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ボーンズの理解した「ヘーゲル弁証法」とは
さて、ボーンズはヘーゲル哲学のどこを読み違えたか、です。なんて、たいそうな題名ですが、
題名にくじけないで、いつものように進みましょう。
そもそもアメリカ人のヘーゲル理解が異様だと私に思えたのが、フランシス・フクヤマの『歴
史の終わり』だった、・・なんていうふうに進めるのは、やめます。
ヘーゲル哲学を理解するのに、フランシス・フクヤマの本があてにならないとしたら、では、
ほかに一体、誰があてになるのか。まず、これが問題です。私は、誰を、ヘーゲルの哲学山
脈を踏破するシェルパに選んだらいいのか。
ハイデッガーか? 彼には、ヘーゲルの「経験概念」を念入りに読み解いた講義があります。
シュタイナーか。シュタイナーには、「哲学のナゾ」とか、「人間のナゾ」でヘーゲル哲学に
言葉を多く費やしている箇所があります。これらについては、日本語では断片的に高橋巌氏
の書物で知ることができます。日本語訳はまだありません。
あるいはヘーゲル自身の本を読んで、自分で解釈するしかないか。しかし、私の解釈(ブレ
イン・パワー)は、フクヤマやハイデッガーやシュタイナーの解釈に匹敵するほど、性能がいい
か。
しかし、めげないで進みましょう。というのも、そうでもしないと、ボーンズの野望がどこで、
どう、道を間違えた結果として生じたのか、という疑問が解けません。こうなると、もう、私個人
の能力がどうのこうの、という次元ではなくなります。この作業ができなければ、ボーンズに
「負け」です。
で、単刀直入にいきます。
ヘーゲルが自分の哲学を構築する場合に、彼の前に素材が三つあった、と私は考えます。
1 古代ギリシアで哲学が誕生したこと。思考の誕生です。これは何を意味するか、ですが、
思考を獲得した代わりに、自然との一体感が失われました。日本で言えば、神社を崇拝
するという形で、自然を神とみなしたり、自然そのものを畏怖する精神の段階が終わった
ということでしょう。
2 次に、キリスト教。これによって西洋人は、「私」という存在を知ります。「自我」です。こ
れを明示したのが、デカルトでした。「我思う、ゆえに、我あり」です。
3 ここがシュタイナーの説ですが、ドイツの神秘思想です。特に、ヘーゲル自身も言及し
ている(「エンサイクロペディー」(岩波文庫では、「小論理学」)ヤコブ・ベーメ。ベーメの神
秘思想は、「私」の中に深く沈潜するとき、人は、そこに神(神性/divine)を見つける、と
いうものです。パウロがいった、「私ではなく、私の中にいるキリスト」です。
以上の三つの素材を元にして、そこに一本の糸を通し、思考の誕生から、思考が自分自身を
認識するところにいたるまでのことが人間の精神現象であり、哲学はそれを学として認識する、
とするのがヘーゲル哲学です。
で、この精神がそもそもの自分を発見し、合一する物語が精神の原理であり、世界史です。
この精神の自己発展のプロセスが弁証法となります。まず、生まれたばかりの思考・精神が存
在します。次に、キリストによって、思考・精神が他者として開示されます。で、最後に、近代西
洋人が自分の精神の中に、思考・精神(キリスト)を見出す、というのがヘーゲル弁証法です。
これをヘーゲル哲学の弁証法とするなら、ボーンズがどこで間違えたのか、わかります。ボー
ンズの目に入ったのはプロセスだけです。弁証法です。この世界は、絶えず、最終的ゴールを
目指して、常に、闘争している、という形の弁証法です。
ま、いいでしょう、この解釈でも。そう解釈できなくもありません。で、そうなると、問題は、ゴー
ルです。
ボーンズは、世界支配に置きました。フランシス・フクヤマでは、「民主主義の世界制覇」とな
ります。まさに、中東全域民主化計画そのものです。「クリーン・ブレーク」です。
どこを間違えたか。
ヤコブ・ベーメの、ドイツ神秘主義がわからない、ということです。当然でしょう。アングロ・アメ
リカンの精神は、ヘーゲルに出会う以前にイギリス経験論によって養育されています。ドイツ神
秘主義を受け入れる余地がありません。で、ボーンズを創設したウィリアムズでしたか、ベルリ
ン大学でヘーゲル哲学を学び、彼が理解した「弁証法」をアメリカに導入しました。と、同時に、
当時のドイツにあった秘密結社「イルミナティ」のコピーをエール大に作ったと。秘密結社「スカル・
アンド・ボーンズ」です。
さて、ヘーゲル哲学のボーンズ解釈がどういうものか、とうっすらわかったところで、次は、
この「イルミナティ」とは何か、です。サットンの本には、ゲーテもこの会員だった、とありますが、
サットンの本以外にそのような言及を私は見た覚えがありません。たいたいは、ゲーテはフリー
メーソンです。で、シュタイナーも、ゲーテの位階は、何級だった、と指摘しています。
そもそも「イルミナティ」という秘密結社があったのか。としたら、真相は何か。