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(回答先: 貯蓄不足ってデムパ? 投稿者 最悪! 日時 2004 年 8 月 13 日 18:41:58)
経済学知識を鵜呑みにするのではなく、現実を見て判断してください。
>経常収支黒字なのになぜ貯蓄不足なのでしょう?
>バカなことは言わないように。
そのような“静態”的説明がされていることは存じています。
まず、フロー概念である経常収支黒字とストック概念である貯蓄との関係性が経常収支の在り様を決めるという説明のおかしさを疑ってください。
(式)
EX−IM=(S−I)+(T−G)
EX:輸出
IM:輸入
S:貯蓄
I:投資
T:税収
G:政府支出
この式自体に対する疑念は後回しにしてこの式を説明します。
問題になるのは(S−I)ですから、
貿易収支=(S−I)−赤字財政支出
と置き換え、
さらに、貯蓄の余裕度を見るという意味性から、
貿易収支=S−I−赤字財政支出
と表現します。
式のなかの貿易収支と赤字財政支出は明瞭な値です。
貿易収支は10兆円の黒字で赤字財政支出は35兆円ですから、
10兆円=S−I−35兆円
となり、
(S−I)=10兆円+35兆円=45兆円
が成立します。
(S−I)は貯蓄残高ですから、日本は45兆円の「過剰貯蓄」となります。
この式の問題は、Sが期間中の増加であるフロー的意味なのか貯蓄残高であるストック的意味なのかということにあります。
フロー分析ですから、式のSは期間中に増加した貯蓄でなければなりません。
しかし、期間中の貯蓄増加は貿易収支黒字や赤字財政支出によっても発生しますから、Sは、完全な独立変数ではなく貿易収支黒字や赤字財政支出にも規定される従属的変数ということになり、恒等式としては成り立ちません。
(輸出企業が受け取った輸出代金の一部が貯蓄されたり、輸出代金から支払われた給与の一部が貯蓄されることを考えてください。また、赤字財政支出も、受け取った企業が貯蓄したり給与の一部が貯蓄されたりします)
さらに重要なのは、日本銀行のベースマネーや保有国債がどう変動しているかです。
式の(S−I−赤字財政支出)は、民間の貯蓄増加だけではなく、日銀のベースマネーの増加や日銀保有国債の増加が関わってきます。
日銀がゼロ金利で銀行に貸し出しを行いそのお金で国債を引き受ければ、式そのものが当てにならないものになります。
日銀が銀行に貸し出したお金で新規国債が購入されているのなら、(S−I−赤字財政支出)は、(S−I−赤字財政支出+ベースマネー増加分で国債を引き受けた金額)に変わります。
さらに、日銀が銀行保有国債を購入する行為もこの式に影響を与えます。
なぜなら、貯蓄の増加がなくても、過去の貯蓄で買った国債を日銀に引き渡して、新規赤字財政支出のある部分を引き受けることができるからです。
これにより、(S−I−赤字財政支出+ベースマネー増加分で国債を引き受けた金額)は、(S−I−赤字財政支出+ベースマネー増加分で国債を引き受けた金額+日銀に既発国債を売却して新規国債を引き受けた金額)に変わります。
仮にS(期間中の貯蓄増加)が20兆円で、日銀が日銀券を発行して銀行に貸し出したお金と保有国債を日銀に売ったお金のうち20兆が国債の購入に回ったとしたら、Sを20兆円“嵩上げ”したことになります。
“嵩上げ”がないとしたら、
(S−I)=45兆円 ではなく、(S−I)=25兆円 になります。
ひょっとして、03年度の(ベースマネー増加分で国債を引き受けた金額+日銀に既発国債を売却して新規国債を引き受けた金額)が45兆円を超えているのなら、日本の貯蓄は“不足”ということです。
銀行の貸し出し残高は76ヶ月も連続して減少していますから、(ベースマネー増加分+日銀に既発国債を売却した金額)のほとんどが政府債務の増加に使われたと考えても問題ないはずです。(それどころか、貸し出し残高の減少分も政府債務の増加に使われたと考えることができます)
どのような現実なのかは、日銀の財務諸表は公開されていますから、この説明をもとにお調べください。