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http://www.janjan.jp/world/0409/0409108811/1.php
止まらないイラク人質事件 2004/09/16
また人質事件である。イラク国内では誘拐される恐れが無いのはテロリストだけになってしまったのか。
アル・ジャジーラTV及びレバノン英語紙デイリースターは、「9月7日、バグダッド市内にあるイタリア人道支援団体『バグダッドへの掛け橋』の本部を20数名の武装した男が襲った。男達は警備員を容赦なく殴り倒し、悲鳴をあげるイラク人女性職員の髪の毛を引きずって外に連れ出した後、イタリア人女性ボランティア2名とイラク人男性職員を1発の銃弾も発射することなく誘拐した」と伝えている。
バスラ及びバグダッド(サドル・シティーを含む)の学校再建と教育推進活動のため、現地人に溶け込むよう、普段からヘジャブを被り、現地人と同様の粗末な服を着て活動していたイタリア人女性ボランテイア2名を迷うことなく選び出し誘拐したという。周辺の目撃者は口々に「プロの手口だ」「誘拐犯は標的が誰か熟知しているようだった」「ヤツらは、機関銃や私が特殊部隊に居た時に見たことのある兵器を持っていた」と証言している(「 」内デイリースターより引用)。
イタリア人女性2人の名前は、シモーナ・パリとシモーナ・トレッタ。一緒に誘拐されたイラク人男性の名前は明らかにされていない。偶発的な誘拐であった「日本人人質事件」を除けば、女性の誘拐は異例であり、誘拐実行犯の手口からも組織的かつ周到な計画による犯行であることが窺い知れる。今後のイラク国内におけるNGO、ボランティアの活動に“重大な”危険信号が点ったと言わざるを得ない。
イタリアはナシリーヤを中心として治安部隊を展開している。同派遣部隊の中核であったイタリア軍警察司令部は、自動車爆弾による攻撃で多数の死傷者を出した。また、近くを通学中の女子中学生4人の命が、このテロ攻撃により奪われた。ベルルスコーニ首相は、自国兵士とナシリーヤ住民の死傷への哀悼の意を示しつつ「テロとの対決」を強く打ち出したため、アブ・ハフス・アル・マスリ旅団を名乗る正体不明の組織(個人?)からの脅迫を受け続けているが、同組織によるテロ行為は1度もその実行を確認されていない(同組織が犯行声明を出したスペインの列車爆破は、モロッコ系別組織の犯行であった)。
反占領組織が「イタリアは撤退を」の声明を発するだろうが、問題なのは“誘拐の目的”ではない。“誘拐の実行”そのものが洗練された手口に進化している点である(今回の誘拐犯には、“WellDressed”(身なりのキチンとした)実行犯が含まれているという)。
おそらく、誘拐グループと実行犯は別組織ではないか?これは、中南米に良く見られる「誘拐ビジネス」の典型である。誘拐に不慣れな共産ゲリラが料金を払って麻薬ギャングの誘拐部隊に標的を誘拐してもらう手口だ。勿論、“プロフェッショナル”誘拐ギャングは周到に下調べをし、絶対成功するタイミングを狙って襲撃し、依頼主に「無傷の標的」を“納入”する。無傷での人質の確保、自分達も無傷で引揚げる。簡単なようでいて相当な訓練をつまなければ「1発の銃弾も発射することなく、冷静に」行動できるものではない。
歴戦の中南米ならぬ中東で、そのような“特殊な訓練”ができる組織といえば“あの組織”が脳裏に浮かぶ。言わずと知れたアル・カーイダである。
日本人人質事件が大ニュースとなり世界を駆け巡る直前から、イラクでは“拉致”事件は発生していた。状況が小康状態を見せる中、医師やビジネスマンなど裕福層の営利誘拐、米軍の包囲からのファルージャ防衛のため外国人に総て疑いをかけた農民自警団(日本人人質もこのパターンと筆者は思っている)、しかし「誘拐戦術」をメディアが大きく取り上げることで多くの誘拐事件が発生し、既に20人以上の人質が殺害された(ザルカウィ・グループを名乗る人たちが「最初から殺すつもり」での誘拐の犠牲者となった米国人、「見せしめ」のためだけに惨殺されたネパール人12名を含む)。大手メディアの罪は重い。
今、イラクは「誘拐天国」だ。イラク警察や防衛軍の能力は、凶悪犯罪の捜査を行えるほどには成長していない。イラク駐留米軍には犯罪捜査の能力も経験も余裕もない。イラク警察は“エキスパート”な捜査員の現地指導を必要としている。少なくとも、各都市、行政区単位の「本署」に1人は必要だろう。世界の協力は不可欠だ。
ところで、フランス人ジャーナリスト2名、(最初の)日本人人質3名のように「解放の約束」日時に、予定通りにコトが進まないことに、世界中のマスコミが苛立つ状況は誘拐犯を利するだけだ(アラブでは「期日」は目安であって、アテにしてはいけない。何事も「インシャ・ラー(神の思し召しがあれば)」の世界なのである)。交渉途中で「苛立つ」のは「自分の立場のほうが弱い」と認めることだ。
イラク所在の各国NGOは退避の是非を検討したが、多数のNGOが「残留する」と決定したと聞く。崇高な意志と責任感に敬意を表するとともに、人質になっている人々と彼らNGOの無事を祈らずにはいられない。