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(回答先: Re: 『ソラリス』は存在論、認識論的(笑)にもヲタクにとって汲めども尽きぬネタの宝庫――なるほどですね 投稿者 南青山 日時 2004 年 10 月 27 日 09:23:53)
南青山さん どうもです。
>仕事の方もようやく一段落したので、ちょっと書き込ませていただきます。
某映画祭ですか...という話はともかく
>とくにラストの「しかし、私は、驚くべき奇蹟の時代はまだ永遠に過去のものとなって
>しまったわけではない、ということを固く信じていた。」はSF名ゼリフ集のベストスリー
>に入ると確信しています。
ご紹介ありがとうございます。前レスの「皮相な評論」と言うのは言葉が走ったので取り下げますが、新訳、と旧訳では意味がまるで反対の様に思えますね。これは困った。
「新しい宇宙創造説」は是非読んでみたいと思います。
>『ソラリス』についてですが、メインテーマはファーストコンタクトだと思っています。
>未知の存在との遭遇はどのように行われるのか。
恥ずかしながら、虚をつかれてしまった気がします。とするとあれは「交換」なんでしょうか。出典は忘れてしまいましたが「大航海時代」に異文化がコンタクトしたときの話ですが、ボートで海岸に品物を置いて帆船に戻ると、翌朝には無くなっていて例えば羽飾りとか貝殻が置いてある。品物を倍置くと貝殻も倍になっている。で、別の品物を置くといつまでたっても無くならない。つまり気に入らなかった、価値をみとめなかったということになります。当人と会話するどころか姿も見せないが、モノを媒介にして「交換=コミュニュケーション」が成立するという事ですね。死んだ奥さんを出したのは「恩寵」じゃなくて「交換」なのかもしれない。しかし対価は既に払ってあるのか、一方的な贈与なのかも全く判らないわけですが。
>それは私以外の人、(現代思想風にいえば)他者ですね。
>ファーストコンタクトテーマは突き詰めていくと、哲学の永遠のテーマの一つ、
>他者論に突き当たるというのが、レムの思考のすごさと思っています。
御意。柄谷の口寄せで言えば、ヒューマノイド型宇宙人(知的生命体)は、いわば内在化可能な自己の鏡像であって他者ではない。古典的なモンスター(タコ型火星人)はフロイト的に言えば「親しいもの=不気味なもの」異者でありやはり他者ではないということになります。
それに対してソラリスの海は「意味−無意味」に対する「非意味」ア・モラルで対話不能な他者存在ですね。やっぱりレムは凄いとおもいます。
>さらにいえば、最大の他者は、何も他人ではなく、自分自身なのですね。
>ですから、『ソラリス』は、内なる他者性を探求する物語でもある、と思います。
またカントの話で恐縮ですが、物自体は確かにある、しかし感性的直感(身体性)を介して知覚できる「現象」としてしか認識できないんだと言ったわけですが、これは自己言及的な話でもあると思うのです。感性と悟性のループとか滅茶苦茶いい加減なこと書いたのですが、それ自体「現象」なわけです。初期フッサールは超越論的主体が自然的態度を判断停止して現象学的に還元した『残余』とか言っていたのですが、何も言っていないのに等しい。(後期フッサールは認めましたが)メルロ=ポンティが批判したのもそのあたりじゃないかと..言うのは南青山さんには二百も合点な話でしょうけど。これは啓蒙思想というかイギリス経験論でも「神の恩寵」としても生得的な悟性(神性)を否定してロックなんかは「生まれたままの人間はホワイトボードで経験以外から来るものなどなにもない」んだと言ったわけですよね。メルロ=ポンティは『知覚の現象学』の冒頭で両者をバッサバッサ斬りまくりますが、最初読んだ時には驚嘆しました。レジスタンスやりながらこんなこと考えていたのか....
80年代終わりのサイバーパンク、言うまでもないウイリアム・ギブソンの『ニューロマンサー』とグレッグ・ベアの『ブラッド・ミュージック』にはドツかれるような衝撃があったのですが、実は『ブラッド・ミュージック』を読んで、突然ソラリスについて考えたのです。なんでかといえば、実はソラリスにはかつてヒューマノイド?的知的生命体や地球型の「自然」があったが、遺伝子の暴走かウイルス(ウイルスは生命と非生命の境界にいるわけですが)で全てが融合してしまったんじゃないか。個々の生体はコード化されて細胞核の様にソラリスの海で眠っているがニューロ的なネットワークで結合して、あたかも現実の世界を生きているような....って「マトリクス」か「リング」の世界になってしまいますが。(笑)
いわばソラリスの海はユング的な集団無意識か超自我の様なものではないかと。
そういえば吾妻ひでお の「ほのぼのブラッド・ミュージック」
http://www.sf-fantasy.com/magazine/interview/000702.html
とか
諸星大二郎に同様のコンセプトの短編があったと思います。
「お役に立つ」かどうかはともかく、やっぱり『ソラリス』は汲めども尽きぬ奥行きがありますね。(笑)