★阿修羅♪ 現在地 HOME > 掲示板 > 議論19 > 262.html
 ★阿修羅♪
次へ 前へ
大西赤人の『今週のコラム』より
http://www.asyura2.com/0406/dispute19/msg/262.html
投稿者 洋八 日時 2004 年 9 月 01 日 02:50:46:LTfrxQxSZjjig
 

(回答先: Re: 長嶋JAPANはなぜ金メダルが取れなかったのか 五輪という国際舞台が示した日本野球界の問題点 投稿者 sogoro 日時 2004 年 8 月 26 日 18:12:38)

大西赤人氏の『今週のコラム』
 http://www.asahi-net.or.jp/~hh5y-szk/onishi/konshu.htm
8月26日付けの前半部分を転載


「長嶋ジャパン」の銅メダルと女子レスリング浜口京子の銅メダル
大西 赤人       


 スポーツが国際的な規模で行なわれ、そのレヴェルが上がって面白さ・魅力を増せば増すほど、ある意味それは、人の心を麻痺させるものとなる。この夏は、ユーロ・カップ、アジア・カップ、アテネ・オリンピック、そしてウィンブルドン、全英オープン・ゴルフ、あるいはF1、高校野球……。国内外で行なわれるビッグ・イヴェントが実況中継されるのは嬉しい限りだが、連日テレビの前で費やす時間を考えるといささか自省的な想いに駆られるし、加えて、いかんともしがたい時差のために重なる夜更かしで生活リズムも乱れてしまう。本欄も、このところスポーツ“ネタ”が続いているけれど、もう一回だけ、オリンピック絡みということで……。

 柔道をはじめとする予想以上の大躍進で、日本チームが得た金メダルは、1964年東京大会での16個を遥かに上回ることになるのではないかとさえ思われたが、中盤に入ると、有力視されていた種目でも惜敗が続いて頭打ちの気配。

「かつては不本意な採点や判定にも泣き寝入りする選手が多かったが、最近はすぐにCASに飛び込むケースが多い。『五輪金メダリスト』というブランドが急騰したからだ。メダルが獲得できるかどうか、その色が金か銀かで、報奨金や名声は大きく変わる。スポンサーとの契約金、引退後の地位、人生そのものがかかっている。競技同様に、望みがある限りは徹底的に戦う姿勢が、選手にもチームにも浸透してきたのだ」

 これは、アテネ五輪期間中、スポーツに関わる紛争解決を目的とするCAS(国際スポーツ仲裁裁判所)へ各種目の判定についての抗議が殺到しているという記事(25日付『日刊スポーツ』)の一節。金でも銀でも銅でも構わない、「参加することに意義がある」などと言っても綺麗事になってしまうだろう。でも、最近何かと流行りの「○○選手、感動をありがとう!」みたいな言葉や、敗れた選手が「応援してくれた皆さんに申しわけない」とひたすら頭を下げる光景を見せられたりすると、『何かおかしいんじゃないか?』という気分になる。彼らが金メダルを獲った・獲らなかったによって、我々の生活、ひいては人間社会に何らかの直接的影響が出るのでもなく、冷めた言い方をしてしまえば、所詮は職場や茶の間の話題がひとしきり盛り上がるだけに過ぎないのだから。

 というわけで、日本(選手)に過剰な期待をかけるつもりは毛頭ないのだけれど、言わば子供の喧嘩に親が出て行くようになりふり構わずプロの一流どころを揃えた野球チームに関しては、『これで勝てなくてどうする?』という想いで見ていた。しかし、前々回、前回で連ねた懸念を裏付けるように、日本は予選リーグこそトップで通過したものの内容としては苦戦の連続、決勝トーナメント緒戦でオーストラリアに敗れての銅メダル止まり。オリンピックの特殊性を考えれば、負けたこと自体はやむを得ない結果だし、個々の選手をあげつらう必要はないとしても、「狙うは金のみ」というかけ声とは裏腹に、反省すべき構造的弱点があまりにも多かったように思われる(余談ながら、全試合に登場した今や「日本一」の監督と自他共に認めるのであろう星野仙一の“日本は野球先進国です” とそっくり返ったような折々高みに立っての解説ぶり――特に審判や運営への文句――には少々辟易《へきえき》)。

