつかは、住宅ローン金利がこの後どこまで下がるのか、米国人が個人所得よりも勢いよく値上がりしている住宅をいつまで購入できるかの二点にかかっている。

今年6月以降の利上げで住宅ローン利率が下がる時代は終焉した。

住宅購入力の変動は、全米不動産協会の住宅購入力指数でわかる。
住宅購入力指数は、02年6月時点で過去3年半で最低になった。住宅価格が上昇し、所得が落ち込むなかでそれほど住宅購入力指数が下がらなかったのは、住宅ローン利率が記録的な低さにあったからである。

住宅購入力指数推移:

99年:139.1
00年:129.6
01年:137.3
02年:129.6


米国の家計は貯蓄率が00年と01年には1%まで下落した。
(59年から98年の平均貯蓄率は8.4%)

借金漬け・所得減少・貯蓄なしという家計状況から、個人破産の申請者が急増している。
史上最低とも言える低金利時代に個人破産が急増しているのだから、金利が上昇すれば、債務者家計のさらに多くが破産することになる。

国家はともかく、所得よりも債務のほうが増加していく状況は、企業であれ個人であれ長くは維持できない。
その終焉はイコール消費ブームの終焉である。

家計が疲弊して借金を減らしにかかると金融業界は大打撃を受ける。
連邦政府系の不動産抵当公社や金融公社、不動産抵当証券の発行元、それに市中銀行のすべてが債務を膨らませることをためらなわない家計を市場として成長してきたのだから当然である。
そして、苦境に陥った金融業界が家計と企業に対する追い貸しを断ち切ると、金融収縮が襲うことになる。

ダンカン氏は「言うまでもないことと思うが、いかなる理由によってであれ金利が上昇をはじめれば、ゲームオーバーなのである。金利が上がれば不動産価格は下がりはじめ、ローンの借り換えもおしまいだ。住宅ローンの債務不履行や滞納などが増加し、しかも資産効果も裏返しになり、消費が崩壊するのである。その時にこそ、アメリカの大消費時代には幕が引かれることになるだろう。」(P.99)と説明している。

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★ 参照書き込み


『「産業資本主義」の終焉:外国為替レートの変動論理:固定相場制と変動相場制の違い』
http://www.asyura2.com/0403/dispute18/msg/853.html

『「産業資本主義」の終焉:購買力平価を大きく超える「円高」になっている理由:“円高恐怖症”自体がその一因』
http://www.asyura2.com/0406/hasan36/msg/112.html

『「産業資本主義」の終焉:日本が「世界同時デフレ不況」をかろうじて押しとどめている:対米金融35兆円の意味』
http://www.asyura2.com/0403/dispute18/msg/831.html


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