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(回答先: 収容された記者証言「米兵らは虐待写真のベストコレクションを競っているようだった」【中日カイロ=秦融】 投稿者 木田貴常 日時 2004 年 5 月 08 日 07:59:29)
http://www.mainichi-msn.co.jp/today/news/20040508k0000m030033000c.html
イラク人虐待:米軍の内部調査報告書に描かれた実態
バグダッド郊外のアブグレイブ刑務所で起きた米兵によるイラク人収容者の虐待事件は、ラムズフェルド国防長官への辞任要求の高まりなど、ブッシュ政権を根幹から揺るがしつつある。「人類全体を傷つけた」(フリスト共和党上院院内総務)とまで評される事件を、「フセイン圧政からの解放者」を自任する米軍が、なぜ引き起こしたのか。イラク駐留米軍のサンチェス司令官が指示した内部調査の報告書をもとに報告する。【ワシントン和田浩明】
■精神をくじく虐待
「極秘」の黒々とした文字が表紙に躍る。今年1月に内部告発で虐待が発覚した後、アブグレイブ刑務所の管理を担当していた米陸軍第800憲兵連隊(予備役兵で構成)を調査した駐留米軍のアントニオ・タグバ少将が今年3月にまとめた報告書だ。容疑者や被害者、連隊関係者らの証言などをもとに、(1)虐待の状況(2)収容者の逃亡事例やその背景(3)指揮・訓練体制−−などを53ページにわたり分析している。
虐待内容の項目は20を超える。「男性収容者に自慰行為を強要して撮影」「弾薬を装てんした拳銃で脅迫」「収容者を裸にして数日間にわたり放置」「軍用犬をけしかけ脅す」……。屈辱と死の恐怖で収容者の精神をくじこうとする執拗(しつよう)な意図が浮かび上がる。何が目的だったのか。
虐待の多くは、昨年10月から12月にかけ、同刑務所の「1A」「1B」と呼ばれるエリアで発生した。複数の容疑者は、同エリアは「軍情報部の管轄だった」と供述している。軍情報部の主な任務は、収容者を尋問して得た情報を、イラク国内の治安維持活動などに利用することだった。少将は報告書で「他の政府機関」の担当者も、尋問を行っていたと指摘している。米中央情報局(CIA)の職員らも含まれると見られる。
容疑者の男性軍曹によると、情報機関員らが看守役の憲兵らに対し「こいつが口を割るようにしてくれ。夜も眠らせずにな」などと虐待行為を奨励・指示していた。別の容疑者の女性兵士も「MI(軍情報部)は、収容者から供述を取りたがっていた」と証言している。尋問が順調にいくと、憲兵らに「よくやってくれた。簡単に落ちたよ。全部の質問に答えた」と感謝したという。
■混乱した指揮系統
アブグレイブ刑務所では、陸軍第205情報連隊の司令官が指揮権を与えられていた。タグバ報告は「尋問を担当する軍情報部が収容者の管理を行う憲兵隊を指揮するのは問題」と管理体制の構造面に言及している。
さらに、第800憲兵連隊は、収容者の取り扱いや戦時に拘束した民間人の人道的処遇を定めたジュネーブ条約に関し、訓練をほとんど受けていなかった。
しかも、看守役の兵士の数に比べ、収容者数は「相当に多かった」といい、少なくとも27件の逃亡や逃亡未遂事件が発生。記録されている収容者数と実数が違うといった状況すら起きていた。一般の服役囚と戦争捕虜、情報収集目的で拘束されたイラク人らが同じ施設に収容されていたことも、管理上の混乱を招いたという。
報告書は「幽霊収容者」の存在まで指摘している。陸軍以外の政府機関が一時的に収容を要請するケースで、正規の登録手続きは取られない。アブグレイブ刑務所では、訪問中の赤十字国際委員会(ICRC)視察団から隠すため、複数の幽霊収容者を所内で移動させて回ったこともあるという。
■民間人も尋問官に
第800憲兵連隊に所属する兵士の多くが、03年5月にブッシュ大統領が大規模戦闘の終結を宣言した時点で帰国を期待していたが実現せず、士気が低下していたが、「司令官は以後数カ月にわたって対応策を取らなかったようだ」と報告書は指摘、多数の兵士が規律違反でけん責処分を受けたと述べている。
長期化する駐留へのいら立ちと、尋問官による奨励が、看守らによる収容者の虐待をエスカレートさせていった可能性も浮かび上がる。
アブグレイブ刑務所での虐待事件には、米政府に雇用された民間企業社員も関与していた。報告書は「民間人は適切な監督を受けていないようで、我々の視察中も所内を自由に歩き回っていた」と指摘。そのうえで、第205情報連隊に所属していた民間人尋問官に対し、虐待奨励と虚偽供述の疑いでけん責処分を勧告している。
タグバ報告が照らした闇は、ブッシュ大統領らが指摘するように「限られた事例」なのか。陸軍は「徹底した調査の継続と責任者の厳格な処分」を約束している。だが、米国が失った国際的な威信と信頼の回復への道のりは、限りなく長そうだ。
毎日新聞 2004年5月7日 19時10分