 中でもやはり最大の問題は、試合場に居合わせず、日本から「メッセージ」を送るだけの病み上がりの指揮官をかつぎつづけたことだろう。“長嶋監督”の幻に囚われ、現場責任者となるべき中畑ヘッド・コーチも、結局は「長嶋サンならこうするだろう」というような無形の圧力に終始惑わされていたのではなかったか。試合運びについて言えば、成功・失敗にかかわらず、送りバントの多用には何ともガッカリさせられた。宮本は、大差のついたカナダを相手に、予選も最終戦もバント。接戦の無死一、二塁となれば、高橋由や中村紀でもバント。もちろん、送りバントを全否定するつもりはないけれど、日本を代表する強打者たちにこのようなせせこましい野球を求めることによって、選手たちは非常に萎縮してしまったように見える(最初からそういう野球をするつもりならば、代表の選定の仕方がそもそも間違っていたということになるだろう)。

 その典型は、0対1で敗れた決勝トーナメントのオーストラリア戦で、9回裏先頭打者として何とセーフティー・バントを試みた四番・城島の姿だった。この試合では、8回裏にフルカウントから完全なボール球を空振りした宮本、9回裏にファウルで粘りながら凡退した中村紀なども、ペナント・レースでは見たこともないような追い詰められた悲壮な表情。総合的な実力を考えれば、日本がオーストラリアに劣るとは考えられず、もっとノビノビと動けば良かっただろうに、自ら苦しい状況にはまり込んで行ったように思う。

 また、もっと大局的に言えば、次のような経緯もあった。予選1位対4位、同じく2位対3位となる決勝トーナメントの組み合わせを見据え、オーストラリアは予選最後の対カナダ戦で明らかにメンバーを落として0対11と大敗、首尾よく4位に位置して準決勝で日本と対戦した(カナダに勝っていれば、3位になって準決勝はキューバと当たっていた)。一方、日本のほうは予選終盤の台湾戦やギリシャ戦でも“負けられない戦い”とばかりに必死(あるいは馬鹿正直)に勝利を求めるばかりだった。それでも楽に金メダルを得ることが出来たのであれば結果オーライとも言えるだろうが、こうして負けてしまうと、もう少し駆け引き ――準決勝がカナダ戦となるような――があっても良かったような気がする。

 いずれにせよ、メディアは、最後まで“長嶋ジャパン 感動の銅メダル”という調子の美談仕立てを続けているけれども、もう日本野球は、長嶋茂雄個人のネーム・ヴァリューに頼っている(いられる)ような時代ではないのだ。球界全体が、その事を痛感し、受け止めるべき時機であると思う。

 次へ  前へ

議論19掲示板へ



フォローアップ:


 

 

 

  拍手はせず、拍手一覧を見る


★登録無しでコメント可能。今すぐ反映 通常 |動画・ツイッター等 |htmltag可(熟練者向)
タグCheck |タグに'だけを使っている場合のcheck |checkしない)(各説明

←ペンネーム新規登録ならチェック)
↓ペンネーム(2023/11/26から必須)

↓パスワード(ペンネームに必須)

(ペンネームとパスワードは初回使用で記録、次回以降にチェック。パスワードはメモすべし。)
↓画像認証
( 上画像文字を入力)
ルール確認&失敗対策
画像の URL (任意):
投稿コメント全ログ  コメント即時配信  スレ建て依頼  削除コメント確認方法
★阿修羅♪ http://www.asyura2.com/  since 1995
 題名には必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
掲示板,MLを含むこのサイトすべての
一切の引用、転載、リンクを許可いたします。確認メールは不要です。
引用元リンクを表示してください。