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(回答先: Re: 日本の取るべき戦略 その4 投稿者 岩住達郎 日時 2004 年 8 月 12 日 06:46:44)
21.摂理に基づく対外政策
摂理に依る経済システムの見方を全世界に拡大して考えると、上の第20章で述べた様に、アメリカの様な浪費好きの国の通貨と日本の様な節倹好きな国の通貨との間で安定な交換率を求める方が間違っている事が分かる。アメリカと日本では国民性が違い消費性向も違うのだから、経済システムの挙動も違っていて当然なのだ。それを、日本の経済はアメリカを模倣すべきで、アメリカ経済の景気を支えないと日本の経済も駄目になる、という全く根拠の無い妄想に駆られている。この間違ったアメリカの経済理論を妄信した為に、通貨の交換率を安定化しようと日本政府はドル買い介入を繰り返しているが、これはアメリカ経済にエネルギーを注入するので益々安定領域から遠ざかり、日米共に経済不安定をもたらす。
日本はその莫大な貯蓄量により、アメリカよりループ・ゲインは遥かに小さいはずである。これは日米の中央政府が共にループから外されているので、国の負債はループ・ゲインの計算に入らないからである。しかも、アメリカは莫大な外国からの投資を受け入れてきた為に、貿易赤字が累積するにつれ、ある時点で外国からの投資が一斉に引き揚げられる事は避けられない。幸い、日本は外国からの投資は極めて少ないから、例え投資を全部引き揚げられても殆ど何の影響もないが、アメリカはそうは行かない。約3兆ドルの外国投資がものの数ヶ月で流出する可能性が高い。そうなると、ドルは暴落しアメリカ経済は恐慌に突入する。
日本がアメリカの破綻に巻き込まれない為には、アメリカ経済を支援する事を先ず停止する事だ。日本政府が毅然として、アメリカと日本は国民性が違い、従って消費性向も違うのだから、経済政策も全く違ったものにする、と宣言しなければならない。そんなことをしたら、アメリカが日本を原爆攻撃するのではないか、と怖れるとすれば、それは被害妄想狂という精神病なのだ。日本が即時にやらねばならぬ事は前にも述べたように、
A.対外通商を全面的に円建てとする。
B.対外円借款には相手国の天然資源を担保とする。
C.対外円借款は軍事や消費目的の使用を認めない。富の生産目的に限る。
D.相手国の競合品に比べ日本製品が著しく安価な場合は輸出税を掛けて拮抗状態にする。この際、相手国も日本に対し強い競合品には同様の輸出税を掛ける義務を課す条約を結ぶ。これは国際与点制度の一端である。これは特に日本の農業工業技術を相手国に移植してその製品を日本に輸出しようとする場合に適用される。
E.外国からの投資は生産的な物は構わないが、外資金融業の進出は阻止する。これは世界最大の貯蓄を持つ日本にとって外資金融業者によって損害を受ける事はあっても得をする可能性は全くないからである。この理由は前に述べた。
アメリカ経済恐慌が起これば、数年間世界は大不況に見舞われる事は避けられない。この時期に景気を戻そうとして、通貨を大量に発行して更に国民に借金させるのは完全な間違いである事は既に説明した。政府が為すべき事は、不況による不良債権を出来るだけ巧妙に、通貨を刷らないで、借り手と貸し手が同時に負債を打ち消し合う方法を考える事だ。この一例として、個人住宅の買い替えの際に生じる含み損と銀行の不良債権を同時に打ち消す方法は前に述べた。
欧州のEUは加入国中央政府から分離した中央銀行を持っているから、各国のループ・ゲインは中央政府を含む事になる。従って、EUの国々は、中央政府が通貨の創造と消滅権を持っている国々に比べ、遥かに経済政策がやりにくくなる。中央政府がループに含まれると財政赤字がループ・ゲインを上げるから、GDPの3%以上の赤字を禁止するEUの条約は合理的なのである。EU参加国政府の出来ることは、国民に節倹を呼びかけ、消費の為の借金を許さない事、投機行為を厳しく制限する事、等で銀行の貸し出しを生産的な物のみにする。福祉は税金で賄える限り問題では無いが、福祉の為に政府が借金する事は絶対に許してはならない。この様に財政政策は極めて厳しくなる。
世界大不況になれば、EU諸国の中央政府は上に述べた様な手段を用いて不良債権を処理できないから、経済は非常に厳しい事態に追い込まれるだろう。その為にEUが分裂し、ユーロが崩壊して元の国々に主権を戻し、各々の中央銀行が元の通貨を発行して不良債権処理をする事になる可能性が高い。これは特に日本がうまく大不況から回復するのを見れば、自国の通貨を持つ事の重要さを認識するからである。従って、ユーロだけでなく、外債を持っている日本人は世界恐慌に備えて今の内に全部売っておくべきである。外国からの借金を持たない日本人にとって、貯蓄は自国の通貨で持つのが一番安全なのであり、外国から多額の借金を抱える国の人は貸出先の国の通貨で貯蓄を持つのが一番安全なのである。外債を持つ事がリスク分散になると思いこんでいる日本人は金融業者の宣伝に騙されているのだ。
