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(回答先: 「産業資本主義」の終焉:国家財政と国民経済:租税とは「活動成果」や「活動力」の移譲である。 投稿者 あっしら 日時 2004 年 8 月 05 日 16:34:14)
とあるサイトの掲示板で「新型インフルエンザ、日本で流行すれば死者10万人(日本経済新聞) 」を紹介するコメントとして「こいつが流行してジジババが皆殺しになったら、年金問題は一発解決。」というものがあった。
倫理やヒューマニズムは別として、経済・財政の論理としてコメントの判断が妥当かどうかを考えてみたい。
結論:年金問題は解決するとしても、財政問題や経済問題は解決しない。
理由:年金受給者も、需要者としてGDP的連関に組み込まれているからである。
年金受給者3千万人が死亡すれば、一人当たりの消費額が100万円から150万円としてGDPの総需要(フロー所得)はおよそ30兆円から45兆円減少する。(GDPの6.5%から10%)
これにより、売上・粗利益が減少して債務不履行や破綻に陥る企業が多発し、最低でも750万人の追加失業者が発生する可能性がある。(30兆円/400万円=750万人:勤労者の年収を400万円として)
銀行の不良債権が急増し、政府の税収も最低でも8兆円ほど減少する。(90兆円×9%。法人税が激減するはずだから12兆円ほど減少するだろう)
また、生命保険会社は、3千万人の保険金支払い(一人100万円でも30兆円)でほとんどが破綻の危機に直面することになる。それは同時に、保険金支払いのために日本国債・株式・米国債など流動性の高い資産を売却せざるを得ないので、金融市場の大混乱を招く。(株安・債権価格下落・金利上昇など)
年金受給者のなかには多額の預貯金を保有しているひともけっこういるので、その相続が行われる。相続税が課税されるのは5%から10%しかないので、銀行や郵便局から多額の預貯金が引き出されるだろう。これについては、再度預貯金になったり、消費に回るのでそれほど深刻な問題にはならないはずだ。
3千万人が死んでも政府債務は減少しないから、国債費が税収の50%を超えることになる。実質税収は、公務員の人件費に充当できるだけというとんでもないレベルになる。その一方で、失業保険や生活扶助などの社会保障関連費が急増する。
これにより、就業者として生き残った人たちの公的負担は急激に増大することになる。
このような経済変動がデフレ・スパイラルの急激な深化を引き起こすので、破綻する企業や失業者はさらに増加し、それがさらにデフレ・スパイラルを悪化させるという悪循環に引きずり込まれることになる。
年金受給者の死亡が10万人であっても、このような変動がごく小さなものになるだけで、基本は変わらない。
GDPの連関構造をきちんと考えない政策や願望は、より酷い経済社会を生み出すことになるという好例である。