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“電位差”の源泉は国際金融:「通貨創造」について  [オニオンさんへ]
http://www.asyura2.com/0406/dispute19/msg/140.html
投稿者 あっしら 日時 2004 年 8 月 11 日 18:00:44:Mo7ApAlflbQ6s
 


オニオンさんの「電位差の源泉はどこにあるのでしょうか?」( http://www.asyura2.com/0406/dispute19/msg/138.html )へのレスです。
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オニオンさん、どうもです。

煙もうもうで煤が飛び交う工場地帯で生まれ育ったので、東京にはじめて来たときは、話とは違って空は青く空気もきれいじゃないかと思ったものです(笑)


>さて、お伺いしたいのですが、資本主義とは利潤獲得競争社会であり利潤の源泉は外
>部共同体というのが前回の流れでしたよね。では富が移動する(利潤が生ずる)為の
>電位差の源泉はどこにあるのでしょうか。具体的に言えば貿易赤字国は支払いをどう
>しているのでしょうか。

貿易収支が赤字でも経常収支レベルで黒字であれば国際決済は問題ありません。
米国も85年までは経常収支レベルでは黒字でした。
経常収支黒字で貿易収支赤字という国民経済の存在は、金融資産家が贅沢に散財しているようなもので、貿易収支黒字国にとっては“健全”な“電位差”といえます。

もっと昔まで遡れば、大英帝国は、当時1、2の経済力を誇っていたインドや中国から強権的な「自由貿易」を通じて貿易収支黒字を計上していました。
英国のインドからの“収奪”は、インドの貨幣的富が枯渇し、年ごとの“収奪”源であるインドのフロー所得を増加させるために“収奪”以上の投資が必要になった時点で終焉しています。
(インドの人たちがぎりぎりでも生存できるレベルを超える“収奪”はできません。このような変化が、インド支配を断念し独立を認めた基礎的条件です)

現在の“電位差”の特徴は、貿易収支黒字国(日本など)が経常収支赤字国(米国など)に金融することで保たれていることにあります。


“電位差”は貨幣的富の格差と生産性の格差から発生するもので、生産性で優っている国民経済が貨幣的富で優っている国民経済(共同体)に財を輸出して貨幣的富を稼ぐという流れを引き起こすものです。

“電位差”論でざっと「近代」を振りかえれば、

● 「新世界」アメリカから略奪した金・銀が欧州に持ち込まれる。
● その金・銀が、欧州で手工業を発展させると共に、中東やアジアから“贅沢品”を輸入して支配層に販売する国際交易を発展させる。
● アジアから輸入するばかりであれば欧州の金・銀は枯渇するので、アジアで売れるものを生産してアジアに渡った金・銀を取り戻すための「近代産業」が勃興する。
● 近代産業の成長で不足する農産物や原材料を「新世界」アメリカから輸入して補填する。
● アジアとの交易で増大した貨幣的富が産業拡大の原資を超えると、アメリカや新興近代国家への貸し出しや直接投資に振り向けて利潤を生むようにする。
● よその土地を略奪してできあがった「人工国家」として最も有利な条件を持つ米国が最強の産業力を誇るようになる。
● 二度の世界大戦を経て、米国に貨幣的富と生産力(生産性)が集中する。
● 米国は、貨幣的富を拠出(援助)したり貸し出すことで、貨幣的富から利潤を生むことや生産力の維持(拡大)をはかる。
● 米国の国際戦略(「世界の需要者」)のなかで日本やドイツという新たな国民経済が産業力で優位に立つ。
● 米国は金融的利得(貨幣で貨幣を増やす)の獲得に傾斜し、不足する財を輸入に頼るようになる。
● 米国は金融利得の機会を拡大するために、それまで“封鎖”していた共産圏を“解放”し、生産拠点(直接投資や貸し出し)や資源確保の対象とする。
● 米国経済はフロー的に破綻し、日本などからの金融を受けなければ「世界の需要者」として存続できなくなる。産業国家は、自己の生産力(国民経済的循環)を維持するために対米金融を継続しなければならなくなる。
● 米国は金融利得の機会を拡大するために、それまで資源確保の対象としていた原油産出国を“近代化”する動きに出る。