旧西ドイツの犯した最大の誤りは、東ドイツを併合してループ・ゲインを非常に高くした上、EU中央銀行に通貨創造と消滅権を譲り渡した事だ。EUに倣って、日本と或る国が経済ループを共有して両国共に利益を得るには国民性が酷似していなければならない。これはランダム・サンプリングの性質が似ている必要があるからだ。日本は数千年間他国から侵略された事が無く、しかも温暖な気候で、その為世界に類のない、お人好しで自己を犠牲にして和を尊ぶ国民性が生まれた。そんな国は世界中何処にも無い。即ち、日本が経済ループを外国と共有出来る可能性は全く無いのである。
EUの様に、アジアにも中央銀行を作り共通の通貨を発行しよう、という感傷的理想主義だけで理論的根拠の無い意見があるが、これはどんな事があっても絶対にやってはならない間違いである。経済力学(ランダム・サンプリングの性質)は国民性によって大きく左右され、欧州の様な、歴史を共有し、似たような文化を持った国々では何とか纏まるが、アジア諸国では歴史や文化それに生活水準が違いすぎるからである。共通の通貨を持つと、加入国の中央政府は全部ループ・ゲインの計算に含まれる事になる。日本は他の加入国からの移民であふれ、彼らの福祉の為にループ・ゲインが大幅に上がってしまう。もし中国も加入していれば大変な事になる。中国はわざと極貧者を大量に日本に輸出するだろう。財政赤字を出せない為に、日本経済を制御する手段は限られるから、日本人は移民の為に重税を取られて極度の生活水準低下を強いられ、世情は信じられない位悪くなり、今のドイツよりもっと酷い状態になるだろう。
昔から世界連邦を作り、世界通貨を世界中央銀行から発行しようという理想論者が沢山いた。勿論、彼らはそうする事によって世界経済が良くなるという理論的根拠を持っていた訳では無い。ただ自分が世界に号令し、権力を振るいたいだけだ。千差万別の価値観と生活水準を持つ国々を例え武力で統一して通貨を一つにしても、第15章の摂理2にあるように、人間の先天的な能力の差を無くす事は出来ない。そこへ今まで通りに、銀行家が支配する利権だらけの腐った資本主義を強制すれば何が起こるかは明白である。この理論によれば、世界の経済は制御不可能な不安定に陥り、貧富の差は益々広がる。挙げ句の果ては、こんな事になるのは後進国の劣等民族の為だ、と称して何十億という人達を、貧しいという理由で大虐殺し、彼らの天然資源を略奪する行為が始まるのは必然である。勿論、世界経済が大混乱に陥る真の理由は腐った資本主義を世界に押しつけた支配者達の貪欲である。
アメリカが大不況に突入した後、暴動、反乱、内戦に迄発展する可能性は非常に高い。これは現在テロ対策に大量の武装警備員を雇っているが、大不況で彼らは解雇され、食うに食えなくなるからである。そうなれば、日本は太平洋岸の諸州に経済援助を働きかけて合衆国連邦から離脱するように工作を行うべきである。これはアメリカが再び武力を振りかざして他国の富を略奪する世界平和の脅威となる事を防ぐ為である。アラスカからカリフォルニアまでの州とブリティッシ・コロンビア、アルバータが離脱して新しい国を作る事に成功するのが最も望ましい。日本はそれを目指してあらゆる努力を惜しむべきでない。
世界大不況が起こると一番打撃を受けるのは後進国である。国際与点制度を制定して、後進国に経済援助を与える場合も、国民与点制度と同様に、相手国の事情に応じて先ず与点を決め、援助の効果でその計画が着実な進歩を示し、毎年与点が下がっていく事が援助継続の条件となる。勿論、この経済援助は借款では無く贈与で、通貨ではなく物資や人材派遣にする。もし一年間進歩が見られなければ、天災とか予期せぬ出来事が原因でない限り、援助をうち切る。この非情さが生存競争に打ち克つ意志を発揚させる原動力となる。けっして甘やかしてはならないのである。
円建て借款の原資は勿論日本国民の貯蓄である。国家が国民の貯蓄を借りて外国に貸すのだから、当然リスクは国家が引き受けなければならない。日本の民間銀行が外国に円借款を与える時は政府の承認を必要とし、過剰な貸し込みを行わないように監視すると共に、貸したお金の用途の監視義務を課す。民間銀行といえども貸し出しの原資は国民の貯蓄なのだから、利子さえ払ってくれれば、後は好きなように借金を使ってくれ、という無責任な態度は銀行には許されない。
(続く)