このような歴史的経過からわかるように、歴史的に蓄積された貨幣的富の偏在がもたらす“電位差”は消滅し、フロー所得の偏在を国際金融でシャッフルすることで“電位差”が維持されるようになりました。

国際金融による“電位差”維持は、将来の利払いや元本返済を意味するので、将来の需要を先取りしているだけということになります。
(米国は基軸通貨国であり覇権国家であることから過剰な対外債務が見逃されていますが、中南米諸国やアフリカ諸国を見れば、国際借り入れが引き起こす悲劇を理解することができます)


>またしつこい質問になるのですが通貨創造は利潤の源泉とはならないのでしょうか
>(信用創造ではありません。通貨創造です。国債の中央銀行引き受けも含められると
>思います)。

「通貨創造」により、「信用創造」とは違って経済主体に負担をかけない見掛けの利潤をもたらすことはできますが、実質はインフレ政策と同じです。

簡単なモデルで説明すると、日本政府が500兆円の「通貨創造」で需要者になり、その需要に対する供給活動が450兆円しか投じないで済むものだったという状況であれば、50兆円の利潤(粗利益)が発生します。

しかし、それが本当の利潤と言えるかと問えばノーです。
実際のところは、経済取引を通じて政府から経済主体に贈与が行われたとか、11.1%のインフレになったというものです。
財の供給量が1000億個だとして、単価が4500円から5000円になっただけです。財の供給量が増えていないのに、需要額が増大するというのはそういうことです。

50兆円の利潤は確かに存在しますが、供給された財はすべて需要されていますので、株式や土地を買うことはできるとしても、それで使用価値がある財は何も購入することはできません。(政府の需要を満たす財のなかには輸入財もあると想定しています)


このモデルは、先にお金を受け取り、受け取ったお金で消費財を購入するために供給活動に従事するという国家社会をイメージすればもっとリアルになります。
政府が国民に500兆円を配り、公共投資は供給活動の在り様を指示するが、他の供給活動は企業に任せるというものです。
企業は給与を払う必要はなく、供給活動に必要なひとを集めて指示するだけです。

端的には、政府が供給活動に必要なお金を全部負担する経済社会です。
このような経済社会であれば、最初の例のように50兆円という利潤が発生することはありません。すべてのお金が需要に回り、財が単価5000円で消費(利用)されて循環は完了します。
この説明との対比で考えれば、最初の例で発生した利潤50兆円が政府から経済主体(企業)への贈与ということがわかります。


「通貨創造」を一概に否定する考えは持っていませんが、“彼ら”との関係性で“危険”であることや“共産主義”的政策であることを理由にあまり推奨できません。

>また地球規模で考えれば外部共同体などありません。つまりあっしらさんのモデルで
>は世界全体としてはゼロサム(利潤無し)だという事になります。しかし人類規模で
>見ても一人当たりの生産力も貨幣量も千年前よりも上がっていると思われます。あっ
>しらさんのモデルではこの事はどの様に説明されるのでしょうか。

一人当たりの生産力や貨幣量がどれほど増大しようと、「供給→需要原理」は変わりません。

一人当たりの生産力が高まりそれが順調に循環するというのは、財的な豊かさの向上につながるものではあっても、利潤を生むわけではありません。

千年前は、1億人が従事する供給活動で1億個の財を生み出していた。
今は、1億人が従事する供給活動で1000億個の財を生み出している。

千年前に供給活動に従事していた人は一人当たり1個の財を手に入れるだけだったが、今は、ひとり当たり1000個の財を手に入れることができるという違いで、利潤はまったく関係ありません。

お金は消費するものではありませんから、お金がいくら増えようと、財的豊かさにも利潤にも直接の関係はありません。(お金を増やしてインフレにすることで、生産性の上昇をスムーズにすることはできます)

もう一度「供給→需要原理」を辿って、この説明が腑に落ちるようになったら、経済問題がより明瞭に見えてくるはずです。


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